オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ドクター・スリープ』

Doctor Sleep, 152min

監督:マイク・フラナガン 出演:ユアン・マクレガーレベッカ・ファーガソン

★★★

概要

超能力者決戦@展望ホテル。

短評

かの有名な『シャイニング』の続編である。というわけで、一応はホラーのカテゴリーになるのだと思うが、実際にはホラー映画という感じはしないし、怖くもない。シャイニングなる特殊能力の存在を前提とした話なので、どちらかと言えばヒーロー映画である。“呪われし能力を持つヒーローの物語”といった趣だった。これはこれで楽しめたが、やはり三十郎氏が好きなのはキューブリック版の『シャイニング』なのだと思わずにはいられない。

あらすじ

1980年。あの事件以来、ダニーは母ウェンディ(アレックス・エッソー)とトラウマに苦しみながらフロリダで暮らしていた。時は流れ、2011年。大人になったダニー(ユアン・マクレガー)は、自身の能力に悩み、アルコール中毒に陥っていたが、親切にしてくれるビリーのおかげで立ち直る。更に時は流れ、2019年。特殊な力(=シャイニング)を持つ子供たちの生気を吸うことで生き永らえているローズ(レベッカ・ファーガソン)らの集団と超能力少女アブラが対立し、アブラとテレパシーで繋がっていたダニーも戦いに巻き込まれる。

感想

“あの事件”を経験したというだけでも一生モノのトラウマだろうが、ダニーの悩みは自身の能力に関するものである。子供時代は亡霊ディックの導きにより一応の解決を見せるものの、見えているものの違う“普通の人々”の世界には大人になっても馴染めない。それ故に彼はアル中となり、序盤は苦悩の描写がメインである。そのどん底ぶりを象徴するシーンとして、普通の人なら幼児に同情して良心が咎めるであろう場面でそうならないものがある。貧すれば鈍する具合にゾッとした。

ローズらの集団(トゥルー・ノットというらしい)の説明をするためにアンディ(エミリー・アリン・リンド)のエピソードを消化し、どうしてダニーが選ばれたのか理由は分からないが、彼とアブラが繋がる。ここから先の能力バトルが本編である。シャイニングは“何かよく分からないけれど声が聞こえる”能力ではなく、ガチの超能力である。ダニーの話だけならキューブリック版の続編として受け取れるが、具体的に能力を見せられてしまうと別の世界観である。

アブラは非常に強い能力の持ち主で、ローズの“犯行”を察知して“超能力的”に対立する。空間を隔てている彼らの接触(意識を飛ばしたり、相手の頭に入り込んだり)を表現する描写がなかなかに面白い。ただの透視や意識下で会話するだけでなく、重力があらぬ方向へと変化したり、宙から手が出てきて物理的な接触があったりする。魂と肉体の繋がりを視覚的に表現したのだろうが、映像としてはマジックリアリズム的な趣があって楽しかった。

本作のラストは原作から改変されており、キング版『シャイニング』のラストと同じなのだとか。小説では前作の最後にホテルが燃えてしまっており、ダニーたちはホテル跡地のキャンプ場でローズと対決するらしい。これは確実につまらない。キューブリック版を踏襲して正解である。その意味ではキューブリック版の世界を上手く引き継いだとも言えるが、客寄せのために模倣しただけと言えなくもない。あのホテルが蘇った姿を見るのは確かにワクワクしたが、最も有名な“扉”のシーンで「ここはあのシーンのあの扉ですよ!」とアピールするのは明らかにやり過ぎで、却って冷めた。

というわけで、本作は『シャイニング』の続編でありながら『シャイニング』の続編ではないという一作である。これをキングとキューブリックの融合と捉えるか、それとも後者の要素はファンサービスに過ぎなかったと捉えるか。たとえ単なるファンサービスでも楽しいものは楽しいだけに評価が難しい。

二時間半は流石に長くて、冗長に感じた。「これはディレクターズ・カットにしてニ時間程度にまとめた劇場版を作ればよかったのに……」と思ったら、三時間のディレクターズ・カット版があるらしい。確かに説明不足な箇所があったので追加するべき要素はあるのだろうが、その前に削れる要素も多いと思う。色々と矛盾を孕んだ一作である。

ダニーとローズの対決のシーン。階段で睨み合っている時にダニーの方が上にいるので、「地の利を得たぞ!」を思い出した。なお、彼は残念ながら地の利を活かせなかった。

バーテンと化したジャックを演じたのは、ヘンリー・トーマス。伝説的な演技を披露したジャック・ニコルソンの後釜は荷が重すぎた。彼の狂気を最も再現できる俳優はレオナルド・ディカプリオだと思うが、ギャラの問題を解決できたとしても悪目立ちしてダメだろうな。

ドクター・スリープ(字幕版)

ドクター・スリープ(字幕版)

  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: Prime Video
 
ドクター・スリープ ディレクターズカット(字幕版)

ドクター・スリープ ディレクターズカット(字幕版)

  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: Prime Video