オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『愛の回帰線 コジモとニコル』

Cosimo e Nicole, 105min

監督:フランチェスコ・アマート 出演:クララ・ポンソ、リッカルド・スカマルチョ

★★★

概要

政治抗議デモで知り合った男女が付き合う話。

短評

主演女優のおっぱい目的で観たら意外と拾い物だったイタリア映画(目的も達成された。とても良かった)。劇的に面白い部分はないのだが、ある事件に対する男女の意識の差が溝を生む様子にそれなりのリアリティを感じて楽しめた。男女の仲は、燃え上がるも鎮火するも些細な切っ掛けが膨れ上がることによるらしい。事件を巡る皮肉な展開もバカップルによる底辺映画的な趣があり、こちらも収まるべきところに収まっていたと思う。

あらすじ

17才のフランス人ニコル(クララ・ポンソ)とイタリア人のコジモ。政治抗議集会で警官隊に頭を殴られて気絶していたニコルをコジモが助けたことから二人は急接近し、激しい恋に落ちる。ジェノヴァに居を構えて新生活を始めた二人だったが、コジモの働く屋外フェスの会場設営中に不法移民の労働者アリョンが転落する事故が起こる。事故のことは忘れようとするコジモと拘泥するニコルの関係に亀裂が入りはじめる。

感想

出会ってすぐに熱烈に燃え上がったカップルが、いくつかの出来事を通じて「抗議デモで出会って熱くなっただけなのかも。今初めて出会ってたら恋に落ちた?」と考えるに至り、それでも離れられないことが示唆されて終わる話である。最後は再び燃え上がりそうでありながら直接の描写がないのだが、一周回って元鞘に収まったという解釈で邦題が「愛の回帰線」なのだろうか(あるいはダンスで熱くなっただけなのか。この時のニコルの表情がセクシーである)。よく分からないがそういうことにしておこう。別れてからの旅の後もそうだったが、どうしても惹かれ合う二人なのである。

落下事故を受けて車で病院へ急行する途中、会場設営の責任者パオロが「犯罪者にはなりたくない」と言い出し、アリョンは遺棄される。この後、パオロがコジモに「どうだ、今夜のミキサーを担当しないか?」と昇進を餌に懐柔する姿がリアルだった。人は後ろめたい気持ちがあって不安な時に共犯者を求めるものである。「お前は仲間だよな?」と。この妙な馴れ馴れしさは、送り手と受け手の両方で経験しているように思う。

餌に釣られて事件を忘れようとするコジモ。対するニコルは、警察の捜査を恐れてアリョンの荷物を始末した際に発見した恋人への手紙のせいなのか、どうしても頭から離れない。「もしニコルに対してもパオロから便益が供与されていたらどうなったのか」という疑問と可能性は残るものの、証拠品となりうる手紙を処分したいコジモとそれだけは捨てられないニコルに男女の考え方の違いが現れていたように思う(女性にも「そんなもん捨てちまえ」という人はいくらでもいるのだろうが)。この辺りの感情の機微が、二人へのインタビューが適宜挿入されることで分かりやすくなっていた。

そうして二人がすれ違いはじめたところで(ニコルがセックスを拒否して手淫で済ませる)、アリョンの生存が判明する。彼を始末したいパオロの手から逃れ、アリョンを兄のいるブリュッセルへと送り届けようとするのだが、そこで警察に不法入国と幇助の罪で逮捕される。これをニコルが「死体を遺棄しても何もなかったのに、助けようとしたら逮捕なんて皮肉」と回顧しているが、その通りだと思った。二人の関係に置き換えれば、一緒にいて幸せな生活を送れるはずの時ほど溝が深まりやすいのが皮肉といったところだろうか。

17才のフランス娘がイタリアで何の抗議デモに出ているのか分からなかったが、IMDbによるとG8への抗議らしい(これには2011年と書いてあるが、ジェノア開催は2001年なので当てにはならない)。「17才の少女と交わって、自国に連れ去り住まわせちゃうなんて犯罪にならないのか」と嫉妬したが、法律的にはどうなっているのだろう。イタリアもフランスも成人年齢は18才らしい。

そう言えば、冒頭の巨大スーパーでバイトしているシーンは時系列的にどこなのだろう。話しているのがフランス語だったが、[ジェノヴァの抗議集会→フランスでバイト生活→再びジェノヴァに]という流れでよいのか。となると、ニコルが成人年齢に達するまで待った上で親に許可を取っての移住となるのか。これだとイタリア男を批判できなくて悔しい。

コジモが情事の最中に笑い出し、「お前ってイク時はケツに鳥肌が立つよな」と言うのが可笑しかった。