オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ハリケーンアワー』

Hours, 96min

監督:エリック・ハイセラー 出演:ポール・ウォーカージェネシス・ロドリゲス

★★★

概要

ハリケーンに見舞われた病院に父親と新生児が取り残される話。

短評

一風変わった静かなディザスター映画である。ハリケーンを題材としていながらパニック映画にカテゴライズできないのは非常に珍しい気がする。病院の一室からほとんど出られない話でありながらハラハラさせられる仕掛けがあったり、大げさな演出だと思ったことがハリケーンカトリーナ”襲撃時に起きたと分かって驚かされたりと、地味な一作ながらそこそこ見応えがあった。主演のポール・ウォーカーが亡くなったのは、本作の本国公開直前だそうである(遺作ではない)。

あらすじ

2005年8月、巨大ハリケーンカトリーナ”の迫るニューオーリンズ。ノーラン(ポール・ウォーカー)の妻アビゲイルジェネシス・ロドリゲス)は、予定日よりも五週間も早く産気づき、出産と引き換えに命を落とす。妻を失った悲しみに打ちひしがれるノーランだったが、間もなく病院からの避難がはじまる。しかし、未熟児で人工呼吸の必要な娘を保育器から動かすことが出来ず、彼は娘と二人で救助を待つこととなる。

感想

ノーランが娘に妻と思い出話を聞かせながら助けを待つだけでは映画にならない。ハリケーンの影響で一階が浸水し電源が落ちるのだが、病院には全体と各危機の予備バッテリーがある。ところが、保育器の予備バッテリーが老朽化していて最大でも三分しかもたないというポンコツなのである。三分経つ度に手回し発電機を回さなくてはいけない。この仕掛けだけで面白さを保っているようなところがあった。

ノーランは交換用の点滴を探しに行ったり、ヘリコプターの音が聞こえて救助を求めようとするのだが、目的を達する前にアラームが鳴って病室に戻らざるを得ない。なんとかしようとして、何かができそうなのに、結局何もできない。これは大変にもどかしい。しかし、戻る以外に選択肢がない。おまけに休むことすらできない。この「ああ、ちくしょう!」の過剰なまでの体験にリアリティを感じた。

一方で、劇中の描写としてはこの時間制限が破綻している箇所が多々見られ、同じ行動をしているのに経過時間が大きく違っていたり、明らかに制限時間をオーバーしているシーンもあった。

ノーランの眼の前を飛ぶヘリコプターを自分たちの方に来させるために、隣の建物にいる人がヘリを撃つシーンがある。「この演出はやり過ぎ」と笑ったのだが、その直後に似たような出来事のニュース映像が流れて驚愕した。薬品の豊富な病院に略奪者がやって来るのはいかにもありそうな出来事で(略奪者は薬に詳しい。彼らはヒドロコドンを狙い打ちで回収していたが、三十郎氏だとどれを持ち去るべきか分からない)、劇中でも緊張感ある見せ場となっているのだが、そのせいでパッケージ写真がアクション映画詐欺みたいになっている。

アビゲイルを演じるジェネシス・ロドリゲスが大変に美人だった。ノーランは彼女を失った悲しみを消化しきれないまま事態に臨むことになる複雑なキャラクターなのだが、娘に一方的に語り掛けることで親としての自覚を獲得していく以外には、心情の変化を上手く表現するような演出・演技が見られなかったのは惜しかった。ここが良ければ、娘の命を守りながらの救助待ちの他に映画にもう一つ強みを加えられただろう。

ノーラン父娘以外に誰もいなくなるというのがあり得るのかは分からないが、堤防の決壊で医師が戻れなくなるという設定や、助けを呼びに行った看護師(ケリー・ケイヒル)がちゃんと戻ってくる(が強盗に殺される)という展開を挿入することで、病院側が悪役に感じられてしまうことを避けようとしていた。緊急時には様々な考えられないような事が起こりうるので、同じく被災者である人々を責めるのは慎むべきである。それでも最後に頼りになる人類最高の友は、やはり犬なのであった。

ハリケーン アワー(字幕版)

ハリケーン アワー(字幕版)

  • 発売日: 2014/09/04
  • メディア: Prime Video