オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ドラゴン危機一発』

唐山大兄(The Big Boss), 99min

監督:ロー・ウェイ 出演:ブルース・リー、マリア・イー

★★★

概要

出稼ぎ労働者が悪い社長を殺す話。

短評

ブルース・リー香港帰国後の記念すべき第一作。意外にもアクションシーンが少なくて地味な一作である。無敵のヒーローのイメージが強い彼が酒と女で懐柔されるという少々情けないキャラクターなのも意外なのだが、最後の最後にようやく見せてくれるキレ抜群の動きはやはり圧倒的にブルース・リーとしか言いようがないのだった。カンフーで敵を“倒す”だけでなくナイフで“殺す”シーンが多く、ちょっとしたスプラッター映画のようになっているのも特徴である。

あらすじ

水害に襲われた故郷から親戚ホイを頼ってタイにやって来たチョウアン(ブルース・リー)。ホイの伝手で製氷工場に職を得るものの、そこは裏稼業として麻薬取引に手を染めていた。その事実に気付いた従業員が姿を消す事件が続き、遂には社長宅に抗議に行ったホイまでもがいなくなってしまう。しかし、チョウアンは故郷の母に不戦を誓っており、抜群の武術の腕を持ちながら静観を続ける。

感想

正義感の強いホイはトラブルを見かける度に首を突っ込むのだが、チョウアンは母に貰った首飾りに手を触れて思い留まる(この時に毎回優しい音楽が流れて妙に笑える)。これは正直かなり焦れったいのだが、最後に怒りを爆発させるまでの“タメ”の演出だったのだろう。もっともチョウアンが「そこまで怒る資格あるか?」と思えるキャラクターなのが、本作のユニークさであり、ツッコミどころであったりする。

ホイが消えて(=殺されて)ストライキを開始する従業員たち。ここでもチョウアンは静観の構えを見せるが、スト破りに来たチンピラの攻撃を受けてキレる。その際に首飾りも壊れてしまうので、誓いもなかったことになる。そこから彼の活躍が始まるのかと思いきや、工場長から主任に指名されてご機嫌のチョウアンである。仲間たちとハシャぎながら帰宅し、ハウメイ(マリア・イー)から「それでホイはどうなったの?」と問われるまで彼のことをすっかり忘れているという間抜けぶりだった。

ハウメイに諭されてホイ捜索に全力を上げるかと思いきや、工場長から酒と女の接待を受けて懐柔される。翌朝娼館から出る所でハウメイと鉢合わせして気不味い思いをし、仲間たちからも「工場長の犬め」と嫌われてしまう。なんと格好悪いヒーローなのだろうか。それでもなおチョウアンは社長の下手な演技に騙されるというヘタレっぷりで、彼がようやく本気を見せるのは、再び娼館を訪れて娼婦(マリリン・バティスタ)から「あの社長は悪党よ」と(おっぱいを見せつつ)聞かされた時なのであった。どれだけ気に入ったんだよ……。女と寝て話がいい方向に転がるなんて島耕作かよ……(寝てたから寝てないけど)。

なお、娼館の二度目の訪問時に「別にセックスなんて興味ありませんよ」みたいなスカし方をチョウアンがしているが、そんなわけがないので観ているこちらが恥ずかしくなってしまう。素直になろうぜ。無敵のヒーローもおっぱいの前には無力なのだ。

そうしてようやく工場の調査に乗り出したチョウアンを社長の息子たちが襲撃。チョウアンは彼らを返り討ち(=皆殺し)にする。しかし、帰宅すると仲間が皆殺しにされていて、遂に社長を殺しに行くのだった。やたらと人が死ぬ話である。ナイフはグサグサ刺さって血糊がピューピューで、チョウアンは社長に[ナイフの蹴り返し+指の突き刺し]の二重の刺殺攻撃を見せる。消えた従業員たちは氷切断用の電動丸ノコでぶつ切りにされた後に氷漬けにされており、スプラッター映画もかくやの大量死と猟奇的な死体処理が魅力的な一作だった。果たしてチョウアンはこれらの罪を全て被せられてしまうのだろうか。

最後の社長戦がようやく我らがブルース・リー。服を切り裂かれて肉体美を披露しつつ、圧倒的な一対一のスキルを見せつける。それまでは格好悪いキャラクターだったが、やっぱりブルース・リーは格好よくて、少年の憧れるヒーローなのだった。

かき氷(?)を売っている露店の女がノラ・ミャオである。可愛かったからなのか次作ではヒロインに抜てきされている。彼女は冒頭でチンピラに絡まれる以外にチョウアンのホイ捜索中にも登場し、彼に話し掛けられて笑顔になったところをアップで捉えられている。ちょい役なのにストーリーとは無関係な謎の演出である。やはり可愛かったからなのか。

本作の劇場公開時にはお馴染みの怪鳥音が無かったそうだが、リバイバル公開時に追加され、現在出回っているバージョンはそちらが主流なのだとか。黙って戦うブルース・リーも見てみたいな。

チョウアンにぶっ飛ばされた敵が壁に人型の穴を開ける演出と、OPクレジットが飛び蹴りするブルース・リーの雑コラ祭りみたいになっているのが笑えた。

ドラゴン危機一発 (字幕版)

ドラゴン危機一発 (字幕版)

  • メディア: Prime Video