オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『レイズ・ザ・タイタニック』

Raise the Titanic, 113min

監督:ジェリー・ジェームソン 出演:リチャード・ジョーダン、デヴィッド・セルビー

★★

概要

タイタニック号を海底から引き揚げる話。

短評

タイトルに名前を使用して観客を釣る以外ににタイタニック号の存在意義が感じられなかった一作。原作は派手な展開が連続する人気シリーズとのことなのだが、本作は海中でのゆっくりとした作業の連続で、時折人が映ったかと思えば暗い潜水艇の内部という地味さだった。気候がだいぶ暖かくなったこともあり、鑑賞中にうつらうつらしたことを否定できない。『SOSタイタニック』の方がよっぽどダメなB級映画臭を放つタイトルなのに、こちらの方が断然ダメだった。

あらすじ

全米にレーザーを張り巡らせるミサイル防衛システム「シシリー計画」。この実現にはエネルギー源となる「ビザニウム」という希少鉱物が必要だったが、その産出はソ連圏内に限られていた。そのビザニウムがかつてロシアから持ち出された形跡が発見され調査を進めると、あのタイタニック号と共に沈んだことが明らかとなる。元海軍大佐のダーク・ピットを指揮官とするタイタニック号引き揚げ計画が始動する。

感想

物語は米ソ冷戦を背景とした政治スリラー的に幕を上げるが、すぐに引き揚げだけにフォーカスが移って映画の大半を消化し、最後に申し訳程度にソ連が出てきてあっさりと退けられる。タイタニック号を引き揚げるという行為が物語の核になるのだが、「これは別にタイタニック号でなくとも沈没船なら何でもよいのでは……」という疑問が最後まで消えなかった。それでもタイタニック号が浮上した瞬間には「おぉ~」と少しだけ感動できたので(ちなみに折れてない)、やはりタイタニック号でなくてはならなかったのだということにしておこう。

物語の主人公ダーク・ピット。知能体力共に優れたスーパーエリートでハンサム、おまけに父が上院議員の金持ちという盛り込み過ぎな設定らしい。本作の彼は元恋人の現恋人に対して当たりがキツいという小物感を漂わせており、指揮官としてもどの程度有能なのか分からない程度には人間らしく描写されていた。潜水艇タイタニック号を発見できたのはシーグラムの実験のおかげだし、大胆な予定変更で引き揚げを成功させたのも「俺様がやる事は全て正しい」的ないきあたりばったり感があった。

引き揚げたタイタニック号にソ連の関係者が「ビザニウムは我々のものだ」と乗り込んでくる。作業完了でようやく冒頭で示唆された政治スリラーに移行するのかと思いきや、「それくらい想定済みだぜ」と原子力潜水艦と戦闘機が登場してソ連さんはあっさり退散。なんだったんだ。

こうなるとタイタニック号が全ての映画となるはずなのだが、引き揚げた船から出てきたのは、ビザニウムではなく砂利(なんとこれが驚愕の「まあええか」扱い)。ピットが「あ、そう言えば……」的にビザニウムの在り処を思い付いて終劇である(使われないはずがないレベルの不自然な伏線が張られれている)。これはタイタニック号を引き揚げるだけ無駄だったのでは……。これまでの話が丸々無意味だったのでは……。

潜水艇が浸水して乗組員が死亡したりするトラブルはあるものの、作業の様子は地味で退屈である。浮上シーンの特撮はよく出来ていたし、引き揚げ後の廃墟と化したタイタニック号のセットもなかなかのもので、そこだけは評価してもよいと思う。そこを見るだけで十分だとも思う。