オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『おとなの恋は、まわり道』

Destination Wedding, 86min

監督:ヴィクター・レヴィン 出演:キアヌ・リーブスウィノナ・ライダー

★★★

概要

リゾート婚で中年男女が出会う話。

短評

キアヌ・リーブスウィノナ・ライダーの会話劇だけでほぼ全編が構成されているラブコメ映画。プロットは全くと言ってよい程に面白くないのだが、セックスの最中まで延々と続く二人のシニカルな会話は笑える。また、ラブコメの「ラブ」の要素が極端に弱く、それも恋愛映画が苦手な三十郎氏にはちょうどよかった。キアヌが演じるフランクのキャラクターは、(男前であることを除けば)共感できる部分が多く、柄にもなく「あー分かる分かる」なんて思ってしまった。

あらすじ

この世界で最も傲慢でナルシスティックなイベント──リゾート婚に不幸にも招待されてしまった男女二人。男の名はフランク(キアヌ・リーブス)。新郎の異父兄弟であり、ホテルの備品を持ち帰るグレーゾーン行為を繰り返すケチ男である。女の名はリンジーウィノナ・ライダー)。新郎の元婚約者であり、しかめっ面で口うるさい未練タラタラ女である。飛行機の搭乗ゲートでの出会いから反りの合わない二人だったが、式には他に話す相手もおらず、なんだかんで接近していくのであった。

感想

ウィノナ・ライダーは美人である。『ナイト・オン・ザ・プラネット』の時の彼女なんて、当時世界で最も可愛かったのではないかとすら思う。しかし、時の流れは残酷であり、本作では完全に面倒くさい中年女性と化している。フランクが“黄金比”と称賛する顔の造形は現在も美しく、ボディラインもそこまで崩れてはいないが、彼女の演じるリンジーは常にしかめっ面で憎まれ口を叩き続けているため、いかんせんシワが強調される。「あの頃の眩いばかりの魅力は何処へ……」と少し悲しくなったが、考えてみれば、自らの美の衰えをあえて強調できるような演技は、素が美しいからこその余裕なのか。それが分かってきたからなのか、最終的には魅力的に感じられたのも事実である。

一方のキアヌ・リーブス。すっかり髭面が板についている。彼が綺麗に髭を剃った顔を見たのはどの作品が最後になるだろうか。企業の不適切発言を訴えるリンジーの仕事を「差別撤廃ポリスのファシスト。人々の言動を分析して金のために騒ぎ立てる」と揶揄する彼のセンスが愉快だった。「僕は既に生まれている。生まれていない子は生まれることから守られるべき」という反出生主義から「スクリューキャップのワインは安っぽい」という微妙にケチくさい感覚(三十郎氏はペットボトルのワインも買う気にならない)、「いい人生を目指すとプレッシャーが大きすぎる」という一種の諦めに至るまで、考え方についても共感する点が多かった。行為の際の「こういう前向きな行為に身を任せられない」の台詞も良い。

そんな彼が「僕は恋愛から手を引いたから批評できる」と発言する。三十郎氏の場合は恋愛の方から手を引かれた感があるが、恋愛から一歩引き下がった生き方自体は同じということにしておこう。フランクとリンジーは式を抜け出して屋外で交わり(フランクは吐きそうな顔をしながら腰を振り、リンジーは自分がイッた直後に「早くイッて」と言い放つ)、なんだかんで仲を深める。翌日、互いに納得の上で友人として別れようということになるものの、未練タラタラのリンジーが帰りの機内でフランクに問う。「心の奥底で密かに愛に期待してない?」と。その場の答えは「ノー」だったが、帰宅したフランクは一人悶々とし、結局リンジーの家を訪ねる。これである。三十郎氏も“酸っぱい葡萄”的に「一人で結構」と強がっているが、万が一魅力的な女性と懇ろになれば、あっさりと自説を撤回してしまうのだろう。ジョニーの奴隷たる男の無様な強がりが上手く表現されていた。(きっと来ない)その日が来るまでは、強がりの鎧で自分を守ろうと思う。

愛人についてのリンジーの考察。男が若い女に走るのは残酷だが、女は若い女をチヤホヤする不公平な社会を非難できる。一理ある。三十郎氏にとっては醜男が美女と連れ立って歩くのを目撃した時の感覚が近いだろうか(その時は男が金持ちに違いないと思い込むことで自己防衛する)。

フランクのペニスについてのリンジーの論評。今どき珍しくまっすぐで、バレエチックな形をしており、悩みの種になるほど大きいわけでもなければバカにされるほど小さくもない、素晴らしいペニス。バレエチックな形って何だ!?しなやかな曲線美か?つまり左右には曲がっていないが反り返りが……。

おとなの恋は、まわり道(字幕版)

おとなの恋は、まわり道(字幕版)

  • 発売日: 2019/05/10
  • メディア: Prime Video