オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『レフト・ビハインド』

Left Behind, 110min

監督:ヴィク・アームストロング 出演:ニコラス・ケイジ、キャシー・トムソン

★★

概要

突然人が消失する話。

短評

ニコラス・ケイジ主演なので、いつも通りのB級映画だと思って観ていたら、“まさか”だった。ガッツリと宗教映画である。それも「うわぁ……」とドン引きするくらいの原理主義である。日本で言えば幸福の科学が制作するアニメのような類で、「ちょっとアレなものを観てしまった……」と気不味い気分になる。出演する作品を選ばないという点では非常にケイジ主演作らしいが、やはり少しくらいは選んでほしい。

あらすじ

父レイ(ニコラス・ケイジ)の誕生日を祝うために大学から帰省したクローイ(キャシー・トムソン)。しかし、パイロットの父は急な仕事でロンドンへ飛ぶので不在だと言う。クローイは宗教にハマった母から父が逃げているのではないかと心配するが、その通り、彼はCAのハティ(ニッキー・ウィーラン)とロンドンで密会する予定だった。クローイが弟を連れてモールに行き、レイがロンドンへ向かって飛んでいると、突如人々が服と荷物を残して消失してしまう。

感想

これが飛行機の中だけの話であれば、「実は残っている人々の方がなんらかの理由で死んでいる」といった超常系ホラー的な展開も考えられるが、地上でも同じことが起きているのでそれはない。「どうせちゃんと話をまとめることはないだろう」と諦めながらも、突然人が消失するという状況自体は普通に楽しめる──と思っていたら、想像の斜め上を行くアレな展開が待っていた。オチを考えれば全てが正真正銘の“最低映画”だっと言えるものの、オチさえ違っていれば途中のスリラーは(あくまでB級映画としては)普通に観られなくもないという嫌らしさである。

消失した人々の共通点は、子供であるか神を信じていること。つまり、“消失”は“救済”なのである。牧師のくせに消えなかった男曰く、「苦難の時代が訪れる前に神が守ってくれた」のだと。スリラーやパニックかと思わせておいて、この原理主義的な価値観の一点だけを描いた珍作映画なのである。「(キリスト教の)神を信じる者だけが救われる」という価値観が大前提であり、また疑うことの許されない絶対的な正解なので、“救われた”人々がどうなったのかという不信心者の関心は無視され、ムスリムムスリムというだけで救われない。非常に気味の悪い映画だし、こんな救済なら無い方がマシだと思う。

空港で有名記者ウィリアムズに対して攻撃的な宗教ババアが出てきたり、宗教にハマった母親が家庭を崩壊させるという“我々側”の描写があるが、これは罠である。「お前たちはそうやって信仰者をバカにするが、間違っているのはお前たちの方なのだ」と。間違っていてもいい。「聞いて、世界は滅亡するの」と常日頃から言い出すクレイジーな妻の相手をするくらいであれば、金髪セクシーCAと不倫するに決まっている。しかし、指輪を外していることを娘に見抜かれての「仕事中はいつも外しているんだよ」の言い訳はダサい。ちなみにレイはハティに対して既婚の事実を隠しており、神を信じない者はあらゆる意味で過ちを犯しているということになるらしい。

こんなことを本気で信じている人がいるのかと心配になるが、原作は世界的ベストセラーとのことであり、2000年にも同じタイトルの映画が制作されている。宗教って儲かるんだなあ……。

人が消えてパニックに陥る機内。ここでレイが、減圧して酸素マスクを吸わせることで強制着席させるというファインプレーを見せる。一方の地上ではお約束の略奪が即座に開始される。「人が消えた!……盗もう!」の精神の逞しさである。略奪はアメリカの文化らしい。

レイの浮気相手ハティがセクシーだった。彼女の服は非常にピッチリとしており、自分の搭乗する便に彼女がいれば、片時も目を離せないと思う。一方のクローイの服はゆったりとしているとしているのだが、おかげで彼女が前屈みになった時に目を離せなくなる。三十郎氏は隙間の愛好家である。

レフト・ビハインド(字幕版)

レフト・ビハインド(字幕版)

  • 発売日: 2015/11/03
  • メディア: Prime Video