オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ドント・ノック・トワイス』

Don't Knock Twice, 92min

監督:カラドッグ・ジェームズ 出演:ケイティー・サッコフ、ルーシー・ボイントン

★★

概要

幽霊屋敷の扉を二回ノックしたら死ぬ話。

短評

「ノック」繋がりでセレクトしたイギリスのホラー映画。期待していなかったがハズレだった。劇中に「これは無理があるだろう」という要素が多くてつまらないのだが、それをなんとかまとめ上げた結末にだけは好感が持てる。一方で、その結末をもって「つまらない」という感情が覆るわけではなく、やはり無理のある話だったように思う。カメラが回転しながら直進したり、赤い照明で水が血のように見える演出は好きだったが、脚本の粗が気になって怖がれない。

あらすじ

死んだメアリーの住んでいた廃墟には噂があった。彼女の家には悪魔が住んでおり、一度目のノックで悪魔が目覚め、二度目のノックでメアリーが生き返って襲いに来るというもの。クロエ(ルーシー・ボイントン)とダニーの二人が興味本位でノックすると、その夜にダニーが消えてしまう。不安を覚えたクロエは、九年前に自分を捨て、現在養子縁組申請中の母ジェス(ケイティー・サッコフ)に助けを求める。

感想

悪霊ものである。つまり、訳知り顔の霊能力者が出てくる話である。ジェスはアーティストで、彼女のモデルを務めているティラ(プーネ・ハジモアンマディ)がこの役目を果たすのだが、これがちょっとしたコントとなっている。それこそが本作最大の問題と言って過言ではない。

仕事に来た彼女はクロエを見るなり「帰るわ」と言い出し、「彼女は助からない」「既に魂を奪われてる」「私は霊感が強いのよ」とジェスに告げる。観客はそれまでに心霊現象を見せられているので彼女の言葉を理解できるが、状況的には「お前、何者だよ」である。その後、ジェスもクロエがヤバい状況にあることを理解し、ティラに助けを求めるのだが、曰く「真犯人を見つけてメアリーを汚名をそそぎなさい」と。ここでも「お前は何でそんなに詳しいんだよ」である。

結局は彼女が悪魔の手下でジェスを誘導していたというオチがつくものの、その過程には無理があり、彼女の言葉を信じるジェスの行動にも無理があった。マイケルという少年の失踪に関わったと疑われたメアリーは、クロエとダニーによる毎晩ノックの嫌がらせを苦に自殺したということになっている。捜査を手掛けたのがボードマン刑事で、ジェスは彼とマイケルが一緒に写っている写真だけを証拠に彼が真犯人に違いないと決めつける。ティラに誘導されていたという言い訳はできるものの、証拠も論理も弱すぎてジェスが阿呆にしか思えなかった。

従って、上手く伏線回収した風になっているが、伏線そのものがイマイチで「う~ん……」となってしまうタイプである。確かに騙されはしたけれど、それは主人公が“普通の人ならば騙されない”ところで騙されたが故であるため、綺麗に騙された感じがせずスッキリしないのである。

本作に登場する“バーバ・ヤーガ”。東欧の言葉で「邪悪な老女」を意味するそうである。魔女的な妖怪的な老婆である。ジョン・ウィックの異名として覚えていた言葉の意味が分かって良かった。一方で、何故ジョンが老婆呼ばわりされていたのかという新たな疑問が浮かぶことになった。クロエは独自調査で最初からバーバ・ヤーガの存在に辿り着いていたが(これも唐突感がある)、やはり阿呆なジェスのせいでその説が撤回されるのであった。ヤク中兼アル中だった彼女は、立ち直った風でも既に脳が破壊されているに違いない。

面白演出が三つ。第一に、深夜に老婆の襲撃を受けたクロエたちが家中の扉を撤去し、それらを燃やして作った炎の壁の中で夜を明かすというもの。熱いだろう。下手したら二人も燃えるだろう。第二に、ジェスの夫ベンを殺害したティラが、ブラジャーの上に透明ビニール服という白シャツの汚れを避ける合理的な格好をしているもの。下着の上に直接防護服を着たロシアの看護師を思い出した。なお、ティラがベンを殺した理由はよく分からない。老婆に使役してマークが消えたのは理解できるが、老婆にとってベンを殺す理由が分からない。第三に、深夜の訪問者(クロエ)を警戒したベンがドアを開ける時に持っているのが長靴というもの。もう少し何かあるだろう。

メアリーは老婆から逃れるために自殺したのが真相と説明されていたが、彼女がマイケルを誘拐して老婆に捧げたのなら、その時点で解放されているはずではないか。そうでないとティラの描写と辻褄が合わない。クロエは自分が死に追い込んだ罪悪感から逃れるために都合よく曲解している疑惑がある。

ドント・ノック・トワイス

ドント・ノック・トワイス

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