オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ヒットマン VS キョンシーズ』

God of Vampires, 109min

監督:ロブ・フィッツ 出演:ダルマ・リム、ベン・ワン

★★

概要

殺し屋とキョンシーが戦う話。

短評

アメリカ製のキョンシー映画。どうやらキョンシー映画についてもサメ映画と同様に「あれば観よう」と脳が認識するようになってしまったらしい。画質が極悪なので80年代のカルト的な映画なのかと思って観ていたら、携帯電話が登場して驚いた。なんと2010年の映画である。グロ描写や最終決戦の舞台のセットだけは上出来なので、“あえて”80年代風を狙って画質を落としたのだろうか(画質が悪すぎて何をやっているのか分からないレベルのシーンもあったが)。酷い映画ではあるが、頑張っている部分もあるし、酷すぎて笑える部分もある一作だった。

あらすじ

凄腕の殺し屋フランク・インに一件の依頼が届く。若い娘が拐われる事件が起きており、その犯人がいるとされる中華街に乗り込むも、標的は頭を撃ち抜いても死なない怪物だった。現場で拾得したメダルを手掛かりに捜査を進めると、中華レストラン店主のピン曰く「それはキョンシー、中国のヴァンパイアだ」と。フランクはピンたちとキョンシーの本拠地へ乗り込む。

感想

“前へ倣え”してピョンピョンし(ワンシーンだけ)、御札で封印される。この二つさえ揃えば、アメリカ製のキョンシー映画としては十分だと思う。本作は、それらに加えて「呼吸に反応する」という要素も入っていたり、キョンシーの爪が伸びていたりと、ほぼゾンビ映画の割にはちゃんとキョンシー映画していたと思う。ゾンビの身体が硬直していないとか細かい箇所にまで拘るのは酷だろう。

戦うのが道士ではなく殺し屋なのがハリウッド的なのだが、この主人公がどうにも格好よくない。小太りのおっさんである。そんな彼がマトリックス風のファッション(サングラス+黒のロングコート)をバッチリ着込み、敵の本拠地に乗り込む前にポースを決めているシーンは爆笑ものだった。斜め下を向いてカッコつけているのが最高である。人はどうして正面を向いてキメ顔ができないのだろう。なお、彼のアクションがネオのようなキレを見せることは一切なかった。

ヴァンパイアのコスプレをした客を殺してしまったり、キョンシーに立ち向かう武器の剣が一本足りずにチェーンソーで代用するところも笑えた。

本作はチェリー・エノキという人物に捧げられている。調べてみると、彼女は千葉県出身の映画編集者で、本作の仕事を最後に2008年に33才の若さで亡くなったそうである。たとえ“こんな”映画であっても、日本人がアメリカの映画産業で仕事を得るのは凄いと思う。しかし、本作の110分は長過ぎて辛かったので、90分にまとめてほしかった。IMDbによると144分のフルバージョンが存在するようなのだが、これ以上何をどう引き伸ばしたのだろうか。殺し屋の標的がキョンシーで、彼がそのキョンシーと戦う。たったそれだけの話である。撮った映像を全部使いたい“もったいない精神”を発揮してしまったのだろうか。

この通りとても褒められた映画ではないのだが、グロ描写だけはやたらと出来が良い。監督ロブ・フィッツの本業が特殊メイクだと分かって納得した。キョンシーの根城は「彼の食べ残しがついている」とされており、かなりおどろおどろしい雰囲気が出ている。血糊はドバドバ、質感はドロドロである。これは画質が悪いおかげで『死霊のはらわた』的に感じられたのか。それとも折角のセットがよく見えなくてもったいなかったのか。