オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『クリシーの静かな日々』

Jours tranquilles à Clichy(Quiet Days in Clichy), 115min

監督:クロード・シャブロル 出演:アンドリュー・マッカーシー、ナイジェル・ヘイヴァース

★★

概要

アメリカ人作家がパリで奔放な性生活を送る話。

短評

ヘンリー・ミラーの自伝的な内容とのこと。と言っても、無教養な三十郎氏はヘンリー・ミラーの著作を読んだことがなし、ミラーと聞いて思い浮かべるのはアーサー・ミラーグレン・ミラーである。話はちっともピンと来ず、本作の内容からヘンリー・ミラーという人物に興味を惹かれることもなかった。彼がどんな大作家先生であろうと知ったこっちゃないとしか思えない映画だった。

あらすじ

ニューヨークからパリにやって来た作家のジョーイ(ヘンリー・ミラー役)。彼は写真家のカールと意気投合し、二人で娼館に入り浸るようになる。ある日、彼らの元にコレット(ステファニー・コッタ)という少女が現れ、奇妙な三角関係的生活がはじまる。

感想

娼館での爛れた生活は正に酒池肉林といった感じで羨ましかったが(特に男1女2の比率でジャグジーでイチャつくのが良い)、登場人物たちが、やれD・H・ロレンスだ、やれプルーストだと意味ありげな言葉を引用して高尚ぶるのが鼻持ちならない。なにが「D・H・ロレンス曰く『ワイセツは神聖なり』」だ。ジョニーに身を任せているだけではないか。文明人としての誇りはないのか。昔は娼館が「紳士の社交場」面していたようだが、裏を返せば現代の紳士の社交場(たとえば銀座の高級クラブ)だって単なるジョニー産業と言えるのか。

娼婦と交わり、頭のおかしな高級娼婦に撃たれかけ、少女に翻弄される。どちらかと言えば「賑やかな日々」ではないかと思うのだが、これでもラストに迫りくる戦争と比べれば「静かな日々」だったことになるのだろうか。真意は不明である。高級娼婦が「私は害虫駆除係の天使なの」と意味不明な言葉を発していて、言葉選びのセンスは秀逸だと思った(意味は分からないが)。なお、彼女は高級なだけあって大きくて綺麗なおっぱいをしている。

「牡蠣にビールはダメだ」と言うカールに対して、ジョーイが「プルーストはビールしか飲まなかった」と反論している。これが反論になっているのかは不明だが、とにかくプルーストの権威は絶対であるらしい。三十郎氏はかつて村上春樹の『1Q84』を読んで『失われた時を求めて』に挑戦してみようかと思ったが、あまりの長大さに本を開くこともなく撤退した口である。ビール党の皆様方におかれましては、ワイン通ぶるハイソ気取りたちにプルーストを読んで対抗するという選択肢を考えてみてはいかが?

本作ではパリでの日々の他に年老いたジョーイの姿が少し描かれているのだが、彼は死の淵まで老いてなお女体に囚われたままである。この逞しい性欲だけは男して尊敬できるレベルだと思うが、男性として機能していなかったようなので逆に辛いだろう。身体が枯れるのなら心も枯れてしまった方がよい。老ジョーイに対して若すぎる女はコレットへの幻影がそうさせているのだろうが、これでは単なるロリコン爺である。60もの年の差は「たった」ではない。

クリシーの静かな日々 (字幕版)

クリシーの静かな日々 (字幕版)

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