オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『シャドー・チェイサー』

The Cold Light of Day, 93min

監督:マブルク・エル・メシュリ 出演:ヘンリー・カヴィル、ベロニカ・エチェーギ

★★

概要

父親の仕事のせいで休暇中の一家が拉致される話。

短評

ヘンリー・カヴィルスーパーマンになる直前に主演したB級アクションスリラー。重要ではあるが出番の少ないキャラクターにブルース・ウィリスシガニー・ウィーバーの二人を配役した辺りからも、一人では客を呼べない当時の微妙なスターパワーが窺える。内容は陰謀に巻き込まれた主人公がドタバタしながら事件を解決するというありがちなものだが、B級映画らしく無駄な描写や無理のある展開が多かった。

あらすじ

大使館で働く父マーティン(ブルース・ウィリス)を訪ねて、スペインへとやって来たアメリカ人のウィル(ヘンリー・カヴィル)。家族でヨットクルージングしている時に、泳いで町へ買い物に行ったウィルが戻ってくると、ヨットが見当たらない。彼はなんとかヨットを見つけるも、そこには誰もいなかった。

感想

『シャドー・チェイサー』という邦題は失敗である。2016年のロシア映画『シャドウ・チェイサー(Маршут Построен)』と紛らわしいからではない。主人公が“追う”のではなく、“逃げて”ばかりだからである。家族の失踪を知ったウィルは警察に駆け込んで現地へ行くも、銃を持った怪しい男がいたので逃亡。合流した父と共に行動開始するも、彼が殺されて逃亡。大使館に駆け込んだ後に父の同僚ジーン(シガニー・ウィーバー)に会うも、やはり逃亡。父の携帯の通話記録を追って現地女性ルシア(ベロニカ・エチェーギ)に出会い、彼女と共に逃亡。

終盤にようやく“追う”展開がやって来るのだが、ここにかなり無理がある。実は父が大使館職員ではなくCIAで、モサドの機密資料を盗んで売却するという仕事にジーンと共に関与していた。家族を拉致した犯人はモサドで、曰く「ジーンは必ずお前に接触してくる」と、彼らに捕まったウィルは泳がされることになる。ジーンがウィルを始末する必要が必ずしもあるとは思えない上に、ウィルはあくまで囮なので、彼本人が資料を奪取すべくジーンを追う必要はない。また、ウィルはジーンの手下を拉致して“泳がせる”のだが、泳がされている彼が泳がせるという奇妙な状態になっている。それなら余計なワンクッションを挟まずともモサドが直で動けばよいのに。

それでもアクション映画では主人公が活躍しなければ話にならない。スーパーマンのイメージとは対照的に「意外と運動苦手なのかな?」と思うようなドタバタ感があったが、走行中の車に飛び乗るという決死の行動でウィルは資料を奪取する。ところが、彼はそんなに大切な資料を呑気に放置し、ジーンにあっさりと奪還されてしまう。上述の理由によりジーン発見後はモサドに任せればよいはずだが、何故かウィルが彼女を追い掛けて迫力のカーチェイスを繰り広げる。勢いで誤魔化しきれていない穴のある脚本だった。

友好国イスラエルの機密資料を盗んで売るというCIAらしからぬ行動をとる父マーティン。普通に悪党だと思うのだが、一応はジーンに巻き込まれただけという設定になっている(それはそれで頭が足りないような……)。見事にミッションをやり遂げたウィルに対し、機密資料を盗まれたモサドや裏稼業を見逃していたCIAが「父も天国で誇りに思うはずだ」「彼は正直な人だった」と告げるが、“正直”かどうかはかなり怪しい。お決まりの展開で登場する現地美女のヒロインであるルシアは、なんと父の隠し子である。ウィルとそれほど年の変わらない妹である。世界中を転勤し続けてきたという設定だったので、彼女以外にも誰かいるかもしれない。入院した彼女をウィルの母が見舞っていたが、なんと懐の深い女性だろう。

下半身が世界を股にかけて活躍してきた父マーティンとは対照的に、ウィルは無能な経営者だった。「忙しくて休暇を取ってる場合じゃないんだけれど」と言いながらスペインを訪れて、その日の夜に会社の破産通告を受ける。本当にスペインに来ている場合ではない。その程度の状況判断もできない人が経営者であれば、潰れて当然という気もする。しかもコンサル業である。こんな奴に何を教われと。

シャドー・チェイサー

シャドー・チェイサー

  • メディア: Prime Video