オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』

Batman v Superman: Dawn of Justice, 152min

監督:ザック・スナイダー 出演:ベン・アフレックヘンリー・カヴィル

★★★

概要

バットマンとスーパーマンが戦う話。

短評

バットマンとスーパーマンMCUがハリウッドを席巻するよりも前からのアメコミ界のニ大スターである。その両雄が相見える。最高にワクワクするではないか。しかし、本編を観ずとも誰もが察する、「どうせ“一緒に”戦うんでしょ?」と。そして、その通りになってしまうという決定的なガッカリ感は否定しようがないのだが、そのガッカリにさえ慣れてしまえば、良い場面も多いと再評価できる気がしてきた。ゴツゴツした合金スーツに身を包んだバットマンは格好いいし、やはり二人が対決する場面は盛り上がる。

あらすじ

スーパーマンヘンリー・カヴィル)とゾッド将軍の戦いによりボロボロに破壊されたニューヨーク。その戦いで自社ビルや社員を失い、怒りに燃える一人の男がいた。ブルース・ウェイン──バットマンベン・アフレック)である。時を同じくして、スーパーマンの存在を危険視する世論が盛り上がりを見せ、公聴会が開かれる。しかし、その裏ではレックス・ルーサーJr.(ジェシー・アイゼンバーグ)による陰謀が進行していた。

感想

ただの人間であるバットマンが最強宇宙人のスーパーマンに勝てるはずがない。ご自慢のバットモービルは無様にふっ飛ばされ、「僕がその気ならとっくに死んでるぞ」とまで言い捨てられてしまう戦力差である。しかし、スーパーマンの弱点であるクリプトナイトを利用すれば、互角以上に戦えてしまう。バットマンがスーパーマンのパンチを受け止めた瞬間の興奮と言ったら!屈指の名場面である。ここで盛り上がりは最高潮を迎え、タイトル詐欺ではなくちゃんと(ヒーローらしく立派で力強いケツ顎を持つ)二人の戦いが成立している。「これが見たかった!」である。

しかし、ユニバース構想を続けるためには二人の共闘展開をとらざるを得ない。そのガッカリ自体には既に慣れてしまったが、その理由には未だにズッコける。何度観ても悪い冗談だとしか思えない。「母親の名前が同じだから」って……。男は皆マザコンなのかもしれないが、憎き敵が自分の母の名を口にしたからと攻撃を止めるだろうか。ブルースの少年時代に死んでしまった母と数年前に現れたスーパーマンには何の関係もないのに。この場面だけはどんな無理やりな擁護も思い付かない。三十郎氏は弁護士にはなれない。

二人を戦わせるためなのか、スーパーマンのキャラクターが小者化されていたように思う。自分は好き放題やっておきながら、記者ケントとして「バットマンは法を無視している。問題だ」と追求し(あれだけ上司に逆らえば解雇されるだろう)、「赤マントにべったりのデイリー・プラネット紙が言うなよ」と苦言を呈されると、「世間はそう思ってませんよ」とTwitterでアンチに対してファンネルを飛ばす有名人みたいなことを言う。公聴会爆破テロ後は「もう嫌……。ぴえん」と引きこもり生活を開始したり、オリジンである前作よりも情けないヒーローになっていた。ロイス(エイミー・アダムス。本作では徹頭徹尾無能極まる立ち回りだった)の危機を察して戻ってくるものの、彼女と母が拉致される時には何故気付かなかったのだろう。

本作最大の名場面は、バットマンでもスーパーマンでもなくワンダーウーマンガル・ガドット)の登場シーンである。特に彼女のテーマ曲『Is She With You?』を手掛けたハンス・ジマー(とジャンキーXL)には最大級の賛辞を送りたい。この曲の力だけでも相当に得をしていると思う。三十郎氏は彼女の単独映画があまり好きではないのだが、本作ではアメコミ界の二大巨頭を後ろに従えても絵になるという圧倒的存在感が光っている。「ナチスじゃなくてもドイツ軍なら勘違いで殺しちゃってOK」なドジっ子ダイアナよりも本作のクールビューティーな彼女が好きである。彼女のコスチュームもセクシーで格好いいと思うが、次回作では露出を減らされてしまうようで残念。

バットマンがホワイト・ポーチュギーを追うシーン。その後ルーサーの研究所に盗みに入るため、あの大立ち回りは全くの無意味だったわけだが、彼に釘を刺すスーパーマンに対して放つ「Do you bleed?」を「(お前の)血は赤いのか?」としたのは名訳だと思う。

頭脳派として立ち回るヴィランのルーサーは魅力的だが、彼の最大の功績は消化不良に終わった“バットマンvsスーパーマン”を実現させたことである。それが終了した後に登場する真の敵ドゥームズデイは、ただ強いだけで意思のない化け物であり、キャラクターとしての面白みには欠ける。倒されるためだけの存在である。こう考えると、やはり力と知性の両方を備えたサノスはヴィランとして優秀だったと認めざるを得ない。なお、ドゥームズデイ登場後のバットマンの活躍しなさは流石に少々寂しいものがある。場違いな傍観者にすら見えるのが物悲しい。

ワンダーウーマン』のヒットを受け、それ以降の作品が“明るいヒーロー映画”へと方針転換しているDCEU。制作費が高額故に観客の反応を最優先にしてしまうのは仕方がないとは思うが、個人的にはダークな世界観を維持してMCUと差別化してほしいという思いが強い。ベン・アフレックの降板も決まり、この先どうなるのかは分からないが、悪いスーパーマンが出てくる悪夢のシーンはちゃんと回収してほしい。

プライムビデオで配信されているバージョンでは、EDロール後に五分ほどの特典映像が流れる。バットマンとスーパーマンの戦いを「こんな武器を使ってます」「こんな重さと速さの攻撃です」と説明する動画である。これはこれで面白かったのだが(機関銃の攻撃は時速95kmの野球の球が当たる程度の痛みとのことだったが、弾数を考えればかなり痛いだろう)、特典なんかよりも3時間超あるという「アルティメット・エディション」を観てみたい。アマゾンでも配信はされているものの、購入版のみである。流石に買うのはなあ……。近所のレンタル店でも取扱いがないし……。

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(字幕版)