オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グリフターズ/詐欺師たち』

The Grifters, 110min

監督:スティーヴン・フリアーズ 出演:アンジェリカ・ヒューストンジョン・キューザック

★★★

概要

三人の詐欺師たち。

短評

詐欺師の映画であれば、きっと観客を騙して最後にあっと驚かせてくるに違いない(この図式が定番化したのはいつからだろう。『スティング』以降か)。三十郎氏はそう心構えして観るし、いかにもな詐欺師映画的に犯行の手口が紹介されるのに、一向に観客を騙す気配すらない。いつだどこだと騙されポイントを探していたら、最後まで騙しにこないのが逆に騙された感のある一作だった。観客の思い込みを利用して手玉に取ったのか。原作小説が『スティング』以前のものなので、その手の形式が浸透していなかっただけなのか。

あらすじ

競馬場での組織的な詐欺に加担しているリリー(アンジェリカ・ヒューストン)。彼女の息子で、ケチなイカサマ(=grifter)を生業とするロイ(ジョン・キューザック)。ロイの恋人のマイラ(アネット・ベニング)は、色仕掛けを用いた詐欺を行っている。三者三様の詐欺師である。イカサマを見破られたロイが殴られて入院し、母と恋人が顔を合わせることになるが、二人は反りが合わない。

感想

終わってみれば悲しい話だった。リリーは母として「あんたには詐欺なんて無理」と忠告してるが、これには業界の底なし沼的な怖さを知る者による「詐欺なんてやるもんじゃない」という含みが感じられる。ロイが師匠から「決して相棒を作るな。儲けは半分になるし弱みを握られる」と教えられている通り(この師匠は情報商材みたいな詐欺の臭いがする)、一度詐欺師になれば生涯を詐欺師として一人で送ることになる。リリーとロイが母と息子の関係となることはできず、ロイとマイラも心から愛し合うことはできない。人を騙すのは痛快かもしれないが、騙すか騙されるか以外の生き方ができなくなるのである。

「家賃を払え」と迫る家主に対して、全裸でベッドに寝そべり「私かお金か選びなさい」と告げるマイラ(男なら当然……)。彼女が以前加担していたという信用詐欺以外は、詐欺要素がどの辺りなのか分からない単純な色仕掛けである。これも詐欺なのだと考えると、彼女が色香を利用する行為の全てが詐欺に思えてきて、恋人であるはずのロイとの関係も騙し合いに見えてくる。詐欺師の人生は全てが虚しい駆け引きでしかなくなり、他者との関係性を求めてしまった者から脱落して死んでいくのである。

きっと本作のテーマは詐欺師の生き方や人間関係にあるはずなのに、三十郎氏は最後の最後までどんでん返しがあるのではないかと警戒していた。リリーがロイが手に持ったグラスごと鞄で殴って刺殺に至るシーンは(物理的に可能なのか?)、マイラの信用詐欺の仕上げと同じ仕込みなのではないかと思っていた(「女か金か」に近い選択もある)。これは狙った演出なのだろうか。詐欺的に生きた者は詐欺的に死ぬことになると。

タオルにオレンジを包んで人を殴ると、いい感じに見た目の悪い痣ができて保険金詐欺に利用できるそうである(当たりどころが悪いと再起不能になる)。それでビビらせておいてからの根性焼きという展開だったが、最後まで生き残るリリーもここではある意味騙されているわけで、詐欺というのは相手に対する精神的優位が重要であるらしい。

ロイはバットで腹を一発ゴツンとやられただけなのに救急車で搬送というのは、流石に軟弱が過ぎると思う。他にもビジュアル面で、アンジェリカ・ヒューストンアネット・ベニングが見間違われる程似ていないというのも問題だった。

グリフターズ (扶桑社ミステリー)

グリフターズ (扶桑社ミステリー)