オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』

God Help the Girl, 111min

監督:スチュアート・マードック 出演:エミリー・ブラウニング、オリー・アレクサンダー

★★★

概要

メンヘラ女が歌う話。

短評

ふんわりとしていてオシャレな雰囲気のミュージカル映画。雰囲気だけでなくストーリーもふわっとしすぎているのが難点だが、ベル・アンド・セバスチャンというバンドのボーカルが原作、脚本、監督の全てを兼任しているようなので、ミュージックビデオにしてはむしろ分かりやすいストーリーがあったと受け止めるべきか。主人公を演じているエミリー・ブラウニングよりも彼女のバンド仲間となるハンナ・マリーが超絶に可愛くて、三十郎氏はそれだけで満足というレベルだった。前から好きだったけど、ここまで可愛かったっけ?

あらすじ

故郷オーストラリアからバンドの追っかけをしてスコットランドへと飛び、摂食障害で心療病院に入院しているイヴ(エミリー・ブラウニング)。彼女は病院から脱走して向かったライブハウスでイケてないギタリストのジェームズと出会い、更にジェームズのギターの教え子であるキャシー(ハンナ・マリー)とも知り合う。音楽で意気投合した三人はバンド活動を開始する。

感想

映画の序盤に病院スタッフが次のように説明する。曰く、「人生を三角形とすると、その底辺には水や食料といった生きるのに最低限不可欠な要素、その上には人間関係や金といった幸せな生活に関する要素、そして頂上には芸術や音楽が存在する」「頂上だけがあっても下の支えがないと簡単に崩れてしまう」とのことだが、正に頂上だけの女がイヴなのである。

本作は、彼女が音楽や仲間を通じて成長し、病気が快方に向かうという単純な構成とはなっていない。最初からトントン拍子過ぎて音楽的成長の感じられないプロットの不味さもあるのかもしれないが(バンドメンバーの募集もその後の展開も上手くいきすぎだし、「三人でやりたい」から大所帯への心変わりも雑)、描かれていたのは“成長”ではなく“変化”だったように思う。イブには最初から音楽の才能があり、スタッフからも音大行きを勧められている。彼女は、ひと夏の経験や出会いを通じて才能を開花させたのではなく、自分にとっての音楽がどのようなものなのかを自覚したのだと思う。ジェームズは当て馬である。ふわっとしていて正直よく分からないのだが、凡その所はそんな感じではないかと。

「どんな“話”なのか」を語れる程の説明がないのは消化不良だが、むしろ積極的に楽しむべきは、画面から溢れる“オシャレ感”や穏やかな音楽ではないかと思う。イヴのメンタル問題の掘り下げの浅さも(ジュームズが消えて荒ぶるイヴと飲んだくれるバレリーナ役はサラ・スワイヤー)、気楽に眺めていられるという点では良い。イヴとキャシーはもちろんのこと、イケてないジェームズでさえもイギリスらしいオシャレなファッションに身を包んでいる(当然にフレッドペリーのポロシャツも)。彼らが公園で「三人じゃドラムとベースなしになるじゃん」と議論したり(空中でスイングするタイプのウォーキングマシンに興じるキャシーの可愛さ)、高台で「バンド名どうする?」と話し合ったりする何気ない描写が、それだけで非常に画になっている。

ミュージカル・パートで面白かったのは、イヴの入浴中にジェームズが「お願い、君の体を洗わせて」と秘めたる思いを歌うセクハラ・ソング。その中に「(彼女の魅力に)男は列をなし~」という一節があり、居並ぶ男たちに男装したキャシーが混ざっていて、これがまた可愛い。

キャシーが「どの映画でもドラマでも二人はくっつくはずなのにどうして」と疑義を呈するように、イヴとジェームズの二人がくっつかない話である。イヴは別バンドのイケメンボーカル・アントン(他のメンバーが「あのスイス人がいる限り俺たちはモテない」と嘆く)に口説かれて交わり、帰宅すると「二分だけいさせて」とジェームズのベッドに潜り込むような魔性の女である。それでいて、アントンと別れると「どうしてもっと早くキスしなかったの?」とジェームズに文句を言う。メンヘラこえーよ。意味分かんねーよ。彼女の言葉を文字通りに受け取り、論理的に考えれば、イヴの言う通りにジェームズがもっと早く行動していれば……ということになるはずだが、結局は彼を受け入れない自分を肯定するための方便に過ぎないのだろう。て言うか、あなた、アントンと付き合ってたのにカヤック旅行の時に自分からジェームズにキスしてましたよね。女って怖い……。

そんな理解不能系不思議ちゃんたるイヴよりも遥かに魅力的なのがキャシー。同じく不思議ちゃんではあるものの、女子高生だし、男を惑わすこともないので許容範囲内である。劇中ではイヴが美人扱いされているが、三十郎氏の好みは圧倒的に彼女である。ハンナ・マリーは正統派の美女というわけではないものの、不思議にとっても可愛い顔立ちで、二十代半ばでの制服JK役にも違和感がない(スカートがスコットランドらしくタータンチェック!)。少し抜けているようで、奥ゆかしいようで、奔放なような、ヘルメット着用で自転車に乗るお嬢様。彼女の掴みどころのないキャラクターと透き通るような輝きこそが本作最大の魅力である(ごめんよ、音楽)。豪快なアイスの投げ捨てから妙ちくりんなダンスに至るまで全てが愛おしいし、歌声も可愛い。普通に玄関から出られるのに、お城に閉じ込められたお姫様かのように窓からの脱出を図るシーンなんて最高の一言である。

心療病院サッカー部の熱いハーフタイム・スピーチが笑えた。「敵を怖れる必要なんてない!だって私たちはイカれてるんだから!」。なお、イヴは試合中に脱走する。「LOVE」と「HATE」のセーターを着た男たちも笑えた。

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール

  • メディア: Prime Video
 
ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール

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