オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ラヴレース』

Lovelace, 92min

監督:ロブ・エプスタイン、ジェフリー・フリードマン 出演:アマンダ・セイフライドピーター・サースガード

★★★

概要

社会現象となったポルノ映画『ディープ・スロート』とその裏側。

短評

ニクソンとは関係ない方の『ディープ・スロート』についての映画である(無関係のはずのニクソンも出てくる)。同作が同名の行為の語源となる程の大ヒットを記録したそうである。アマンダ・セイフライドの大胆な演技は眼福であるものの、「おっぱいおっぱい」と喜んでいるジョニーを諌めるような内容でもあるため、居心地の悪さが適度に刺さった。

あらすじ

厳格なカトリック教徒の母(シャロン・ストーン)に育てられた21才のリンダ(アマンダ・セイフライド)。妊娠、出産、養子縁組を経験して母の締め付けは厳しくなるばかりだったが、バーの経営者チャック(ピーター・サースガード)と知り合って結婚。しかし、経営に行き詰まったチャックにポルノ映画出演を求められる。デビュー作『ディープ・スロート』は興行収入6億ドルの大ヒットを記録し、セックス革命の体現者として持ち上げられるリンダだったが、その裏には夫による暴力や、売春、ポルノ出演の強要があった。

感想

6億ドルというと『アベンジャーズ』の北米での興行収入くらいである。1970年代の物価を考えると本当の数字なのかは怪しいが、大ヒットであったことは間違いない(もしかしてこの映画ならトラヴィスもベッツィーに逃げられなかったか)。そんな華々しい活躍の裏にあるのは闇でしかないという悲しい物語である。性産業の存在自体が悪なのか、それとも本人の意思に反して従事させる強制力が悪なのか。その判断は難しいところだが(なくなると困るという受益者としての切実な理由もある)、本来は分けて考えるべきこれら二つの問題を非常に切り離しづらいという点が、議論を混乱させている気がする。

本作は間違いなく「ポルノ映画についての映画」ではあるのだが、その言葉から期待される程に桃色ではない。背景を考えれば仕方のないことではあるものの、裏側の描き方も少々物足りず、光と闇の対比はもっと映画的に強調されてもよかったのではないかと思う。チャックがクソ過ぎて「悪い男に捕まっちゃったな」程度の印象を受けるのだが、彼みたいな男が現実にいるんだろうなあ。

リンダを演じるアマンダ・セイフライドのおっぱい。乳輪の色が薄いというのはなんて素敵なことだろう。それ自体は良かったのだが、彼女のおっぱいの描き方としては『CHLOE/クロエ』に軍配が上がる。同作で彼女の披露した横方向からのおっぱいは、クーパー靭帯と重力とのせめぎ合いが絶妙な拮抗状態にあり、理想的な重量感を感じさせるものであった。本作では正面からのショットが多く、同作で見せたシルエットの美しさが際立っていないのが少し残念である。と言うか、乳房の形状や乳輪の大きさが同作で見せたものとは異なっていたような……。

桃色描写についてもう少し言及すると、ポルノが流れるシーンはスクリーンが全面エメラルド色で隠され、口淫のシーンは頭部周辺が透過率ゼロの真っ黒なボカシで隠されている。これは恐らく日本国内の配信バージョンの問題なのだと思うが、「リンダは可愛いけどポルノ・スターに求められる華がない(ついでに偏平尻だし)」と文句を言うポルノ制作者たちが、チャックのホーム・ビデオを見せられて態度を一変させるシーンが意味を成していない。

ヒュー・ヘフナージェームズ・フランコ)が「人生は芸術を模倣する」と格好いいことを言っているが、これが『ディープ・スロート』を観ながらの発言なので全然格好よくない。

リンダの母を演じるをシャロン・ストーンは、言われなければ彼女と分からない程に魅力が封印されていた。DVを受けて助けを求めるリンダに対し、彼女が「何をして怒らせたの」と言い放つシーンがキツかった。

ポルノ映画のストーリーに期待するのは余程の好き者だけだと思うが、笑いの部分には凝っているようで、「喉の奥にクリトリスがついてる!」「先生の耳にタマがついてたらどうするの?」のやり取りは発想の豊かさに驚かされた。

性搾取を撲滅するには高性能セクサロイドの開発が理想的だろう。男女共に生身の人間に性的欲求を向けることがなくなり、試験管ベイビーにより繁殖と人口が管理される。産み育てることから解放された人類は次のステージへと進む。高性能セクサロイドを実現するロボット工学と情報工学があれば、人類は多くの労働からも解放されることだろう。生活インフラの維持は機械に託され、人類は精神の修養へと専念するのである。繁殖という目的がなくなれば、やがては本能から性欲が消え去ることだろう。そんな新人類を描くSFってないですかね?『トータル・リコール』的に情報を直接脳に送り込む技術とどちらが先に実現されるだろうか。

ラヴレース(字幕版)

ラヴレース(字幕版)

  • 発売日: 2014/11/02
  • メディア: Prime Video
 
Ordeal

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