オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『僕のワンダフル・ジャーニー』

A Dog's Journey, 108min

監督:ゲイル・マンキューソ 出演:ジョシュ・ギャッド、 キャスリン・プレスコット

★★

概要

犬が飼い主のために転生する話。

短評

健気なワンコはとっても可愛いのだが、犬にここまでの愛情を求める人間の歪んだ欲望が透けていて気味が悪いような気もする。動物を愛でるだけの映画のストーリーに一切の工夫が感じられないは我慢するとして(できないけれど)、根底にある価値観が人間に都合が良すぎてちょっと引く。何もここまでしなくても、犬は可愛くて素晴らしい存在なのに。また、犬と人間との深い絆を描こうとする一方で、切り捨てられる人間の存在にも釈然としないものがある。

あらすじ

幾度もの転生を経て飼い主イーサン(デニス・クエイド)の元に辿り着いた忠犬ベイリー。彼の農場から義娘グロリア(ベティ・ギルピン)が娘CJを連れて出ていってしまい、心配するイーサンは死にゆくベイリーに「CJを頼む」と告げる。ベイリーはビーグル犬のモリーへと転生し、11才に成長したCJ(アビー・ライダー・フォートソン)に引き取られる。

感想

死んだ犬が次の犬生へと転生し、深い絆で結ばれた飼い主の元へと戻ってくる。ここだけ切り取れば素敵な話のような気もするが、流石に犬に求め過ぎではないだろうか。愛した犬が死ぬのは大変に辛いが、だからと言って転生してまで元の飼い主を愛し続けるように義務付けるのはやり過ぎである。誰しも犬くらいには無条件に愛されたいものだが、限度というものがある。餌と散歩との引き換えに愛を返してくれるだけでも満足すべきなのだ。

また、転生した犬が直通で元の飼い主に辿り着く超強運展開ならまだよいが、そうではない飼い主と共に生きるパターンはどうなるのか。ジョーというガソリンスタンド店主に飼われることになったビッグ犬(本作では二度目の転生)は、偶然に店を訪れたCJを追いかけようとするが、ジョーはどうでもよいのか。もし本作の転生と意識の持続という設定が現実ならば、最初の飼い主以外は実は愛されていないということになってしまう。人間に都合のよい話のようでいて、実は極々一部以外にはとっても都合が悪い。これを素直に受け入れられるのは、自分が選ばれし人間だと思える無自覚な傲慢さの表出ではないだろうか。

グロリアがダメな母親過ぎてドン引きだが、義母ハンナの「CJは私たちが世話するからあなたはキャリアを追ってもいいのよ?」はあまりに無神経な発言である。そんなダメ母の背中を見て育ち、悪い男に引っ掛かり、母と同じくなれもしない歌手を目指してニューヨークへ向かう18才のCJ(キャサリン・プレスコット)。最終的にマックス(三度目の転生)がベイリーであることを認め、「犬が導いてくれたから」という謎の理由で幼馴染みのトレントに愛を告白する。二人が結ばれてハッピーエンドである。夢であったはずの歌手業をバーで一度歌っただけで放り投げ(ここでプロになれるレベルでないことを自覚したのかもしれない)、成功者になっていた幼馴染みに寄生しただけのように見えなくもない。あの母にしてこの娘ありである。

CJとトレントがくっつくのに邪魔となる人物が、あまりにも“悪役”として描かれているのが幼稚である。地元の不良シェーン、CJがニューヨークで寄生していたバリー、トレントの恋人リースル(ダニエラ・バルボサ)。「決められたルートから逸れる気は一切ない」とでも言わんばかりにCJの人生から退場させられていく。煽り運転クソ野郎のシェーンはともかく、バリーとリースルが悪役扱いされるのは気の毒なような気もする。彼らはマックスに人生を歪められてしまった被害者である。彼らに対してトレントは徹底的に聖人として描かれており、却って気味が悪いくらいだった。

ジョーが店の商品を餌としてビッグ犬に与えているが、塩分が多すぎて早死するだろうに。幼いCJが落とした食べ物をベイリーが回収するのはナイスコンビだったが、これもあまり褒められたものではないかな。

登場する四匹の犬の中では、やはりビーグルのモリーが好きである。ビーグルが好きだからスヌーピーが好きなのか。スヌーピーが好きだからビーグルが好きなのか。今となっては鶏と卵だが、三十郎氏はビーグル贔屓なのである。ストーリーの酷さはともかく、とっても可愛いビーグルを眺められたのだけは楽しかった。シェーン許すまじ。

僕のワンダフル・ジャーニー (字幕版)

僕のワンダフル・ジャーニー (字幕版)

  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: Prime Video
 
A DOG'S JOURNEY (Dog's Purpose)

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