オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『マダムのおかしな晩餐会』

Madame, 91min

監督:アマンダ・ステール 出演:トニ・コレットハーヴェイ・カイテル

★★★

概要

メイドがゲストに扮して晩餐会に参加する話。

短評

トニ・コレットのあまり有り難くないおっぱいが見られる一作。上流階級と彼らに仕える者たちの階級格差が、階級を超えた恋とそれに対する反対者の姿から浮かび上がってくる。コミカルかつシニカルである。序盤から中盤にかけては面白かったが、終盤はかなり失速した印象である。

あらすじ

ニューヨークからパリに越してきたボブ(ハーヴェイ・カイテル)とアン(トニ・コレット)の夫婦。知人を招いて晩餐会を開くも、ボブの連れ子スティーヴンが突然やって来たことでゲストの数が“13”となる。これを「縁起が悪い」と嫌ったアンが、スペイン人メイドのマリア(ロッシ・デ・パルマ)を“謎のゲスト”として加えることにする。無理やり参加させられたマリアだったが、イギリス人の美術コンサルタント、デビッドに気に入られてしまう。貴族なのだと勘違いされたまま……。

感想

アンがマリアに告げる晩餐会のルールは、「話しすぎない。食べすぎない。笑いすぎない」の三つ。スティーヴンが加えた「飲みすぎない」は彼女に届かなかったらしく、美味しいワインに酔ったマリアが上流階級に似つかわしくないジョークを飛ばす。「オッパイには三種類ある。20代はメロン、30代から40代は洋梨、50代は玉ネギ。見ると涙が出てくる」「ペニスにも三種類ある。20代は樫の木、30代から40代は樺の木、50代はクリスマスツリー。タマが飾り」。アンは「“笑わせる”と“笑われる”は違う」と非難したが、三十郎氏は笑わせてもらった。トニ・コレットは40代なのだが、夫とのセックスレスに悩む女性らしく玉ネギ化が進行していた。

パリはロマンティックな街である。至る所に恋の花が咲く。マリアはデビッドと恋に落ち、アンはアントワーヌと不倫し、ボブはファニー先生(ジョセフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム)に夢中である。アントワーヌ曰く「フランス人は結婚を維持するために不倫する」であり、マリア以外は大事になることもなく流されているのが上流階級らしかった(アンも捨てられる)。ロマンスに対して希望を抱くのは下層だけなのである。非常にシニカルな見方だが、映画の冒頭、パリの街を自転車で駆け抜けるロマンティックな(はずの)シーン。「雨が振りそう」と心配するボブに対して、アンが「この悲観論者め」と言い、ボブは「現実主義者なんだ」と返す。結局雨が降り、ロマンスを突き放すような見方が現実だということが示唆されていたことになる。

もっともアンもロマンスを信じていた人である。彼女は金持ち夫をつかまえただけの平民出身(ボブのゴルフ教師)なのである。マリアの恋が実り、階級の壁が簡単に越えられてしまうと、それは自分の立場が脅かされることと同義であるが故に過剰反応したのではないだろうか。彼女は決して特別な存在ではないのだと。それだけにファニー先生の存在はとても皮肉である。平民は遊ばれているだけなのだ。

実質ニートの作家スティーヴン。彼はマリアをモデルとした小説『メイド』を執筆し、まだ決まっていない結末についてデビッドからこうアドバイスを受ける「かつて愛した女性に教わった。人はハッピーエンドが好きなんだ」。これを教えたのはマリアであり、その後のハッピーエンドを予感させる言葉ではあるが、気になるのは「かつて」である。正確には聞き取れなかったが、少なくとも過去形だった気がする。どちらかと言わずともアンの差別意識を浮き彫りにする物語なのだが、結局のところ、階級の壁は越えられないということなのだろうか。それでもマリアが晴れやかに邸宅を去るのは、そんな下らない差別意識ともオサラバするのが、映画の中にしか存在しないそれとは異なる真の“ハッピーエンド”だからなのか。

アンは「私はこんなに努力しているのに、どうしてメイドなんかに男は虜になるの!」と嫉妬し、セラピストに相談した結果、露出度高めのメイド衣装でボブを誘惑する。ボブは渋々応じようとするも邪魔が入って目的は果たされなかったのだが、三十郎氏に言わせれば、彼女はメイド服の魅力を理解していない。露出度高めのメイド服なんて何の意味もない。隠されているからこそ中身を妄想し、暴く喜びがあるのだし、そもそも彼女のような強気の女がメイドという“従順さ”の象徴に扮するのは無理である。彼女にとってメイドとは、メイド服を着て自分のために働く奴隷でしかなため、それが男を魅了する理由を理解できないのだろう。

晩餐会の出席者たちの身元が分かりづらく、少々混乱した。本編は晩餐会の後なので重要ではないのだろうが、席につく前に挨拶をするシーンを入れて整理していおいてもよかったと思う。名前が分からないままの人もいるので、全員紹介するか、その後の展開に関わらない人は紹介しないかで統一すべきだった。

デビッド曰く、「イギリス人は皆同じに見える。顔つきも、青い目も、歯並びの悪さも」。イギリス人俳優はアメリカ人俳優に比べて歯並びが整っていないイメージがあるが、本国でも自虐される要素なのだろうか。アメリカ人だけが完璧な歯並びにこだわっているような気もするが。

マダムのおかしな晩餐会(字幕版)

マダムのおかしな晩餐会(字幕版)

  • 発売日: 2019/05/22
  • メディア: Prime Video