オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『マイ・ファニー・レディ』

She's Funny That Way, 93min

監督:ピーター・ボグダノヴィッチ 出演:イモージェン・プーツオーウェン・ウィルソン

★★★

概要

エスコート嬢が女優になった経緯を語る話。

短評

ウディ・アレン作品のような雰囲気のコメディ映画。理屈っぽいアレン役のようなキャラクターは不在だが、ニューヨークを舞台に、限定された世界で、事態がとんでもなくこんがらがって楽しい一作である。話自体も演技にもオーバーなやり過ぎ感があるが、ここまで詰め込むと却って感心する。最後はこんがらがったパズルが(ご都合主義的に)スルリと解け、主人公の愛するハッピーエンドとなるのも気持ち良かった。

あらすじ

ニューヨーク五番街のバーでインタビューを受ける女優のイザベラ(イモージェン・プーツ)。彼女は自分が女優になった経緯を語りはじめる──自身がコールガールだったこと、演出家の客アーノルド(オーウェン・ウィルソン)がコールガールを辞めたら3万ドルくれたこと、オーディションを受けたらアーノルドの舞台だったこと。その物語は、アーノルドの妻デルタ(キャスリン・ハーン)や劇作家ジョシュア、精神科医のジェーン(ジェニファー・アニストン)、イザベラを諦められない常連客を巻き込んだドタバタへと突入していく。

感想

驚くほどに狭い世界を描いた一作である。よくもここまで詰め込んだものだと思う。イザベラ(グロー=源氏名)とアーノルド(デレク=風俗利用時の偽名)はエスコート嬢と客の関係から女優と監督の関係に。イザベラの通う精神科医ジェーンは、舞台の劇作家ジョシュアの恋人で、イザベラの常連客の診察も担当している。なお、ジョシュアはイザベラは惹かれており、彼の父親は常連客に雇われてイザベラを尾行している探偵である。アーノルドの妻デルタもまた女優であり、オーディションでのイザベラの演技を気に入り、共演者セスと過去に関係を持っている。セスは今でもデルタを狙っていて、アーノルドの部屋から出るイザベラを目撃している。

ここまで下半身が入り乱れていると、「この人がここにいては困る」という状況が生まれるのだが、そこには常にその人がいるのである。おまけに、“困る人”、“困ると知っているが他人事の人”、“知らぬが仏状態の人”、“知って怒る人”と、一口に「困る」と言っても事態はかなり複雑である。このドタバタ感の連続は素敵だった。そんな状況が複数回あるため役割が固定されておらず、皆がしっかり困る辺りも良い。

「リスを胡桃に」を合言葉としたアーノルドの“支援活動”。最初にこの話が出た時には不自然さを感じたが、イザベラ以外にも多くの女性に支援している事が明らかとなり、「そういう人なのか」と不思議に納得できた(最終的にはもっと納得できるオチがつく)。彼はこの活動について「一種のフェミニストなんだ」と説明している。男の支援により女が活躍するという展開は非フェミニズム的な気もするが、夢を掴むための活動に専念できる資金さえあれば女性は皆活躍できるのだと考えれば、(男が独占する資本を譲与すべきという意味でも)非常にフェミニズム的な気がする。つまり、無関係な女性は彼を非難するだろうが、支援を受けた女性は彼をフェミニストだと讃えるだろう。考え方や正しさなんて自分の都合次第である。ちなみに、アーノルドが支援した女性の中では空港で再開するエリザベス(アーナ・オライリー)が最も三十郎氏の好みだった。

実は妻デルタもアーノルドの支援を受けた一人である。彼女は自分が特別な存在だと思っていたようだが、自分を特別だと感じさせてくれる人は他の人にも同じ喜びを与えられる能力を持っている。ウディ・アレン風ではあるが皮肉屋アレン役がいない本作だが、この点だけは皮肉が効いていたと思う。

マイケル・シャノンクエンティン・タランティーノカメオ出演している。古い映画の台詞を使用してこのハチャメチャな物語を語らせるのは、いかにも映画オタクなタランティーノらしいアイディアでピッタリの役だった。

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