オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ダーク・タイド』

Dark Tide, 113min

監督:ジョン・ストックウェル 出演:ハル・ベリーオリヴィエ・マルティネス

★★

概要

サメと一緒に泳ぐ話。

短評

サメが空を飛ばず、サメそっちのけで悪い企業が陰謀を巡らせることもなく、本物のサメが綺麗に撮れている。そして、主演はオスカー女優のハル・ベリー。シリアス寄りのサメ映画と見せかけて、……それらのバカ映画よりも登場人物がバカな一作である。とにかく盛り上がらない。盛り上げようとする人物の行動が支離滅裂な上にサメと関係ない。見所なきままにダラダラと続く110分。悪い意味でサメ映画扱いしづらい一作だった。

あらすじ

サメのドキュメンタリー映画を撮影中に事故で仲間を失ってしまったケイト(ハル・ベリー)。事故から一年後、彼女はケープタウンで観光客相手に海洋生物を見せるボートツアーを営んでいたが、事故のトラウマから人気コンテンツ“シャーク・ケージ”に手を出さないため、経営状況は芳しくない。そんな彼女を元夫ジェフが訪れ、サメと一緒に泳ぎたいというイギリス人親子を紹介する。その報酬が、なんと10万ユーロ。断れないオファーである。

感想

冒頭の撮影シーンは美しい。「サメを知りたければ一緒に泳ぐこと」とケイトが泳ぎ、サメの腹や鼻にタッチする。獰猛なイメージが強いが実はそうでもないサメと触れ合う感動的な瞬間である。クルーのセンバが食べられるシーンもリアルに仕上がっているため、その後の展開にも期待が持てる。そこに金持ち親子が現れて……となれば、確実に彼らが無茶をやってサメに襲われるパニック展開に違いないと思うわけだが、なんと無茶をやるのはケイトである。

渋々ながら(非現実的な額の)報酬に惹かれてオファーを受けるケイト。「私が船長よ。指示に従うこと」と警戒心を示し、トラウマの影響でアシカにもビビっていたが、いざサメと触れ合うと調子に乗り出す。挙げ句は、親子の要求は分かっていたはずなのに「一緒に泳ぐなんて無理よ!」と怒り出して、それでも報酬ほしさに「じゃあ巨大サメと泳がせてあげるわよ!」と謎の逆ギレを見せる。イギリス親父を「ビビってんの?」と煽る始末である。巨大サメを見つけて錨を下ろしたところで嵐に遭遇し、サメと嵐の両方に襲われることとなる。なんて酷い船長だ……。彼女のツアー会社は潰れた方が世のためになる。

アワビの密猟者が現れて陰謀チックになると思ったら彼らがサメに食われるだけだったり(暗くて何も見えない)、サメをおびき寄せる囮の回収シーンは海中からアングルでサメの登場を煽ったと思ったら何も起きず、ケージから勝手に出たバカ親父もサメに襲われない(自由に出られるケージなんて危険すぎる)。これらのグダグダにひたすら耐えた先に待っているのが暗い嵐の中のシーンで、船の転覆とサメに襲われるのとで二重のパニックになっているのだが、肝心のサメが暗くてよく見えない。それまでは優雅に泳ぐホオジロザメドキュメンタリー映画並によく見せてくれていたのに、いざサメ映画的展開になると、ほとんど何も見えない。一体何がしたかったのか。

イギリスクソ親父がサメに食われる大団円を迎え、ケイトはサメのトラウマから回復する。前回は仲間が自分を救う形で死んでしまい、今回は自分の判断ミスにより客を死なせる。責任の重さは後者に分があるのではないかと思うが、ケイトにとってそんなことは重要ではないらしい。彼女は元夫ジェフとサメをオーストラリアまで追いかけるドキュメンタリー映画を完成させ、まるで今回の事故がトラウマを克服するための良い話だったかのように締めくくられる。遺族は絶対に納得できないだろうに。

“エア・ジョーズ”と呼ばれるサメのジャンプが見られる(空飛ぶサメ映画のタイトルではない)。本作最大の見所である。そういった本物のサメの描写は非常に美しかったが、いかんせん物語が最低レベルの一作である。サメは綺麗だし、ハル・ベリーも40代とは思えないスタイル。CGも違和感なく使えているが、それと引き換えに絶望的に盛り上がらない。これなら大人しくドキュメンタリー番組を見た方がよい。

ジェフのカメラのバッテリーが撮影開始時から常に半分以下になっているのが気になった。プロなら万全の体制で挑めよ。

ダーク・タイド

ダーク・タイド

  • メディア: Prime Video