オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『龍拳』

龍拳(Dragon Fist), 96min

監督:ロー・ウェイ 出演:ジャッキー・チェン、ノラ・ミャオ

★★★

概要

師匠を殺した仇に復讐できない話。

短評

硬派なカンフー映画である。後に大人気となったジャッキーのイメージと比べて非常にシリアスなのが三十郎氏には逆に新鮮だったりするのだが、興行的には失敗したことからコミカル路線へ舵を切ったという事情があるらしい。(十分に描き切ったとまでは言えないが)ストーリーは主人公の複雑な心中を感じられるものだったし、クライマックスのカンフーバトルは圧巻だった。直球のカンフー映画という点では本作の三年前に公開された『少林寺木人拳』と同じだが、ジャッキーの顔は我々の知っているものに変化している。

あらすじ

武術大会で優勝したばかりの唐山道場のソウに百勝道場のジョンが道場破りを挑み、戦いに破れたソウは命を落としてしまう。それから三年後、修行を積んだソウの弟子ホオウァン(ジャッキー・チェン)が、ソウ夫人とモゥンラン(ノラ・ミャオ)を伴ってジョンに復讐するべく道場を訪ねるが、そこにはすっかり心変わりした彼の姿があった。

感想

終始シリアスなストーリーではあるのだが、細かい箇所には笑ってしまうような点も多い。ジョンがソウを倒して意気揚々と帰宅すると、なんと彼の妻(人形)が首を吊って死んでいる。遺書には「私が昔ソウを好きだからって殺すなんて……」と書かれており、実に下らない痴情のもつれなのであった。なんとみみっちい男であることか。なお、彼の改心の理由はこれだけである。後悔した彼は道場の名を百忍道場に変え、自らの左脚を断ってホオウァンたちと和解すべく彼の襲来を待っている。なんと単純で極端な男であることか。て言うか、自分から謝罪に出向いて誠意を見せろよ。

対するホオウァン。三年の間に修行して強くなったという設定である。この三年間の描写が一切ないのは欠点かとは思うが、本作の核は、“せっかく強くなったのに復讐できない”という状況にこそある。改心したジョンをソウ夫人があっさりと許してしまうので、ホオウァンには何もできない。一方で、彼の恨みがそれで消え去るわけではない。もどかしいではないか。[事件→修行→復讐]の流れにすると、最後の復讐パートがないためにカンフー映画として成立しない。本作は修行パートを省いて、復讐はできないけれど戦わせるための設定を用意する。

そこで登場するのが無関係な悪者のアィである。これは少々ご都合主義が過ぎる気もするが、ホオウァンのやり場のない気持ちが利用されたと考えれば納得のいく展開である。一方で、彼の気持ちよりもソウ夫人の病気の方が重要な理由として扱われており、そこは少し消化不良であった。

かくしてホオウァンとジョンの両者は宿命的に相見える。しかし、彼らを戦わせては“復讐できない”という物語の核が台無しになってしまう。ということで、結局はなんだかんだホオウァンとアィが戦うのである。その“なんだかんだ”の部分が非常に皮肉で、ソウ夫人に死んでもらうしかないのである。彼女は物語を展開させるためだけに病気にされ、更に都合のよいタイミングで死んでしまうという気の毒な役どころであった。

終盤までのアクションは「正直大したことないな……」という印象だったのだが、アィ一行が百忍道場に乗り込んでからは凄い。とにかく動きが途切れることなく戦い続ける。突如出現したトンファー男とジョンから借りた松葉杖で死闘を繰り広げ、そのままシームレスにアィ戦へと流れ込む。満身創痍となりながらも最後に勝利する姿は後のジャッキーにも通じるものがある。

「凄い!」と思う一方で、左脚を失ったジョンが弟子の介護を受けながら参戦する姿には笑ってしまった。しかもそれが意外と強いのである。松葉杖を利用して器用に戦っている。流石は達人である。そんな彼が裏切り者を松葉杖で「こんにゃろ!こんにゃろ!」と子供みたい滅多打ちにして殺すシーンがまた可笑しかった。この裏切り者の方がトンファー男よりも格上感があったのだが、ジョンに蹴りをつけさせたかったのか。

ホオウァンの義妹を演じるのがノラ・ミャオなのだが、本作はあまり可愛くなかったように思う。常に険しい表情をしているのが原因だろうか。それともヘアメイクの問題か。器用に編み込まれたお下げにもみあげがクルッとカールしているという“中国娘”な髪型があまり似合っていなかったように思う。

龍拳(字幕版)

龍拳(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video