オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『カムバック!』

Cuban Fury, 97min

監督: ジェームズ・グリフィス 出演:ニック・フロストラシダ・ジョーンズ

★★★

概要

デブがサルサを踊る話。

短評

ニック・フロスト主演のラブコメ。彼とセットのイメージが強い盟友サイモン・ペッグなしかと思いきや、ペッグもちゃっかりカメオ出演していて笑った。ストーリーは平和そのもので、いつも絵に描いたようなスーパーダメ男ばかりを演じている気がするニック・フロストも体型以外はまともな主人公である。ゲラゲラ笑うような映画ではないが、肥満男が披露するステップは確かに華麗なのに何故だか笑えるし、イギリス映画らしい洒落の効いた小ネタを楽しめる一作である。

あらすじ

少年時代にサルサのダンサーとして輝かしい成績を収めながら、全国大会直前のイジメが原因でダンスを止めてしまったブルース(ニック・フロスト)。それから25年後、新しい上司としてアメリカからやって来た美人のジュリア(ラシダ・ジョーンズ)にブルースは強く惹かれ、偶然に彼女がサルサを踊ることを知る。彼女の心を掴むためにブルースはサルサの世界にカムバックすることを決めるが、現在の彼はブクブクに太っており、動きもすっかり錆びついているのだった。

感想

ブルースと同じくジュリアを狙う同僚ドリュー(クリス・オダウド)の妨害を受けながらも、最後は華麗なサルサで彼女の心を掴むハッピーな話である。ブルースがサルサを止める原因となったイジメは、スパンコールをあしらったシルクのシャツやダンスそのものが女っぽいという偏見に基づくもので、傷ついたブルースは“人からどう見られるのか”を過剰に気にする恥ずかしがり屋に成長してしまう。それが原因で今ひとつ上手く行かない人生を歩んでいたが(冴えないだけで真っ当な人生だと思うが)、再びサルサに挑むことで無用な羞恥心からも解放される。ただ憧れの女性にアピールするだけでないという点が、それなりに良い話だった。

毎週末にゴルフの打ちっ放しに興じながら「今週の総括」を行うブルースと二人の友人たち。三十郎氏はこういう“男の集まりネタ”が好きである。いかにダメな週を過ごしたのかを報告し合う発想自体が面白いし、「今週の総括」という言葉も良い。既婚のゲイリー(ロリー・キニア)がブルースに「母親でも婦警でもなく金を払わずに女に8秒以上見つめられた体験は?」と尋ねるのだが(もちろん答えは「ノー」)、よくもここまで絶妙な質問が出てくるものだと思う。

長身で恋の駆け引きにも優れている(とブルースは思っている)が、嫌味な同僚のドリュー。彼との昼休みのダンスバトルが最大の笑いどころだった。「昼休みに駐車場で」という状況設定が絶妙だし、車が通って遮られて笑ったと思ったら運転手がサイモン・ペッグというネタも抜群である。その出オチで終わることなく、ブルースが車の上で軽快なステップを見せつけ、最後にはドリューをリードして“女にしてしまう”という展開が最高だった。観客のいないダンスバトルに勝敗をつける方法があるのかと思ったが、まさかの決着である。ドリューは嫌な奴だったが、「正式にセックスを申し込みたい」と跪くセンスだけは好きだった。

ブルースがサルサ教室で知り合うゲイのビジャンが、本場のラテン男だと思ったら中東系だった。言われてみればヒゲが中東系だが、初見では分からなかった。三十郎氏の人種識別能力は低い。逆に東アジア人以外が日中韓を見分けるのも無理だろうと納得できる。ビジャンの勧めでブルースが胸毛を剃るシーンがあり、そのせいでチクチクするのを終盤まで引っ張るのが笑える。こういう小ネタの上手い一作である。ガスなしのファンタは理解に苦しむ。

ジュリアをダンス大会に誘うことに失敗したブルースが妹サム(オリヴィア・コールマンニック・フロストよりも若いのが驚き)と共に出場するのだが、彼女は出場を予定していなかったはず。ということは、彼女がダンス時に見せる黒いパンツは見せパンではないということになるのか。これは嬉しくないぞ。

ブルースは自転車通勤しているのにデブである。やはりダイエットは運動よりも食生活なのである。映画の序盤に彼が4Pセットのヨーグルトを一回で全て食べ切ってしまうというシーンがあり、さりげなくデブのデブたる所以が描かれている。三十郎氏も10kgほどのダイエットを経験してからは「また太りたくないから」という理由だけで気をつけているが、かつてはせっかく小袋に分けられたお菓子を買っても小袋の意味がない食べ方をしていたので気持ちは分かる。

毒舌の同僚ヘレン(アレクサンドラ・ローチ)も不健康そうな美人だったと思うが、ブルースは彼女にはときめかなかったのだろうか。やはり彼のラテンの魂がラテンの血に求めるのか。

カムバック! (字幕版)

カムバック! (字幕版)

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