オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『トリコロール/青の愛』

Trois Couleurs: Bleu(Three Colors: Blue), 98min

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・レジャン

他:金獅子賞

★★

概要

交通事故で作曲家の夫と娘を亡くした女の話。

短評

一度は「やめておくことにする」と決めたものの、「白は面白かったと思いますよ。ジュリー・デルピーだし」とのコメントを頂いて翻意した。三十郎氏の意志は弱い。やはり非常に苦手なタイプのヨーロッパ的なヨーロッパ映画だった。『トリコロール』三部作は、青、白、赤──フランス国旗の左から右の順番で、それぞれ「自由」「平等」「博愛」をテーマとしているそうである。一人になって「自由」なはずが「自由」じゃなくて、夫の死という「過去」から解放されて「自由」になる話なのだと思うが、よく分からなかった。

あらすじ

交通事故で夫パトリスと娘アンナを亡くしたジュリー(ジュリエット・ビノシュ)。昏睡から目覚め、医師から二人の死を告げられて自分も死のうとするが死に切れない。退院した彼女は、まるで感情を失ったかのように淡々と遺品を整理し、作曲家であった夫の未完成楽譜も捨て去ってしまう。しかし、夫の同僚オリヴィエがそのコピーを手にしており、ジュリーも曲の完成を手伝うことになる。

感想

「青」をモチーフとしているだけあって、青いシーンやアイテムがいくつも登場する。というよりも目につく。冒頭の事故時の映像は青味がかっており、記者から「夫の曲はあなたが書いたのでは?」と突撃取材されるジュリーの隣には青いガラスがあり、彼女を青い光が照らす。夫の生前に暮らしていた屋敷には青い部屋(と装飾)が、ジュリーのバッグの中には青い飴が、そして、彼女は青く光るプールで夜な夜な泳ぐ。三十郎氏は普段「青」という色から「落ち着き」の印象を受けることが多いのだが、本作の「青」から感じたのは「冷たさ」だったように思う。

ジュリーは何かある度に目を閉じ、そして壮大な音楽が聞こえてくる。ここで暗転が入ることが多いのだが、場面は切り替わらずジュリーが目を開ける。これは夫の遺した曲に取り憑かれているのか。それとも音楽は彼女の中にあったということなのだろうか。最終的にはオリヴィエから「君の名前で発表すべき」と言われるが、どうも確信が持てない。彼女がプールから上がろうとする時に音楽が聞こえて、まるで「聞きたくない!」と逃げるかのように水に顔を沈めるシーンが印象的だった。

本作は、ほとんど「夫」と「音楽」の話で占められている。ただ、ジュリーが屋敷から持ち出して新居に飾っている青いランプ飾りは、娘のものなのではないかと思う。娼婦リュシール(シャルロット・ヴェリ)が「子供の時に触りたくジャンプした」と言っているし、青い部屋が娘の部屋だったのではないだろうか。夫との過去からは逃げようとしても音楽で繋がって逃げ切れず、娘との過去は捨て去ろうとすること自体ができなかったのか。

娼婦リュシールは、「父親が自分の働くストリップ・クラブに来ててショック。しかも最前列でバッチリ股間見てる」と神妙な顔でジュリーに相談しながら、「本番前だからこすってくれ」と頼む男の股間をなんでもないようにこすっている。なんともシュールだった。このクラブの照明は淫靡な「赤」なのだが、『赤い愛』は桃色描写にも期待できるのだろうか。ジュリエット・ビノシュは脱ぐだけで見せないというガッカリ演出だった。

ネズミ退治のシーンが印象的だった。自分で始末できないのは、事故の影響で「命を奪う」行為に拒否反応を示しているのかと思ったが、知人に猫を借りてくるというアクロバティックな方法で解決していた(あっさりと貸してくれる)。猫が退治したはずのネズミをリュシールが始末しにいくシーンは、「はいてない」と言う彼女のスカートがヒラリと舞ってお尻が見える。それ以上のものは確認できなかった。

夫の愛人に会うため、ジュリーがモンパルナスの裁判所に行くシーン。ちらっと映る女性が次作『』に登場予定のジュリー・デルピーっぽいと思ったのだが、EDクレジットに名前があったので多分そうなのだと思う。全然関係ない役どころだったらどうしよう。意味ありげに登場して何もしなかったリコーダーおじさんも出てきたりするのだろうか。

トリコロール/青の愛(字幕版)

トリコロール/青の愛(字幕版)

  • 発売日: 2013/12/21
  • メディア: Prime Video