オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バーニー・トムソンの殺人日記』

The Legend of Barney Thomson, 96min

監督:ロバート・カーライル 出演:ロバート・カーライルエマ・トンプソン

★★★

概要

理髪師がはずみで人を殺してしまう話。

短評

ロバート・カーライルが監督と主演を兼任したシリアス風コメディ。殺人犯の主人公は(ベグビー・フランコのイメージが強烈な)ロバート・カーライルらしからぬ小心者で、彼があたふたしている内に周囲が自滅していく不毛さが愉快な一作だった。登場人物が皆素敵に阿呆である。主人公の殺人と同時進行している事件はかなり猟奇的なのだが、阿呆なコメディの範疇に見事に収まっている。爆笑するような映画ではないが、小さく笑えるネタが多い。

あらすじ

静けさを愛し、「退屈な人生も構わない」と口にする理髪師のバーニー・トムソン(ロバート・カーライル)。しかし、雑談嫌いの彼は客に敬遠され、遂に店主ウィリーから解雇を告げられてしまう。50才で汚い部屋に住み、恋人もおらず、ギャンブル中毒の母セモリナ(エマ・トンプソン)を持つバーニーは「自分には仕事しかない」と追いすがるが、ウィリーともつれたはずみでハサミが刺さって死なせてしまう。時を同じくして、彼の住むグラスゴーでは遺体の一部が遺族に郵送されるという殺人事件が続発しており……。

感想

冴えない理髪師のバーニーだが、果たして彼は運が良いのか悪いのか。事件の発生から明かされる生い立ちに至るまでは「悪い」としか言い様のない不憫なものだが、最後は運が彼に味方してくれる。はずみで店主を殺してしまい、母が上手く処理してくれるも、警察に他の連続殺人事件と併せて疑われ、しかしそれでも……という数奇な運命。最後は少々強引だが、この不毛な物語の締めくくりに相応しい不毛な展開だった。「お前ら全員何やってんだ……」と呆れること間違いなしである。

トランクに積んだウィリーの死体を母セモリナ(パスタの原料みたいな名前)に発見され、とりあえず彼女の家に運ぶ。バーニーが「死体をどうしたのか」とやきもきしていると、なんと部位別に切断され、ラベリングされた状態の“肉”を冷凍庫の中に発見。この時点で第一のオチは予想がつくようになっているが、同じくこの時点で“まさか”の展開であるため、笑いを堪えきれない。母ちゃん、あんた何者なんだよ!?母がバーニーに告白するシーンでは「一度やったらクセになった」と雑に説明されており、その投げやり感が一層笑えるのである。多くの人が死んでいる物語だが、犯行の経緯も動機も下らないことこの上なく、いい感じにブラックだった(ブラック・ユーモア言葉狩りされるかも)。

ポルノ業界に「MILF」というジャンルが存在するのは知っていたが、その一つ上に「GILF」というジャンルも存在するようである(知りたくなかった)。この話が出てきただけでも「マジか!?」と笑えたのだが、それがバッチリ伏線になっていてもう一度笑えた。「GILF」として新聞広告を載せているのはバーニーの母で、なんと彼女は元娼婦。バーニーの父親も誰なのか分からない。不憫な男である。

冷凍庫のバラバラ遺体を発見したバーニーが、同じくはずみで殺してしまった同僚クリスを、母の家で解体しようとするシーン(この時点では母が連続殺人犯だと知らない)。結局できないのだが、彼はリビングのカーペットの上で作業しようとする。流れる血のことは考慮しないのか。とんだ阿呆である。母は捜査の網を掻い潜る有能殺人者なのに(警察が無能なのもあるが)。クリス殺害の切っ掛けも、ウィリー殺害を疑われたバーニーがあっさりと自白するというものであり、小心と無能が尋常ではない。

ウィリー搬出現場を目撃し、バーニーに無料カットを要求するチャーリー。しかし、かれのスチールウールの如くチリチリの髪は、“カット”せずとも手で引きちぎれるのであった。