オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ワイルド・ストーム』

The Hurricane Heist, 102min

監督:ロブ・コーエン 出演:トビー・ケベル、マギー・グレイス

★★

概要

ハリケーン強盗に6億ドルが狙われる話。

短評

映像的な迫力はディザスター映画に求められる水準を十分に満たしているものの、脚本がB級映画の水準にすら達していない。登場人物が皆阿呆なせいで何が起きても深刻な事態に感じられない。ハリケーンの混乱に乗じて強盗を働くというアイディアは良かったと思うが、強盗側が主人公ではないため一風変わった泥棒映画とはならず、ハリケーンや対ハリケーン用特殊車両が十分に活躍できないだけのハリケーン映画に終わってしまった。

あらすじ

1992年のアラバマ州。ハリケーン・アンドリューが、ブリーズとウィルのラトリッジ兄弟の目の前で父親を連れ去る。それから25年後、アラバマに再び巨大なハリケーンが迫っていた。その混乱に乗じて財務省の廃棄用古紙幣6億ドルを狙う強盗が現れ、警備担当者のケーシー(マギー・グレイス)と町に残っていたラトリッジ兄弟が立ち向かうことになる。

感想

ケーシーは歪んだ(=阿呆な)ヒロイズムの持ち主である。発電機の修理業者を連れて施設に戻ると強固なはずのセキュリティが突破されている異変に気付くのに、本部や応援部隊と連絡を取ろうとすることなく無謀にも一人で乗り込んで窮地に陥る。ハリケーンの影響で通常の通信が使えないという設定になっているようだが、無線は普通に使えているし、彼女は検討すらすることなく行動の本能の人であった。兎にも角にも報告することを最優先すべきである。そうすれば敵がグダグダしている内に応援部隊が来るだろうし、仮に6億ドルを持ち逃げされても検問で捕らえられたことだろう。

主人公のウィルは気象学博士の頭脳系である。従って肉体的な活躍をケーシーが担うことになるのだが、上述の通り彼女は頭が悪い(彼女が唯一知性を発揮する爆弾についての知識も出てくるだけで無駄に終わる。他にも話に出しただけで使わない無駄描写が多い)。撃たずともよい場面で銃を乱射しては弾切れを起こし(「弾がなくなったわ」「なんで!?」「全部撃ったからよ!」の会話を考えた脚本家は、自分の私生活での会話も見直すべきだと思う)、必死で守っていた金庫のコードをあっさり明け渡す。本作の狂言回し的真犯人は彼女である。

対ハリケーン用特殊車両ドミネーター。ハリケーン観測のために暴風の真っ只中に突入していくシーンがないため、あまり活躍することはない。個人的にハリケーン映画の見どころの一つだと思っているので非常に残念だった。地面に根を下ろす装置をはじめとするギミックが少年の心を呼び覚ましてくれるはずだったのだが、格好いいのは見た目だけだった。対ハリケーン車両については『イントゥ・ザ・ストーム』のタイタスの方がワクワクさせてくれた気がする。

どうして強盗側を主人公にしなかったのだろう。ハリケーンを利用した計画のはずが逆にハリケーンのせいで窮地に陥るという皮肉な展開の方が面白そうなのに。本作にもハリケーン故のピンチと逆に利用した戦略は登場するが(ホイール手裏剣が楽しそうだっった)、主人公側に一貫した目標がないためかいきあたりばったり感が否めなかった。もっとも本作の強盗たちも「保安官をグルにして住民を避難させた状態で犯行に及ぶ」という点以外ではハリケーンを活かせていない。ハリケーン以外の方法で敵の通信を妨害できればハリケーンは必要なかったのではないだろうか。財務省のシステムをハッキングできるのならそれくらい考えればいいのに。

兄弟にだけ分かる暗号としてアメフトのプレイコールが何度か登場するが、あまり上手いこと言えていない。

邦題が「ワイルド」なのは監督がロブ・コーエンだからだろう。元ネタの方も「ワイルド」は原題にない。

ワイルド・ストーム (字幕版)

ワイルド・ストーム (字幕版)

  • 発売日: 2019/06/26
  • メディア: Prime Video