オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ルートヴィヒ[復元完全版]』

Lidwig, 238min

監督:ルキノ・ヴィスコンティ 出演:ヘルムート・バーガーロミー・シュナイダー

★★

概要

ルートヴィヒ2世の即位から死までの話。

短評

4時間弱の超長尺である。これには流石に尻込みするが、シネフィルWOWOWプラスの無料期間がそろそろ終わるため、“シネフィルっぽい”映画の集大成として挑戦してみた。長かった。疲れた。その割に観終わった時の達成感はそれ程でもなかった──というのが率直な感想である。そもそもルートヴィヒ2世に興味を持っていなかった上に、集中力が続かなかったのも原因だろう。王に向いていなかったのに王になってしまったルートヴィヒには「大変だったな」と言いたいが、観ているこちらも大変だった。

あらすじ

1864年。18才でバイエルン王に即位したルートヴィヒ2世ヘルムート・バーガー)。恋い慕った従姉エリーザベト(ロミー・シュナイダー)からは彼女の妹ゾフィー(ソーニャ・ペドローヴァ)との婚約を押し付けられ、敬愛する金食い虫のワーグナーを追放する憂き目にあい、開戦を望まなかった普墺戦争には敗北する。やがて彼は国務に興味を示さなくなり、精神の異常を理由に廃位を迫られる。

感想

ルートヴィヒは、夢見がちで芸術を愛する、(ほぼゲイの)バイセクシュアルである。そもそも戴冠式で手が震えるほど緊張している時点で“王様向き”の性格ではなかったのだろう。「ワーグナーを支援することで世界に貢献するのだ!」と意気込めば財政を圧迫して逆に批判殺到。王としての務め(=世継ぎをもうける)を果たそうにも男色趣味。戦争だってしたくない。言ってみれば、血筋で王に“されてしまった”気の毒な男である。そんな人が王位に就くと本人も周囲も大変という話であった。つまるところ、「血統主義はクソ」である。

もっとも彼が王にならなければ幸せだったのかと言うと、どうもそういうわけでもなさそう。敗戦後に“真実”と“自由”についての会話があるのだが、ルートヴィヒの求めていた自由には、「王としての責任からの逃避」的な側面があったことが見え隠れしている。国務への興味を失い、愛する美男子と芸術を自分の周囲に集めるようになってからも全く幸せそうには見えない。王になろうがならまいが、自己との対峙こそが問題なのである。

即位後最初の躓きとなっているのはエリーザベトにフラれたことなのだが、仮に彼女と添い遂げられたら別の展開がありえたのだろうか。本作では従僕フォルクが夜間に水浴びする姿を目撃して“ときめいちゃった”みたいな目覚めが描かれるものの(直後に「主よ救いたまえ」)、エリーザベトに「女を知らないの?」と問われれば「カトリックです」と返し、ゾフィーとの婚約前には大臣が「未経験でおられる陛下にお膳立てする任務を仰せつかった」と言っていることからも、エリーザベトに対しても性愛は感じていなかったのではないかと思う。フォルクの後任のイケメン従僕にドキドキし、俳優カイルツを招聘するなどハーレム生活を送るルートヴィヒだったが、同性愛描写は控えめだった。

豪華絢爛なセットが大きな見どころではあるのだが、装飾は素晴らしいものの、室内での動きがない場面が多く、エリーザベトが歩く長い廊下を除けば(セグウェイが欲しくなる)、スケール感の点で今ひとつだったように思う。かの有名なノイシュヴァンシュタイン城も全貌が掴めず、細かな豪華さの割に“圧巻”と言えるような印象は受けなかった(ワーグナーによる『トリスタンとイゾルデ』の上演も台詞だけ)。意外と物足りなさが残るのである(階下に沈み込むテーブルの仕掛けは面白かった)。この辺りがアカデミー賞美術賞のノミネートすら逃した理由なのだろうか。それともセットを作ったわけではなく城や館を借りて利用したのだろうか。衣装デザイン賞にはノミネートされたが、美術賞と共に『スティング』が受賞している。