オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デッド11 復活ナチゾンビ軍団』

Trench 11, 91min

監督:レオ・シャーマン 出演:ロシフ・サザーランド、ショーン・ベンソン

★★

概要

ドイツ軍の地下研究施設を連合軍が調査する話。

短評

色々とタイトル詐欺である。第一に、本作の舞台は第一世界対戦であり、ナチス・ドイツも成立していなければ、国家社会主義ドイツ労働者党も存在していない。第二に、人間的自由意志を失ったゾンビ的な人間が出てくるものの、復活した死者でもなければ不死身でもなく、ゾンビではない。第三に、完全なバカげたB級映画なのかと思ったら、意外にも静かで、示唆的ですらある一作である。これまた意外にも作り込まれたセットや特殊効果の出来栄えは素晴らしかったが、バカ映画を期待していたので少しガッカリである。

あらすじ

1918年、フランスの西部戦線。連合軍は、ドイツ軍が撤退した塹壕に地下研究所があると突き止め、ジェニングス少佐率いる部隊を派遣する。一方のドイツ軍。既に敗戦を覚悟していたが、研究の内容が連合軍に漏れると講和条件に悪影響を及ぼすということで、研究所を爆破するために部隊を派遣する。果たして地下研究所には何があるのか……。

感想

ドイツ軍は寄生虫を利用した人体改造の研究をしている。寄生虫前頭葉を乗っ取られた人間は凶暴化してしまうのである。この寄生虫は犬糸状虫と呼ばれるフィラリアの一種で、細長くてウヨウヨしているタイプである。これがめちゃくちゃに気持ち悪い。本作にはゾンビ映画らしい頭部の破壊描写も出てくるが(ゾンビ退治ではなく「殺してくれ!」とせがむドイツ兵)、寄生虫への生理的嫌悪感はその比ではない。頭が吹っ飛ぶと「ヒャッホー!」と喜ぶ三十郎氏だが、寄生虫が蠢いているのを見ると、思わず「ギョエー!」と目を背ける。これが一匹だけなら耐えられるものの、開腹手術で大量に出てきたり、感染者の顔の穴という穴から湧き出てくる描写は最悪(褒め言葉)である。想像しただけでも鳥肌が立つ。違和感のない描写だったが、CGなのだろうか。

感染症は人類共通の敵である。この数ヶ月で皆が嫌でも理解したことだろう。研究の証拠を持ち帰るのが目的の連合軍と研究を隠蔽するのが目的のドイツ軍には衝突があってしかるべきなのだが、現場レベルでは「この感染症を外に出してはいけない」という合意が形成される。また、寄生虫による凶暴性の獲得を「この四年間皆がずっとおかしかった」と戦争そのものに喩えるシーンもあり、意外にも示唆的なのだった。更に、現場は感染症撲滅で合意しても、指揮官たちは別の目的で動いていたりする。感染症という今日的な視点で見ても、戦争というそもそも映画が意図している視点で見ても、B級映画らしからぬ真面目な話になっている。

その代わりと言っては何なのだが、盛り上がりには決定的に欠ける一作となっている。凶暴化人間たちに襲われるシーンはあるものの、彼らの描写自体にインパクトがあるわけでもなければ、数の力で勝負するわけでもない。むしろ寄生虫と判明する前の「何が出てくるのか分からない不安」で勝負するホラーの部分がメインである。セットはよく出来ているので、ゾンビ映画だと知らずに観れば楽しかったのかもと思わなくもないが、やはりゾンビ的な化け物が出てくる時点でゾンビ映画的な盛り上がりを期待してしまっただろう。

主演のロシフ・サザーランドは、ドナルド・サザーランドの息子で、キーファー・サザーランドの異母弟である。絶望的に華のない顔立ちをしているため、途中まで彼が主人公なのだと理解できなかった。彼の恋人ベロニクを演じるカリーヌ・ヴァナッスは美人で、彼女の主演作品『スウィッチ』の関連作品に表示されていたので本作を観ることとなった。彼女の方から言い寄ったという設定が信じられないカップルである。なお、同作では素晴らしいサービス精神で三度もおっぱいを披露してくれたカリーヌだったが、本作ではうっすらと服の下に透けているだった。