オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ベルリン・シンドローム』

Berlin Syndrome, 115min

監督:ケイト・ショートランド 出演:テレサ・パーマー、マックス・リーメルト

★★★

概要

旅先で男と寝たら監禁される話。

短評

主人公が脱ぎっぷりのよい美女なので楽しかったが、不足と飛躍のある描写が腑に落ちない監禁映画。異国での曖昧な不安感から男と交わり、その男が変態サイコ野郎だったという流れにはリアルな恐怖があるのだろうが(女性旅行者はお気をつけて)、そこから先の心情描写にはリアルだと感じられるような具体性が欠けていた。主人公を演じるテレサ・パーマーは、顔もおっぱいもお尻も素敵で、三拍子揃った美女である。これをじっくりと拝めるだけでも満足だったと言える。だからと言って監禁したいとは思わないが。

あらすじ

ベルリンを一人旅行中のオーストラリア人クレア(テレサ・パーマー)。地元の英語教師アンディと出会い、仲を深め、彼の部屋で関係を持つ。アンディは仕事へと出掛け、クレアが外出しようとすると、扉に鍵が掛かっていて出られない。翌日、アンディは鍵を置いて出かけるが、やはり扉は開かない。

感想

監禁映画でこのタイトルならば、「ストックホルム症候群」を意識していることは明白である。従って、「ベルリン症候群」のどこがストックホルム症候群と同じで、どこが違うのかに注目することとなる。

二日目の朝に遅まきながら監禁に気付いたクレア。当然目標は脱出である。ベッドに拘束されて一日を送るものの、彼女が「どうせ逃げられない」と告げるとアンディは拘束を解いて出勤。この間にドライバーをゲットして彼の手を串刺しにするのだが、アパート全体がボロく、扉の立て付けが悪くて逃走は失敗に終わる。ここまでは(映画的に)よくある話。彼女の心情が読み取りづらくなるのはその先である。

この失敗があった後、クレアは脱出を諦め、アンディとの生活に順応していくかのように見える。アンディの父が死んだ時にはクレアの方から慰めセックスを提供し、正にストックホルム症候群に陥ったかのように見えなくもない。しかし、この心境の変化の“過程”が描かれていないため、外見通りに彼女が“落ちた”と納得できる瞬間は訪れない。その疑問の通りに彼女は脱出を諦めておらず、最終的には復讐完了で終劇となる。

ここで気に掛かるのは、「脱出を諦めていないなら挑戦するチャンスはいくらでもあった」という点である。アンディが働きに出ている日中は部屋で自由行動なのに、部屋の中を探し回ったり、キッチンにあるはずの包丁を使うこともない。扉の破壊にも挑まない。それどころか一人楽しくヌード撮影していたりする。三十郎氏は最後の行動から「諦めていなかった」と受け取り、彼女の順応は見せかけだったと解釈したのだが、部分的にはストックホルム症候群と同じ状態だったということなのだろうか。外出時のチャンスや殺人の目撃により衝動的な脱出願望が顔を出しただけなのだろうか。この辺りの描写が不足していて、よく分からないのが不満だった。

第一義的には[誘拐→好意]のストックホルム症候群とは逆に、[好意→監禁]がベルリン症候群だったと思うが、その大まかな流れ以外の部分をどう見せたかったのかが不明瞭である。アンディの描写に時間を割きすぎて、主人公たるクレアの描写が不十分になっていたように思う。女性の観客なら彼女の心の機微を読み取れるのだろうか。

ラストの脱出シーンは、描写が完全に飛躍していると言わざるを得ない。アンディが授業中に送った熱い視線を察した女子生徒フランカ(エマ・バディング)が一度家を訪れてクレアを目撃。クレアが彼女のノートにお宝エロ写真を忍ばせると、彼女は事態を察して助けに来てくれる。ここでフランカが警察に通報したならそこで終わりだが、映画的にはクレアに復讐させなければならない。問題は「どうやって?」である。鍵はアンディが持っているのにどうやってフランカが扉を開けたのか。仮に女二人に忍者的隠密スキルがあったとして、アンディが扉を開けた隙に移動したとしても(明らかに帰る前から開いてたけど)、開かれた窓と中庭に投げ捨てられたセーフティボックスの説明がつかない。そもそも逆監禁オチが可能なら、最初の逃亡時に同じ事をすればよかったのに。

アンディの“闇”についても母に捨てられた過去が関係している“らしい”ということだけが語られたり、全体として説明的な描写を抑えた一作である。映画の核心となるクレアの心理状態が分からないのは納得できないものの、抑えた描写が効果的な部分もあった。監禁前のアンディに惹かれるクレアについては、仕事を辞めて旅に出るも、安宿の仲間とも今ひとつ馴染めず、異国で不安を感じていることがそれとなく描かれている。この“なんとなく分かる気がする”シチュエーションに、具体的な切っ掛けがないことで、“ありうる恐怖”としての性格を維持したのだろう。

アンディは外国人観光客を専門に狙う変態らしく、英語教師でちゃんと話せるはずの英語を“わざと少しだけ下手に話す”ことで会話の糸口を掴むのが、彼のいつもの手口であったことが後から分かるようになっている。拘束時の描写についても、ベッドにビニールシートを広げた上での拘束が、クレアの失禁を想定したものであったことが強調せずとも分かるようになっている。強化ガラスによる二重窓や過去の女の存在は分かりやすい描写だが、アンディは実に“手慣れている”。このこともそれとなく描けていた。ただ、彼がクレアを斧で殺そうとしたように見えるシーンは、それとなさ過ぎてよく分からなかった。

Berlin Syndrome (English Edition)

Berlin Syndrome (English Edition)