オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『エリザベス∞エクスペリメント』

Elizabeth Harvest, 109min

監督:セバスチャン・グティエレス 出演:アビー・リー、キーラン・ハインズ

★★★

概要

理想の嫁の作り方。

短評

アビー・リー・カーショウの抜群のスタイルに見惚れるSFスリラー。180cm超えで自分よりも高い身長は畏怖の対象に近いのだが、寄ると顔がお人形さんのように可愛らしい。(どうもしないけど)どうしてよいのか分からなくて困ってしまう。それほど新味のない二転三転を適当に楽しみ、男の歪んだ性癖にドン引きし(ながらも多少理解し)、そして美女を眺める。こんな生活は嫌だけど、こんな生活がしてみたい一作だった。

あらすじ

ノーベル賞受賞者の夫ヘンリーと若く美しい妻エリザベス(アビー・リー)。豪邸での何一つ不自由ない暮らしのはずだったが、夫から妻への注文が一つ。「この部屋にだけは入らないと約束してほしい」。しかし、夫の留守中にその部屋に入ってしまったエリザベスが目撃したのは、……眠っている自分であった。

感想

原題を直訳すれば「エリザベスの収穫」である。さながら「エリザベス畑」といったところだろう。というわけで、エリザベスがクローンというのはネタバレでもなければ、驚くことでもない。夫の「死んだ妻を蘇らせる」という目的もありがちである。

しかし、クローン化を成功させたヘンリーの欲望に歯止めがかからなくなる。人はノーベル賞受賞者に高潔な人格を期待しがちだが、優秀な科学者というのは得てして奇人変人なのである。燃える新婚生活を取り戻すという当初の目的は、やがて「自分に従わない妻を殺す」ことへと変貌する。「入らないで」と言いながら「君の指紋認証でも入れるように設定してるよ」なんて「入ってくれ」と同義ではないか。三十郎氏にはエリザベスの如き美女を射止めること自体が叶わないので分からないが、それだけでは満足できないのが男の支配欲なのだろうか。罪深いな。

美しきアビー・リー劇場。マッチ棒のように細長い手脚でありながら、出るべき場所はそれなりにぷりんとしている。そして、圧倒的な股下比率が神々しい。彼女は研究室に入る前に一人ファッション・ショーをしており(何を着ても似合う)、様々な衣装に身を包んだ本職モデルの姿が見られて眼福だった。彼女が鏡に映る自分とキスするシーンが非常に官能的なのだが、あれ程の美人ならばそんな気分にもなるだろう。三十郎氏は鏡を見る時間を一秒でも減らしたいと思っている。

全編に渡って美しいエリザベスだが、三十郎氏のお気に入りは鮮血に染まる彼女の姿である。刺殺したヘンリーの血に染まり(反撃を計算に入れないのは阿呆なのか。それなしでは興奮できないのか。ジョニーの前に知性が無力化される遺伝子だった)、フランクの、オリバーの血を浴び、そして自分の血も。三十郎氏の理想の“今際の時に見ていたい映像”は、『マップ・トゥ・ザ・スターズ』で返り血を浴びるミア・ワシコウスカである。美女に殴打されながら死にたいという秘められない願望がある。自分の汚らしくも美しい血液で美女を染め上げたい。そんな事情もあって血染めの美女を偏愛しているのだが(他者の血であることが重要。美女を傷つけてはいけない)、本作のエリザベスも大変に素敵であった。血のついた顔ってどうしてあんなに美しいのだろう。もっとも痛いのは嫌だし、死ぬのも怖いので、叶わぬ夢であることを前提に惹かれている。

ヘンリーが初夜に妻のブラ紐やガーターをチョキチョキとハサミで切断している。もったいないが不思議にエロティックだった。捨てるのなら三十郎氏に寄付してほしい。あとは紐パンを結ぶシーンが良かった。脱ぐのではなく結ぶのがポイントである。

クローンの自我や男性の支配といったモチーフが掘り下げられることはなく、それ故に凡庸なスリラーとなっているのだが、生活しづらそうなサイケデリック照明の豪邸は羨ましく(特にイームズのラウンジ・チェア)、そこで奮闘するアビー・リーが見られればそれだけで楽しい(最終的に脱出を果たすのが自分の知るエリザベスでないのはスッキリしないが)。映像的にはデ・パルマ的だっただろうか。

クレア(カーラ・グギノ)の日記の意味不明っぽい部分(クローンの理屈や実験)を適当に読み飛ばす演出がリアルだった。三十郎氏が「細かい箇所はとりあえず無視して……」とこれをやると、重要な箇所まで読み飛ばして全体像もよく分からなくなることが多い。

エリザベス∞エクスペリメント(字幕版)

エリザベス∞エクスペリメント(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/03
  • メディア: Prime Video