オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スーサイド・スクワッド』

Suicide Squad, 123min

監督:デヴィッド・エアー 出演:ウィル・スミス、マーゴット・ロビー

★★

概要

凶悪犯を集めて戦わせる話。

短評

期待度マックスの予告編からの落差が空前絶後のDCEU3作目。とても面白くなりそうな設定なのに、それを全く活かすことのできなかった残念な一作である。ヴィランをヒーローに仕立て上げてしまった時点でヴィランとしての魅力が消失し、“改心した囚人が頑張る”だけの話になってしまっている。ハーレイ・クインのビジュアルが最高なのは認めざるを得ないが、結局は彼女を愛でるだけの映画に終わってしまった。

あらすじ

スーパーマンの出現により世界は変わり、彼の死により世界は再び変化した。ウォラーは新たなる敵の出現に備えて、“悪をもって悪を制す”──タスクフォースXの結成を提唱する。メンバーは、世界一の殺し屋デッドショット(ウィル・スミス)、ジョーカー(ジャレッド・レト)の恋人ハーレイ・クインマーゴット・ロビー)、オーストラリア人の強盗キャプテン・ブーメラン、炎を操るエル・ディアブロ、下水道怪人キラークロック(彼のオリジン映画『セプティック・マン』もよろしく!)、魔女エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)、壁登りが得意なスリップノット。フラッグ大佐(ヨエル・キナマン)に率いられ、ミッション開始である。

感想

映画の開始から20分が純粋なキャラクター紹介で、その後の勧誘パートも含めた30分までを“紹介だけ”に費やしている。物語は一切進まない。彼らの中からラスボスが出てきはするものの、“悪人を集めて戦わせる”というアイディアありきの一作で敵の紹介までしていられないという事情によって生まれた自作自演の敵だとしか思えない。とにかくアイディアありきの印象が強く、ストーリーの“あってないようなもの”感が酷かった。キャラクター紹介映画に終わった本作の失敗を『ジャスティス・リーグ』が繰り返さないことを願っていたが……。

その魅力的なアイディアも、ヴィランがヒーローになってしまえば無意味である。『ジョーカー』ではヴィランヴィランのままにヒーローとして受け入れられたが、本作のヴィランたちは「悪役にも色々事情があるんですよ」「世界を救うぜ!」と“ヒーローらしいヒーロー”になってしまう。そもそもウィル・スミスが主人公の時点で“なんだかんだで良い奴”にしか見えないではないか。一度集まって戦いはじめれば、後は普通のヒーロー映画である。本作に人格、行動共に純粋な悪役が存在するとすれば、ウォラーくらいのものである。せっかく救出した超重要人物が彼女だったと判明した時のメンバーの失望は察するに余りある。彼女にはなんとか死んでほしかった。

バットマンvsスーパーマン』後の世界なので、バットマンワンダーウーマンが対処しない理由が存在しつつ、ヴィランたちには戦う理由が存在する。その上で、ヴィランたちの“悪役的インセンティブ”に基づいた思惑が絡み合って共闘するという展開になれば理想的だったが、その内の一つも満たされていなかった印象である。監督のエアーは「『ジャスティス・リーグ』のスナイダーズ・カットを作るなら自分にもディレクターズ・カットを」と文句たらたらのようだが、シーンの追加により魅力は増やせても、構造上の欠陥を埋められるのかは疑わしいものである。

詰まる所、本作はハーレイ・クインのための一作である。前作までのダーク路線を踏襲していれば、ヴィランヴィランらしく活躍できる映画になったのではないかと思わなくもないが、それではコミカルな彼女が浮いてしまう。彼女のショートパンツからはみ出た豊満な尻は最高の一言であり、しっかりと張りのある絶妙な肉付きが至高である。しかしながら、最高のビジュアルに反して演出にも演技にもわざとらしさが目立ち、明るいノリを求めて多用したポップミュージックでぶつ切りにされてしまった物語と相まって、最高クオリティのコスプレ大会になってしまった。

ハーレイ・クインの魅力の前に霞んでしまいがちだが、エンチャントレスも薄着でクネクネしていてセクシーである。彼女が一般人を兵士に変貌させる際に濃厚なキスを施しており、これなら彼女の軍門に下りたいと思った。

ジャレッド・レトのジョーカーは絶大な支持を集めた前任者(と後任者)に比べるとかなり落ちる印象だが、そこまで酷いとは思わない。ただ、彼の部屋に(警察の押収物のように)整然と並べられた武器類は美しすぎて、“Agent of Chaos”という感じはしない。出番が少ないこともあってキャラが弱いのである。いっそのこと彼をラスボスにしてみてはどうだったのだろう。

ジェームズ・ガンによる『The Suicide Squad』はリブート版に近くなるようだが、ウィル・スミスを除いた主要キャストは続投のようである。果たしてどんな映画になるのだろう。DCEUという括りにはなっているが、シリーズの世界観と雰囲気が一貫していないし、最重要キャラのバットマンは役者が降板するし、続編がリブートになるしで、かなり迷走している。キャラクターはマーベルよりも好きなので頑張ってほしいのだが……。ちゃんと単独映画をこなしてから集合映画を作ったマーベルはなんだかんだで優秀である。

エル・ディアブロの服が変身後もそのままなのは、ハルクの伸縮性のあるパンツ以上に違和感がある。

プライムビデオの配信版ではEDロール終了後にNG集が流れる。

スーサイド・スクワッド(字幕版)

スーサイド・スクワッド(字幕版)

  • 発売日: 2016/11/23
  • メディア: Prime Video