オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ドラゴン怒りの鉄拳』

精武門(Fist or Fury), 106min

監督:ロー・ウェイ 出演:ブルース・リー、ノラ・ミャオ

★★★

概要

ブルース・リーが悪い日本人を成敗する話。

短評

ブルース・リーの香港帰国後第二作。日本での劇場公開時には悪役が日本人であることがボカされたそうだが、このレベルの描写からも逃げ回っていては歴史と向き合うのは無理だろう(もっとも本作を観て過去の行いへの反省から暗い気持ちになる必要もないと思うが)。「ブルース・リー=最強のヒーロー」であることを楽しめれば、それだけで十分以上なのである。細マッチョの理想形とも言える筋肉、緩急自在のキレのある動き、そしてヌンチャクも登場する大サービスである(怪鳥音とヌンチャクは本作が初出なのだとか)。中国武術の精神由来なのか、「敵を倒してハッピーエンド」とはなっておらず、それがまた印象的だったりする。

あらすじ

中国の英雄的武術家ホー・ユンカップが死去する。彼の愛弟子チャン(ブルース・リー)は師匠の死を知って激しく落ち込むも、死因に疑問を抱く。門下生たちが悲しみに暮れる中、鈴木館長率いる虹口道場の日本人たちが「東亜病夫」と書かれた看板を持って挑発にやって来る。「流派争いをしてはならぬ」という師の教えに従って怒りを抑える門下生たちだったが、虹口道場の嫌がらせは止まらない。師が毒殺されたことを知ったチャンは、一人で敵討ちに挑む。

感想

精武館での挑発には耐えたチャンだったが、その後一人で虹口道場へ。「東亜病夫」の看板を突き返し、「精武館では俺が一番弱いぞ」と道場破りに挑む。そこでおもむろに上半身の服を脱いで見せつける筋肉の格好よさである(何故脱いだのかは分からない)。虹口の道場生たちを叩きのめし(囲まれた時の俯瞰ショットが良い。その中心で落ち着き払っているリーの余裕である)、溜飲を下げるチャンだったが、その行動により事態は余計に面倒ことになる。

日本人が再度精武館を荒らしに来て(師匠の祭壇も破壊)、「チャンを引き渡せ」と要求。精武館の閉鎖が危惧される事態となってしまう。悪い奴らを倒せば確かに気持ちいいが、師の教えは「武術は心身を鍛えるためのもの」であり、「相手を傷付けるためのもの」ではないのである。その後、虹口道場の陰謀の証拠を掴んだチャンは敵討ちに打って出るものの(「倒す」ではなく「殺」して電柱に吊るという激しさ)、最後は銃を構えた警察に飛び蹴りで向かっていくというバッドエンドである。それでも師範が「我々は我慢しすぎた」と擁護しているように、たとえ師の教えに背くことになろうとも、自らが命を落とすことになろうとも、抑えきれないのが“怒りの鉄拳”なのであった(拳よりも足の活躍が目立つが)。

スパイの腹巻きを見たチャンが「日本人か?」と訊くシーン。瓶底眼鏡なんかは分かりやすい日本人のアイコンだと思うのだが、腹巻きもそうなのか。その腹巻きの上から強烈なボディブローをお見舞いし、チャンの腕はプルプルと震え、殴られた方はゆっくりと崩れ落ちる。他のシーンでは普通のスローモーションを使っている場面もあるのに、ここだけは“セルフ”スローモーションである。

「師の敵を討つ」と書き置きを残して出立するチャン。師の墓の隣で焼いた謎の肉を食べている(かぶりつく姿も殺気立っていて、アクションシーンと同様の緩急がある)。加工・成形されて原型が分からなくなった謎肉ではない。動物としての形を残しているのに、何の肉なのか分からない。本物の謎肉である。謎肉を食べていると婚約者ユアン(ノラ・ミャオ)が現れ、二人は熱い抱擁と接吻を交わす──師の墓の前で、謎肉を食べた口で。背中合わせで夢を語り合う二人を交互に捉えたショットがやけにロマンチックだった。

鈴木の通訳ウーが「大日本帝国は素晴らしい」と、ロシアン・マフィアのペトロフが「国を出て良かった」と絶賛する日式ストリッパー。服を脱いだら水着が出てきて、水着を脱いだらニップレスが出てくる。ウーたちは絶賛していたが、彼女はだらしない身体をしていたので、欧米をストリッパーを見ればあっさりと掌を返すと思う。ちなみにBGMがソーラン節だった。ウーは中国人なのだが、七三分けの頭と眼鏡の組み合わせ、貧弱な肉体、弱者に鞭打ち、強者にへつらい、酒でへべれけに酔っ払う。最も日本人のステレオタイプに近いキャラクターだったと思う。

公園に「中国人と犬は立ち入り禁止」という注意書きがある。上海の日本租界における現地人差別を表すシーンなのだが、チャンにそれを指摘する守衛を演じているのがブラック・フェイスのインド人風中国人で、時代の流れを感じて笑える。この注意書きを一度蹴り上げ、空中で蹴り割るアクションは、中学生の頃なら絶対に憧れたと思う。

チャンの手の動きを残像で表現する演出と鈴木館長を部屋の外まで綺麗にぶっ飛ばす飛び蹴りが格好よかった。飛び蹴りは韓国映画の専売特許かと思っていたが、やはり本家であり極地はカンフー映画にある。

ドラゴン怒りの鉄拳(字幕版)

ドラゴン怒りの鉄拳(字幕版)

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