オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『引き裂かれたカーテン』

Torn Curtain, 127min

監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ポール・ニューマンジュリー・アンドリュース

★★★

概要

アメリカ人物理学者が東ドイツの科学者から機密情報を聞き出す話。

短評

東西冷戦を背景に、機密情報の数式入手と主人公を追い掛けてきた恋人という二重構造を持つサスペンス映画。恋人をも欺くスパイという設定は面白ったが、少々冗長な感じがして、ヒッチコック映画としてはキレに欠ける一作となっていた。緊迫感があるはずのシーンにも“ユルさ”が目立った印象である。

あらすじ

ノルウェーで開催された国際物理学者会議に出席したマイケル(ポール・ニューマン)。彼の助手であり婚約者でもあるサラ(ジュリー・アンドリュース)には「仕事でスウェーデンに行く」と言いながら、彼は東ベルリンへと飛ぶ。マイケルの様子の不自然さに気付いたサラは、彼を追って同じく東ベルリンへと飛ぶ。現地入りしたマイケルは、アメリカが中止したミサイル開発計画を完成させるため、東ドイツへの亡命を表明する。しかし、その裏には別の目的があった。

感想

売国奴マイケルは実はアメリカ側のスパイで、ミサイル開発に必要な数式を東側のリント教授から聞き出すのが仕事である。この数式が本作のマクガフィンということになる。追手を巻きながら諜報員「π」に会いに行くというスパイ映画らしい展開があったり、スパイなのが当局にバレそうになったり、婚約者にも正体を隠したまま活動したりと、最後の逃走劇に至るまで様々なサスペンスが用意されてはいるのだが、これといったものはなかった印象である。

東独当局だけでなく婚約者をも欺かねばならないという設定も上手く機能していなかった印象である。マイケルにスパイ疑惑が掛かって共同研究がストップし、サラに大学から聞き取りがあるシーンは、“彼女が何を話すのか”という緊迫感が漂うものの(彼女の顔のアップがふわっとした映像になっているのはどんな狙いだろう?)、マイケルが彼女にバレないように四苦八苦するサスペンスは残念ながら存在しなかった。終盤の逃走劇に向けてあっさり白状してしまうのも物足りない。ロマンス要素を無理やり入れただけな感じがする。

ストーリー上では最も重要となるリント教授から数式を聞き出すシーンは、教授が科学者らしくヒートアップして勝手に黒板に書き殴っていくというもの。ミッション成功の条件(=数式をどこまで書いた時点でミッション完了なのか)が明確でないためなのか、今ひとつ緊迫感に欠けるものとなっている。逆にリント教授が滑稽に見えて、コメディ感があった。

数式を聞き出すという“クライマックス”を終えてからの逃走劇。せっかく聞き出した情報も持ち帰らなければ意味がない。マイケルたちが無事に逃げ出せるのか否かは分かりやすいサスペンスであり、彼らを追っているはずの軍人に護衛してもらうというユーモアが光る展開もあったが、クライマックス後の話としては少々尺が長い。アメリカへの亡命を希望するポーランド人は強烈なキャラクターだったが、強烈過ぎて浮いていたと思う。

グランド・ブダペスト・ホテル』のオマージュ元を発見できたのは収穫だった。東独でマイケルの案内役(=監視)を務めるグロメクは、革ジャンにバイクの組み合わせで尾行している。このビジュアルがジョプリング(ウィレム・デフォー)にそっくりだと思ったら、なんと美術館での追跡劇が。完全にコヴァックス(ジェフ・ゴールドブラム)殺害のシーンと一致である(マイケルは殺されないが)。逆にグロメク(ドイツ人)の方をガスで殺す演出は皮肉が効いていた。

引き裂かれたカーテン (字幕版)

引き裂かれたカーテン (字幕版)

  • 発売日: 2014/02/02
  • メディア: Prime Video