オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『トールマン』

The Tall Man, 105min

監督:パスカル・ロジェ 出演:ジェシカ・ビールジョデル・フェルランド

★★★

概要

子供たちの連続失踪事件が起きた町で噂されるトールマンの話。

短評

都市伝説系のホラー映画である(スレンダーマンの翻案なのかな?)。都市伝説というものは、姿形や出来事に関する証言が一定せず、噂ばかりが一人歩きし、想像力が掻き立てられ、疑心暗鬼に陥るから怖いのである。一方で、その正体を映像として見せてしまうと途端に陳腐化するという弱点がある。本作は、失踪事件を一度現実的な落とし所に着地させ、その上で改めて「トールマンとは何者なのか」という謎を提示する構成となっている。この引っ張り方の妙である。真相についても、都市伝説の範疇から逸脱することなく、それでいて説得力を持たせたものとなっていた。

あらすじ

六年前に鉱山が閉鎖され、すっかり活気を失ってしまった町コールド・ロック。この寂れた町をもう一つの悲劇が襲う。幼い子供たちが次々と姿を消すという事件が発生し、“トールマン”という怪人の仕業ではないかと噂されていた。ある晩、町で診療所を開く看護師のジュリア(ジェシカ・ビール)の家からデビッドが連れ去られてしまう。

感想

デビッドが連れ去られるところまではよくあるホラー映画である。素直に「頑張れ、お母さん!」的な感覚で観ていると、犯人が判明して「おおっ!」と驚かされる。トールマン(容疑)の外見がショボくて物足りないと思っていたら、町ぐるみの陰謀みたいな雰囲気を帯びてきて、キャラクターもののホラー映画ではないという視点の転換がある。ここまでが割とスピーディーなので、恐怖を感じることはないが、展開に対する強い興味を持つことができた。

犯人が判明すれば「トールマンとは何者なのか」も明かされて然るべきなのだが、そうは問屋が卸さない。トールマンの秘密は守られなくてはならないのである。犯人が閉塞的な町の状況や行政の無為無策について言及した上で、「壊れた大人」と「可能性のある子供」という対比的なキーワードが示される。スリラー映画だと思って観ていればもっと早い段階で気付いたのかもしれないが、あくまで都市伝説系ホラー映画として観ている三十郎氏にはなかなかピンと来なかった(生贄か何かなのかと思っていた)。

そして、二度目の視点の転換。主人公がジェシカからジェニー(ジョデル・フェルランドコスプレ専用黒猫専用のアカウントもあった。『魔女の宅急便』のファンのようである)という少女へとバトンタッチする。ジェニーは、上述の大人と子供も中間にあるような年代の少女である。トールマンの正体に気付いた彼女が、「トールマンに会いたい」と。つまり、そういうことなのである。絶望的な状況の町から子供が連れ去られるという事件は、被害者の子供にとっては絶望的ではないのである。トールマンというわざとらしい都市伝説的タイトルを囮に使った見事な構成だった。

トールマンの行為は強烈な価値観の押し付けであり、許し難い誘拐である。特に子を持つ親ならば決して納得できないだろう。一方で、コールド・ロックの荒廃した風景(三十郎氏は廃墟フェチなので大好物)は明るい未来を微塵も感じさせない。自らの意思で町を去ることを選択したジェニーでさえ、果たしてどちらの方が幸せだったのかと迷い、「これでよかったんだよね?」と自問している。トールマンの行為は“悪”だと言い切ってしまってもよい。しかし、“悪”のもたらす結果は“善”となりうるかもしれない。もっとも同じ犯罪であれば、貧者から子供を奪って富裕層に与えるよりも富裕層から金を奪って貧者に与えろとは思う。

トールマン(字幕)

トールマン(字幕)

  • 発売日: 2017/03/24
  • メディア: Prime Video