オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『チャタレイ夫人の恋人』

Malù e l'amante(L'amante di Lady Chatterley/Amante: The Lover), 82min

監督:フランク・デ・ニーロ 出演:マル、マック・キラン

★★

概要

不能夫を持つ夫人が庭番男と交わる話。

短評

1991年のイタリア映画。猥褻的芸術的論争を巻き起こした原作小説は何度も映画化されており、「どれがどの映画化作品なのか」が非常に分かりづらいのだが、本作の場合は更に複雑怪奇なことになっているので後述する。本作はエロシーンの間に一応のストーリーが進行する純然たるソフトコア・ポルノであり、ストーリーがあるのかないのか分かる程度には“ない”。もし原作小説が同じ内容であれば、芸術なのか否かが争われることなく問答無用で猥褻扱いだっただろう。非常につまらなかったのだが、「『チャタレイ夫人の恋人』ってこんな話なの?」という疑問を抱いたことで原作の内容を知れたのは収穫である。

あらすじ

収監されていたチャールズが戻ってくると知って心が浮き立つジョエル(マル)。二人はチャールズの逮捕前に激しく愛し合っており、彼女は「またあなたに抱かれたい」と夢想しながら自慰をするのだった。帰ってくるなり彼女を求めるチャールズを「今は夫が大事」と拒むジョエルだったが、欲望には抗えない。次第に彼らの行為はエスカレートしていく。

感想

チャタレイ夫人が出てこないし、チャールズが逮捕された理由も分からないしで(後で説明されるが、回収されるという程ではないし、混乱を防ぐには遅すぎる)、最初から大いに混乱したが、そんな観客なんてお構いなしにひたすら男女が自慰し、愛撫し、交わり、ストリップする様子が延々と映し出されていく(その度にやたらとムーディーな音楽が流れる)。どうやら本作は翻案もののようで、ジョエルが(コンスタンス・)チャタレイ夫人、チャールズがメラーズ、夫フランツがクリフォードということらしい。夫が怪我をして男性機能不全であることと、間男が雇われ人であるという設定が共通している。一方で、原作が夫の不能から別の男を愛するようになる展開なのに対して、本作は怪我の前から浮気している。この共通点や差異から何かを見いだせることはない。

交わってばかりなので物語についての感想はないのだが、チャールズがメイド(Barbara Blasko)や絵のモデル(デボラ・カリ)までをも求める発情プレイボーイな展開は笑えた。彼の説く“モラルに縛られない自由な愛”やジョエルの嫉妬が物語に寄与していたかと言えば非常に怪しいところだが、複数の女性の裸を見せ、レズプレイを見せ、複数プレイまでをも見せるサービス精神である。しかし、物語不在の映画では本来はサービスであるはずのシーンが本編になってしまっており、主客転倒では有り難みも薄れるし、心と股間の両方に訴えかけてくるものもない。三人のおっぱいの中では、モデルのものが陥没乳首ではあるものの最も綺麗だった。

寝取られ夫のフランツが、夜に屋敷を抜け出す妻を目撃して「行きなさい、愛する者のところへ」と送り出す良き理解者だった。自分が彼女を満足させられない厳然たる事実に折り合いをつけている模範的機能不全者である。しかし、散歩中に彼女の下着を見つけると(ジョエルがチャールズではない二人の男に犯されてよがっていた時のもの)、「妻がこれほどに汚らわしい女だったとは……」とチャールズを解雇して終劇となる。白昼堂々はダメなのか。基準が分からない。

オリジナル版は104分のようなので、三十郎氏の観たGyao!の配信版は20分以上も削られていることになる。いつものように桃色描写がカットされているのだろうと思ったが、本作の男たちはズボンを脱がずに行為しており、完全なる真似事である。これはどういう事情なのだろう。もしかしてエロシーンしか見たくないという野暮な男たちに配慮した桃色ダイジェスト版だったりするのか。だから話が分からなかったのか。2020年発売のパッケージ版も同じく82分の収録となっているが、2012年版のDVDだと104分と記載されている。もし詳細をご存知の猥褻野郎がいらしたらご教示いただきたい。

1988年と1989年にロレンツォ・オノラーティ監督(別名ローレンス・ウェーバー)が、本作の主演マル(別名ランバ・マル)とのコンビで『令嬢チャタレイ/愛の遍歴(Abatjour 1/Sleepless Moon)』と『レディ・チャタレー(La storia di Lady Chatterley)』を制作しており(更に主演を代えて『令嬢チャタレイ2(Abatjour 2)』も)、両作の撮影監督が本作の監督であるフランク・デ・ニーロ(別名パスクァーレ・ファネッティ)である。もう十分に混乱したかとは思うが、その上、本作には『令嬢チャタレイ3 愛人』なる別邦題まである。大抵はタイトルと製作年の組み合わせで検索すればなんとかなるが、同時期に似たような作品が多すぎる。おまけに監督や主演の名前との組み合わせでも類似作品が引っ掛かる。複数の作品名、別名義のクレジット、類似作品の三重苦で、この程度の情報を整理するだけで感想を書くよりも遥かに時間を要した。これらに加えて別のチャタレイ夫人作品もあるわけだが、それら全てを網羅している桃色映画界隈の猛者がどこかにいるのだろうな。

チャタレイ夫人の恋人(ヘア無修正版) [DVD]

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  • 発売日: 2012/08/31
  • メディア: DVD
 
完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

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