オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』

Dracula 3D(Dario Argento's Dracula), 109min

監督:ダリオ・アルジェント 出演:トーマス・クレッチマン、マルタ・ガスティー

★★

概要

ドラキュラ伯爵が死んだ妻に似ている人妻を寝取ろうとする話。

短評

内容的には純然たるゴシックホラーのはずが、奇妙なまでにチープな演出と映像のせいで全てがギャグと化してしまっている一作。重厚感皆無である。美女とおっぱいの魅力だけでもっているような映画だった。笑えるシーンもかなりあるのだが、これは“酷すぎて笑える”というタイプのため、狙ったわけではないと思う。

あらすじ

ワルプルギスの夜に恋人との逢瀬を楽しんだタニア(ミリアム・ジョヴァネッリ)。一人で家へと戻る道中で吸血鬼に襲われてしまう。彼女の住む町パスブルクにやって来たジョナサンは、町長の娘ルーシー(アーシア・アルジェント)の伝手でドラキュラ伯爵(トーマス・クレッチマン)の蔵書の目録作成の仕事を得る。しかし、ジョナサンも吸血鬼の魔の手に落ち、遅れて町へとやって来た彼の妻ミナ(マルタ・ガスティーニ)も……。

感想

映画冒頭で恋人ミロシュと納屋で交わるタニア(行為後、「家に送って」と頼むタニアに対し、賢者タイムのミロシュが「浮気がバレるだろ」と突き放したせいで彼女はドラキュラに襲われる。酷い)。彼女の豊満な肉体があまりにも魅力的なので、それだけでも鑑賞時間分の元は取ったと言ってもよい。吸血鬼化した彼女が夜間にジョナサンを訪ね、服を脱いで誘惑する。ジョナサンの妻ミナは大変に美しく可愛らしい顔立ちをしているのだが、タニアの魅惑のボディを前にしてジョニーに抗うのは不可能である。あっさりと陥落したジョナサンの首にタニアが噛みつこうかというその瞬間、伯爵が「彼は俺の獲物だ!」と突如現れ、タニアを吹き飛ばす。この時のエフェクトの安っぽさが酷い。“2010年代に有名監督が撮った映画”のクオリティだとはとても信じられない。

豊満美女の肉体の魅力に屈したジョナサンの妻ミナもまた夫以外の男の魅力に屈する。“寝取られ&寝取られ”である。伯爵の「今日は妻の命日なのです」という必殺口説き文句にコロッと落ち、伯爵が夫と親友を殺した事実を知ってショックを受けるも、伯爵の魅力に抗うこと叶わず、退治にやって来たヴァン・ヘルシングルトガー・ハウアー)を「殺して」と命令。しかし、銀の弾を込めた銃を間抜けにも伯爵のリーチ圏内で呑気に取り出したヘルシングは投げ飛ばされ(すり潰したニンニクも準備)、銃はミナの足元へ。彼女は銃を拾い上げ、伯爵を撃つ。一体何がしたいのか。忙しい人である。ヘルシングが「それがドラキュラの力」と言って締めくくられていたが、三十郎氏にはハーカー夫妻が二人共浮気性だっただけのように思われる。親友ルーシーが(既に吸血鬼化しているので実質的に死んでいるとは言えど)目の前で燃えているのに、呆然とするでもなく呑気に眺めているだけの姿にもミナの人格的問題が感じられた。彼女も脱げばよかったのに。

「ドラキュラ伯爵=ヴァンパイア」の図式が完璧に根付いてしまっているため、ドラキュラという名の男が普通に伯爵として扱われている描写自体が少し面白い。ドラキュラは変身が可能であるらしく、ある時はフクロウに、またある時はオオカミに……というくらいまでは受け入れられるが、ハエの大群が集結して伯爵になったり、巨大カマキリが出てくるシーンで笑いを堪えるのは不可能である(このCGがまたショボい)。なお、このハエは低クオリティのCGで描かれているため、『フェノミナ』のような不快感は一切ない。スパイダーマンみたいに壁をよじ登るシーンも爆笑である。「グァアアア」と怪獣的に叫ぶだけのヴァンパイア演技に至っては、Z級映画に見られるそれである。

ルーシーを演じているアーシア・アルジェントは、ダリオ・アルジェントの娘である。彼女は本作で二度に渡って脱いでいる。一度目は伯爵との交合。二度目は入浴。交合時には、わざわざ髪をかき分けておっぱいを見せる高度なテクニックを披露している。70才を超えた父が、40才手前の娘の裸を見るというのは、どのような気分なのだろうか。本作でも(かなりパワーダウンは感じたが)“人を刺す”という行為への変態的執着が感じられたアルジェントだったが、こちらも状況的にはかなり変態的だと思う。

全体的に映像の質感がのっぺりチープで、画面が過剰に明るかった。これは、元が3D映画として制作されたことの影響だろうか。前者の事情はよく分からないが、後者については3Dメガネを掛けて見え方が暗くなることを考慮でもしたのだろうか。とは言え、日中のシーンなんかは明るすぎて、ゾランのつるぴかハゲ頭が白飛びしていた。TVドラマなんかは明るいリビングでの視聴を前提に全体を明るく設定することもあるのだろうが、映画は少し暗めでないと安っぽくなりやすい気がする。

ドラキュラ

ドラキュラ