オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

Tales from the Loop

監督:マーク・ロマネク他 出演:レベッカ・ホールジョナサン・プライス

概要

不思議な現象を研究する施設の周囲で不思議な現象が起こる話。

短評

それぞれが独立した話のオムニバス形式だが、世界観と登場人物は共通している全八話のドラマシリーズ。タイトルから連想するような“ループもの”ではない。SF的な“現象”を扱った話と“アイテム”を扱ったエピソードが凡そ半々となっているが、いずれの話も静かな展開の中に少しほろ苦い余韻を残すものとなっている。SF要素は“素材”というよりも“調理方法”であり、現実世界における人間の感情を浮き彫りにする道具として使用されている。

あらすじ

1『ループ(Loop)』:消えた母を探す少女ロレッタ(アビー・ライダー・フォートソン)が、とある女と出会う。その女の名もまたロレッタ(レベッカ・ホール)であった。

2『入れ替わり(Transpose)』:バンド仲間のジェイコブとダニー。森で見つけたポッドの中に入ってみると、二人が入れ替わってしまう。

3『静止(Stasis)』:「どうして最初のときめきが続かないのか」と悩む少女メイ(ニコール・ロー)。彼女が湖で見つけた装置を修理して起動すると、自分以外の世界が静止する。

4『エコースフィア(Echo Sphere)』:研究施設“ループ”の創設者ラス(ジョナサン・プライス)には死期が迫っていたが、孫のコールはどうしても受け入れられない。

5『コントロール(Control)』:何も盗まない泥棒の話を耳にして以来、妻と娘ベス(アレッサンドラ・デ・サ・ペレイラ)の安全が心配で仕方のない修理工のエド。彼は給料を前借りし、ロボットを買って夜間警備を始める。

6『異次元世界(Parallel)』:ループの守衛ギャディスがトラクターを起動すると、パラレルワールドへと移動してしまい、そこにはもう一人の自分がいた。

7『怪物(Enemies)』怪物が住むという島に置き去りにされた少年。怪物の正体は?そして、少年の正体は?

8『ホーム(Home)』兄ジェイコブがダニーと入れ替わったことを知らされたコール。兄の意識が乗り移っているロボットを探し、ループに連れて行こうとするが……。

感想

ループというのは不思議な現象を研究している地下施設であり、その周囲の街で不思議な現象が起こる。ループ内部の様子も映るものの、何をしているのかは分からず、物語にもそれ程関わらない。「研究所の陰謀」みたいな話ではない。SFによく見られる現象が、そのまま現象として存在している。

過去と未来の自分が遭遇し、他人と中身が入れ替わり、時が止まり、異次元へと転移し、浦島太郎になる──というそれぞれが大事件なのだが、本作ではそれらが(理由は分からないが)“起こりうるもの”として扱われており、皆騒ぎ立てたりはしない。街を巻き込んだ一大事になることもなく、あくまで本人とその周囲にだけしか関係ないような出来事として消化されていく。現象の内容に対して非常に静謐な物語となっているのだが、“SF”という容れ物を使った“ドラマ”としては際立った作品となっていた。

とは言え、第5話のようにSF的とまでは言えないようなエピソードも存在する。ロボットが登場し、泥棒の正体が……というのはSF的なのだが、息子の意識混濁を切っ掛けに家族の安全を過剰に不安がるようになったおっさんが空回りするだけの話である。しかし、空回りしたおっさんが改心するような結末となっているため、余韻の部分が「えっ……これどうすんの……」的な放り投げ感のあるエピソードと比べれば後味が良い。また、第4話もSF感は薄いが、“不可能を可能にする”ループにとっての“不可能”なことを示すという興味深いエピソードになっている。

それぞれのエピソードは独立しているものの、それまでに脇役として登場した人物が主役となるため、「あの人だ」と分かる入り込みやすさがある。直接の繋がりがあると言えるのは第2話と第8話くらいのものだが、たとえば第3話の主人公メイには第2話でジェイコブ(=ダニー)と付き合う描写があったりして、世界観の一貫性や保たれ、同時に伏線ともなっていた。第7話だけは「こいつ誰?」となるが、話が進むにつれて「この人か」と分かるような構成になっている。直接の繋がりはなくとも、他のエピソードで“ちょっと引っ掛かっていた”部分がテーマになったりするのも面白い。

最も好きだったのは、第3話の『静止』。「時が止まる」。なんて素敵な響きなのだろうか。時間停止桃色映像は九割がヤラセとのことだが、一度は夢に見るシチュエーションである。メイは浮気相手との二人だけの世界を謳歌し、路上で交わる。「ここを通る度に今したことを思い出すわよ」というのは素敵な台詞だが、これは思い出すと恥ずかしくなりそう(それともムラムラするか)。出会った時のときめきを保存するために時を止めるメイだったが、時間は止まっても本人がとまらないので、やがてときめきはあせていく。分かりきった話ではあるものの、それをより明確化するのにSF設定が役立っていたと思う。探検中に情事中のカップルを見つけたら、メイの母と間男だったという展開が笑えた。交わっている最中に静止すると非常に間抜けに見える。

ザ・ループ TALES FROM THE LOOP

ザ・ループ TALES FROM THE LOOP