オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『疑惑に抱かれて』

Under Suspicion, 100min

監督:サイモン・ムーア 出演:リーアム・ニーソン、ローラ・サン・ジャコモ

★★★

概要

探偵が浮気現場を撮影に行ったら二人とも死んでた話。

短評

リーアム・ニーソン主演のノワール映画風なミステリー映画。上手くオチをつけたようでいて、単なるご都合主義のようでいて──な一作なのだが、鑑賞中はノワール映画の空気に飲まれて騙されてしまったので、やはり意外性のあるラストだったと言わざるを得ない。情事の最中に相手の夫が帰ってきて全裸で逃亡するという情けない男をリーアム・ニーソンが演じている。存在感抜群の悪女よりも、最近の主演作と違って頼りにならない彼の方にこそ着目すべきだったのだ。

あらすじ

1958年、ブライトン。張り込み中に標的の妻と情事に耽っているところで夫が帰宅してしまった警察官のトニー(リーアム・ニーソン)。彼は全裸で窓から逃げ出すが、夫を止めに入った同僚が射殺されてしまう。二年後、トニーは私立探偵となり、不倫をでっち上げる仕事に従事していた。彼がいつものように現場の写真を撮影しようと部屋に押し入ると、そこには依頼人の男とトニーの妻ヘイゼル(マギー・オニール)の死体が残されていた。

感想

離婚を扱う探偵が証拠写真を撮影すると言えば、普通は依頼人の“配偶者”の不倫現場を押さえるものである。ところが本作では、依頼人(夫)とトニーが用意した女(主に彼の妻ヘイゼル。件の人妻との再婚)をホテルに行かせ、二人がベッド・インした姿を撮影し、これを従業員に目撃させて証人としている。現代の離婚裁判だと依頼人が圧倒的に不利になりそうなのだが、一体どういう理屈なのだろうか。当時は離婚そのものが難しかったとのことだが、ちょっと目的がピンと来ない。

それはともかくそういう仕事があったらしい。妻を殺されたトニーは、依頼人スカシオの愛人アンジェリンが犯人だと目星をつけて捜査を始め、同時に彼女と深い仲になっていく。アンジェリンを演じるローラ・サン・ジャコモは、濃い色のリップと意志の強そうな眉がいかにもファム・ファタールといった雰囲気を漂わせている美女である。いかにもな悪女がいれば、いかにもノワール映画的である。このビジュアルにより彼女が悪女なのだとすっかり騙されてしまった。登場人物も展開も完全にノワール映画的だったが、最後にどんでん返しがあって、悪い女の話ではなく悪い男の話だったと分かる。一見どうでもよさそうな描写(ベッドにあった宝石)も伏線として上手く回収されたのか。

アンジェリンとトニーが交わるシーンでは、大きなおっぱいを男の身体に押し付けることで先端を隠す“微妙に見えない”となっており、お相手役のリーアム・ニーソンが羨ましかった。三十郎氏は、この押し潰すタイプの変形が好きである。

トニーが有罪判決を受け、絞首刑に処されようかという正にその瞬間、彼の唯一の友人フランク(冒頭の全裸逃走時に命を助けた貸しがある。同僚を死なせたので他の警察は皆トニーが嫌い)が証拠品を手に駆け付けて窮地を救ってくれる。この展開が先日観たばかりの『ザ・プレイヤー』の劇中劇そのものだったので、シリアスなシーンのはずが思わず吹き出しそうになった。このシーンは確かにスリリングだったが、結末を考えるとリスクが高すぎるような。やはり「ヒット作に必要な要素」を無理やり盛り込んだ映画はご都合主義的なのだ。

疑惑に抱かれて (字幕版)

疑惑に抱かれて (字幕版)

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