オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ミッドナイト・スネーク 絡み合う毒牙』

Serpent, 85min

監督:アマンダ・エヴァンス 出演:サラ・デュモン、トム・エインズリー

★★

概要

テントに毒ヘビが侵入する話。

短評

テントの中に毒ヘビが入ってきて身動きできない……という地味すぎるシチュエーションだけでは流石に成立させられなかったスリラー映画。ヘビの描写が非常にリアルで、地味ながらも緊迫感溢れる演出に感心したが、夫婦のいざこざがメインになって拍子抜けした。しかし、ヘビを陰茎の隠喩として無理やり解釈してみると、寝取られ映画として楽しめなくもない気がする。

あらすじ

アダムとグウィン(サラ・デュモン)の夫婦は難しい時期を迎えていたが、関係を立て直したいと考えた妻は、昆虫学者である夫の研究旅行に同行することを決める。新種のコガネムシ発見のために立ち入り禁止エリア“自殺者の渓谷”へと入り、水場の近くにテントを張って野営。その夜、外に出たグウィンの不用心が原因で、テントの隙間から猛毒を持つブラックマンバが侵入してくる。

感想

ソリッド・シチュエーション・スリラーというのは、限られた条件の中で「何ができるのか」というアイディア勝負になることが多いが、本作は逆に「できる限り何もしない」ことが重要となる。「動いたら負け」である。主人公たちの命運を握っているのが何を考えているのか不明な爬虫類というのも、人間側にできることがない状況でのランダム感を生んでいる。また、このヘビが非常にリアルなのも良い。牙を折った本物を使用していたのではないかと思うが、どうやって“演技”させたのだろうか。本物だと無毒と分かっていても役者は怖いだろう。

この“ヘビと人間が戦わずして戦う”構図は非常に好みだったのだが、流石に展開が地味すぎて途中で飽きてくる。それを打開すべく、テントに穴を開けようとしたり、ガス漏れを起こして殺そうとしたりと、「絶対に動くな」と言っていた割には動く。「これならなんとか外に出られたのでは?」感が強い。

グウィンは浮気中である。旅に同行するのも、夫とやり直したいというよりもストーカー化した間男から逃げたいという目的意識が強いように思われる。「ヘビだ!絶対に動くな」という状況下で打開策を模索する中で、アダムがグウィンのスマホを見ちゃって浮気バレ。よりによってこのタイミングである。しかも妻は妊娠しているのだと言う。よりによってこのタイミングである。ブラックマンバを半分置き去りにして、「この浮気妻をどうしてくれようか」というサスペンスが成立する──が、これはほぼテントの中だけ進行する地味な物語を無理やり盛り上げようとした感が否めない。

しかし、本作の“主役”はヘビと言っても過言ではない。ヘビって形からしてアレっぽいではないか。それがテント(=夫婦の寝室)に侵入してくるとなれば、これは間男の隠喩なのだと思わずにはいられない。ヘビが夫婦にもたらす緊張は、浮気発覚による緊張とイコールなのである。

挙げ句は妻がヘビに噛まれるとなれば、毒の注入が精液と同義であると言ってよい。グウィンは「私たちの子よ」と言っていたが、やはり間男との子なのである。妻が噛まれ、外に出た夫も噛まれ、薬は一人分。先程は浮気妻を殺そうとまでしていた夫だが、思い直して妻に注射を打つ。果たしてこれは感動的な夫婦愛なのか。三十郎氏の見立ては違う。「外に出たら噛まれない」と何度も言っていたくせにヘビに噛まれた夫もまた、間男の毒に負けてしまったのである。妻は快楽堕ちし、夫は脳を破壊される。口では妻に「僕の分も生きろ」と言うが、これは「どうぞ間男とお幸せに」という意味に他ならない。自分に注射する選択肢があったことを考えると、これは半分自殺である。夫は間男に精神と身体の二重の意味で殺されたのである。嗚呼、哀れな寝取られ夫よ。

グウィンを演じるサラ・デュモンが、美人な上に巨乳である。これは周囲の男たちが放っておかない。アダムの「助成金が下りた」「試練だったけど状況が変わる」という台詞から察するに、無職状態の夫に代わり働きに出た妻が外の世界で男を見つけたのだろう。彼女は豊満な下着姿を堂々と見せつけ、夫のヘビが彼女に侵入するシーンもあるのだが、おっぱいは見えなかった。残念至極。折角立派なものをお持ちなのに。おっぱいの見えない欲求不満が三十郎氏を強引な桃色解釈に走らせたのだと言わざるを得ない。責任者はグウィンである。彼女が間男を惹きつけてしまったのも、三十郎氏が滅茶苦茶な解釈をするのも、全部おっぱいが悪いのだ。