オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『FRANK -フランク-』

Frank, 95min

監督:レニー・エイブラハムソン 出演:ドーナル・グリーソン、マイケル・ファスベンダー

★★★

概要

ボーカルが被り物をしたバンドの話。

短評

被り物のインパクトが絶大でシュールながら、少しホロリとさせられる一作。イギリスのコメディアン、クリス・シーヴィのキャラクターであるフランク・サイドボトムが元ネタとなっているそうである(ほぼ同じデザインだが、どちらも絶妙な不気味さ)。被り物の印象と同じく暗いようなコミカルなような不思議な映画である。主人公と同じ凡人たちには残酷な話なのだが、我々の尺度で介入してはいけない世界もあるのだ。

あらすじ

仕事の合間を縫ってオリジナル曲の制作に励むジョン(ドーナル・グリーソン)。ある日、入水自殺を目論む男が救助されているのを目撃する。その場にいた男ドン(スクート・マクネイリー)によると男はバンドのキーボードで、急遽ジョンが代役としてステージに立つことになる。ジョンの演奏は被り物をしたボーカルのフランク(マイケル・ファスベンダー)に気に入られ、バンドのアルバム制作に(半ば騙されて)参加することになる。

感想

フランクはプライベートでも被り物を脱がない。食事はストローで摂取し(パンケーキはどうやって食べたのか)、シャワーの時は被り物の上からビニール袋を被っている(だから頭部が臭い)。ステージで注目を浴びるのが目的ではなく彼は精神を病んでいるのだが、この奇抜さと才能に、凡人であるジョンは魅了される。

ジョンの曲は、ドンから「クソ曲しか作れないのって辛いよな」と慰められるようなつまらないものである(フェスで披露した曲の酷さといったら……)。一方で、フランクの音楽は意味不明ではあるが個性的で面白い(と少なくともジョンは感じている)。三十郎氏もジョンと同じ“変人に憧れる凡人”を自認しているが、変人は変人で苦しみを抱えており、そもそも活動の目的が違うのであった。改めて自分の凡人ぶりを突き付けられたような気分である。

ジョンはツイ廃である(彼を見るとハッシュタグの痛々しさが伝わる。使うのやめようかな)。おまけにメンバーの生活風景を盗撮してYoutubeに投稿している。“音楽を利用”して世間に認められたいという彼の承認欲求に対して、バンドメンバーたちは“音楽をする”ことが自己目的化している。自己目的化と書くと不毛の砂漠をを彷徨っているようだが、そんなのは「大きなお世話」という話であった。クソくらえ、生産性。

変人と一緒にいると、自分も仲間になれたような──自分にも才能があるかのように錯覚させられる。しかし、凡人はどこまで行っても凡人であり、中にはその事実に耐えられない者もいる。これは悲しい事実だが、ジョンが「天才的」だと思っているフランクの音楽も、世間的には変人奇人のネタ扱いだったりする。結局のところ、変人への憧れは自身のコンプレックスの裏返しでしかない。変人も凡人も、なんとかして自分を受け容れるより他にないのである。

『フランクのつくりかた』という動画があった。三十郎氏は挑戦してみないが、興味のある方は是非。深夜に出くわしたら失禁しそうである。本作を知らない人に通報されるかもしれない。この被り物でマイケル・ファスベンダーの綺麗な顔が封印されているのだが、終盤に登場する彼の頭頂部には円形ハゲが。とことん格好よさを放棄していたが、それでも適度にマッチョな肉体は格好いいのであった。

FRANK フランク(字幕版)

FRANK フランク(字幕版)

  • メディア: Prime Video