オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『数に溺れて』

Drowning by Numbers, 118min

監督:ピーター・グリーナウェイ 出演:ジョーン・プロウライト、ジュリエット・スティーヴンソン

★★★

概要

三人のシシー・コルピッツが夫を溺死させる話。

短評

エログロと謎コミカルの不思議な魅力はあるものの、さっぱり意味不明で、単純に「面白かった」とは言えない一作。いや……本当に……何だったのか……。人の死を軽々しく扱う描き方がどことなくコミカルなのに加えて、IMDbが「comedy」だと言っているので「コメディ」にカテゴライズしてみたが、いわゆる前衛芸術ノリとも異なるシュールな映画である。何を描いているのかも分からなければ、正直どこで笑うべきなのかも分からない。しかし、動物、虫、食べ物、死体等で構成された画面の猥雑さには強く惹かれるものがあった。

あらすじ

アムステルダム通りの自宅前で縄跳びをしながら100まで星を数える少女エルシー(ナタリー・モース)。その前を通り過ぎる酔っ払いの男女。二人がリンゴ風呂でよろしくやっていると、男の妻シシー(ジョーン・プロウライト)が帰宅し、男を溺死させる。シシーは検視官マジェットに助けを求め、“飲み過ぎによる心臓発作後の溺死”ということにしてもらう。

感想

本作には三人のシシー・コルピッツが登場する。上述の老シシーはシシー1。彼女の娘がシシー2(ジュリエット・スティーヴンソン)。そして、関係がよく分からないシシー3(ジョエリー・リチャードソン)は、シシー2の姪であるらしい(ということはシシー1の孫なのか?)。最初は誰がシシーなのか、三十郎氏に聞き間違いがあったのかと戸惑ったが、三人全員がシシーである。これだけでも非常に混乱した。この三人がそれぞれ夫を溺死させ、その度にマジェットが偽の検死結果を出す。それが本作の大筋である。もちろん意味は分からない。少なくとも夫殺しのサスペンスでは全くなかった。

シシー1の夫ジェイクがナンシーなのかネリーなのかよく分からない女(ジェーン・ガーネット)を連れ込んでいるシーンで、彼女の陰毛に珍しくボカシがかかっていないで驚いたら、ジェイクの陰茎にもボカシがなくて更に驚いた(シシー2の夫ハーディの小さい陰茎も。シシー1曰く「デブのナニは小さいの?」)。後者は全く嬉しくないのだが、「芸術だからOK」という判断なのだろうか。皮を剥いだ動物の死体や臓物が引き出された牛の死体が道路に転がっていたりするグロテスクな描写も多く、とりあえずエログロである。このエログロが芸術的に何を意味しているのかはもちろん分からない。

話もアイテムも何を表現しようとしているのかは「意味不明」の一言なのだが、とにかく画面内の情報量が(無駄に)多くて、それを眺めているだけでもそれなりに楽しめる一作ではある。しかし、その意味不明さがノイズとなっている部分もあり、「楽しい」よりも「分からん」が感情的に先行した。幾度となく登場する謎ゲームの謎ルールも、「これは何かのメタファーなのか……」と考えるだけ無駄な意味不明さであり、やはり同種のノイズに感じられた。

ストーリーとその理解が全くダメであってもそれなりに楽しかったのは、画面内の情報量の多さとシュールさが、ウェス・アンダーソン作品っぽさを感じさせるからなのかもしれない。しかし、メインプロットと意味不明のバランスが後者に極端に偏っているので素直に楽しめず、画面を構成するアイテムのエログロ比率の高さ故にアンダーソン的なオシャレ感もないのだと思う。

ジェイク殺しの理由を問われたシシー1。浮気は以前からであり、「何故今さら?」との問いに対して「足を洗わない」「鼻が赤い」「背中が毛深い」と答える。妻に溺死させられたくない男性諸氏は、足を洗い、鼻をこすらず、背中の毛を……剃るのは難しいな。

シシー3はスタイル抜群で、彼女は顔とおっぱいだけでなく、回転しながら(死んだ夫の浮かぶ)プールに入水する動きも美しかった。

数に溺れて (字幕版)

数に溺れて (字幕版)

  • 発売日: 2017/04/10
  • メディア: Prime Video