オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『トリコロール/白の愛』

Trois Couleurs: Blanc(Three Colors: White), 92min

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 出演:ズビグニェフ・ザマホフスキ、ジュリー・デルピー

★★★

概要

性的不能を理由に捨てられた男が元妻に復習する話。

短評

トリコロール』三部作の二作目。「白」は「平等」を意味する色である。分かりづらさが退屈さと同義に感じられた『』とは異なり、コメディというカテゴリーに収まっていることから普通に楽しめた。やはりジャンルの力は偉大である。ジョニーにまつわる問題が物語の端緒というのが三十郎氏好みであれば、平等の解釈が非常にシニカルな点も面白かった。コメントを下さったenamelさん、ありがとうございました。ジュリー・デルピーも可愛かったです。

あらすじ

「性的な不満」を理由に妻ドミニク(ジュリー・デルピー)から離婚を突きつけられた美容師のカロル。無一文の放火容疑者として放り出され、大道芸で小銭を稼いでいたところ、同郷のポーランド人ミコワイと知り合う。彼の手引きによりトランクに隠れてポーランドへと戻り、不動産売買を皮切りに事業家として成功を収める。それでもドミニクのことを忘れられないカロルは、とある復讐を企てる。

感想

本作は離婚裁判のシーンからはじまる。前作に出てきたジュリー・デルピーっぽい女性はやはり彼女であり、間違えて法廷に入ってきたジュリエット・ビノシュも少し出てくる。妻が「性的な不満」を離婚事由として主張すると、裁判長は夫に問う。「奥さんの主張は本当ですか」と。ここで夫は「自らのモノが使い物にならない」証言するハメになるわけだが、どちらにとっても非常に深刻なはずが、やり取りが直截過ぎて笑えた。シモの問題というのは本人にとっては最上級の重要事項なわけだが、他人事だと真剣である程に滑稽に見える。

ともかく重要なのは「カロルの陰茎が硬くなる」という一点に尽きる。裁判後の翌朝に美容院で交わろうとしていたシーンからも、性生活さえ可能なら二人の関係が修復可能であることが示唆されている。また、ドミニクはカロルを追い出した直後に別の男を連れ込み、電話してきた彼に喘ぎ声を聞かせるているが、葬儀後に二人が交わる時の喘ぎ声はそれよりも遥かに激しく、彼女が強くカロルを求めていたことが分かる。複雑怪奇な愛の問題が、この一点に帰着するというのはなんとも皮肉ではないか。しかし、これを男女逆転させて考えてみると三十郎氏にも自然に理解できるように思う。カロルの勃起力が回復したのは自信の問題なのだろうか。

ポーランドに戻ったカロルが成功を収め、自分をこっぴどく捨てたドミニクに復讐する。この復讐が達成されたことで二人が「平等」になるというオチである。最後の手話的な動作が何を意味しているのかは不明だが、左手薬指に指輪をはめる動作が含まれていることからも、ドミニクの愛が復活したと考えてよかろう。それ以前に死んだはずのカロルと交わった時点で回復し、肉体的な面では「平等」になっていたのだろうが、復讐抜きではカロルの気持ちの面で「平等」にならない。愛は複雑である。

カロル[気○肉△]ドミニク[気△肉×]の状態で離婚し、復讐決意の段階(電話ガチャ切り)ではカロル[気△肉-]ドミニク[気×肉-]。葬儀後交合でカロル[気△肉○]ドミニク[気○肉○]になり、そして復讐達成でカロル[気○肉○]ドミニク[気○肉○]といった具合の変化だろうか。カロルの行動は一見意味不明にも思えるが、しっかりと辻褄の合う話になっていたように思う。

「白」のテーマは「平等」とのことだが、白という色のイメージは「無垢」が強い。本作にも登場するウェディングドレスが象徴しているだろう。しかし、本作にはウェディングドレスよりも先に「白」が登場していて、それは裁判所前でカロルに降り注ぐ鳩の糞である。汚い「白」もあるのだと(他には彼が嘔吐する便器も白)。この辺りのバランスも「平等」な切り取り方と言えるのか。他の「白」は、絶頂したドミニクの頭が「真っ白」になるシーン。これが最も純粋な「白」だろう。本作も桃色描写は物足りなかったが、二人が交わるがシーツの色が「赤」だった。次こそは期待してもよいのか。

カロルがトランクに隠れるという発想そのものも面白いのだが、他の荷物と比べて重量が強調されていたり、ロストバゲージしたり、ミコワイが「友人が隠れていて……」と認めるシーンにもコミカルさが光っていた。

ビンをリサイクルボックスに入れづらそうにする老人(?)が『青』に引き続き登場している。『青』のジュリーは気付くことさえなかったが、カロルはただ見ているだけだった。

トリコロール/白の愛(字幕版)

トリコロール/白の愛(字幕版)

  • 発売日: 2013/12/21
  • メディア: Prime Video