オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『パシフィック・ウォー』

USS Indianapolis: Men of Courage, 130min

監督:マリオ・ヴァン・ピーブルズ 出演:ニコラス・ケイジトム・サイズモア

★★

概要

原爆を運んだ巡洋艦が撃沈されてサメに襲われる話。

短評

推定4000万ドルもの予算が投じられた実話ベースの大作サメ映画──なのだが、制作費の使途が巡洋艦のセット設営の一点豪華主義的だったためなのか、サメの活躍度合いは低く、サメとニコラス・ケイジが戦うこともない。しかし、戦闘機や艦の全体像を描くCGが明らかにショボくて、悪い意味では思った以上に“サメ映画クオリティ”だった。従って、一部の奇特なファン以外は期待していないであろうサメの部分を差し引いても出来が良いとは言えず、かなり退屈な一作となっている。

あらすじ

第二次世界大戦末期の1945年7月。チャールズ・マクベイ大佐(ニコラス・ケイジ)率いる巡洋艦インディアナポリスに密命が下る。その内容とは、広島と長崎に投じられることとなる原子爆弾テニアン島への輸送であった。日本軍に勘付かれぬよう護衛の駆逐艦なしでの単独航行は非常に危険なミッションであったが、マクベイたちは見事にやり遂げる。しかし、彼らが次の任務へ向かうべく再び出航したところを日本の潜水艦に狙われ、魚雷で撃沈されてしまう。

感想

という前置きが映画の半分弱。そこから先の漂流が本編である。機関長のマクウォーター(トム・サイズモア)が「艦が沈めばお前たちはホオジロザメの餌だぞ」「サメは食物連鎖の頂点だ」と散々アピールしていた通りに、漂流する兵士たちを大量のサメが襲い出す。果たして艦長のマクベイは部下の命をサメから守ることができるのか……という内容には残念ながらなっていない。確かに大量のサメが登場し、兵士を襲うが、サメと人間との攻防が描かれないのである。

本作には本物サメが優雅に泳ぐ映像も出てくるし、リアルな動きを見せる精巧なアニマトロニクスのサメも登場する。しかし、サメが人を襲うシーンはプカプカ浮かんでいる兵士たちが一方的に沈んでいくという描写が大半を占めているという残念さなのである(イカダから身を乗り出して嘔吐したらヤラれる演出は好きだった)。その上、兵士たちはサメに対して為す術がなく、ただ救助を待って、ただ食われているだけである。これではサメ映画的に面白くもなんともない。

三十郎氏としてはもっとサメを活躍させて欲しかったが、悲劇的実話がベースなので必要以上に“サメ映画”にはできなかったのかもしれない。しかし、サメの存在による恐怖もイマイチならば、漂流映画としての絶望感にも欠ける。インディアナポリス号撃沈のスケープゴートにされて自殺してしまったマクベイの名誉回復が本筋なのかもしれないが、こうも映画としての見所に乏しいと彼に感情移入することも難しい。彼が「頭に海水をかけろ。涼しくなるぞ」と発言した時に頭皮へのダメージを心配したくらいものである。

実質的には怯えるだけのショボいサメ映画となっている本作だが、一応は第二次世界大戦の実録ものである。しかし、艦内やデッキのセットをちゃんと作っているのに対して、それらの全体像を描くCGは純然たるサメ映画クオリティであり、戦争映画に期待するような迫力は得られない。日本だと同じく戦艦のセットを作った『男たちの大和』の予算25億円が超大作扱いだったが、それを上回る4000万ドルを投じた本作がB級映画という辺りに日米映画界の経済格差を感じる。なお、本作は出来だけでなく興行もB級映画らしい惨憺たる結果に終わっている。

映画の終盤にインディアナポリス号を撃沈した橋本以行とマクベイが対面するシーンがある。ここで橋本が「軍人として任務を果たしたが人として後悔している」と述べ、マクベイも同じ内容を返す。本作はマクベイの処遇を巡っても軍部を批判的に描いており、こうした見方がアメリカの映画界から出てきているというのは興味深い。

パシフィック・ウォー(字幕版)

パシフィック・ウォー(字幕版)

  • 発売日: 2017/06/07
  • メディア: Prime Video