オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・プレイヤー』

The Player, 124min

監督:ロバート・アルトマン 出演:ティム・ロビンス、グレタ・スカッキ

★★★

概要

映画スタジオの重役が脚本家から脅迫される話。

短評

ハリウッドの内幕風刺もの。映画の筋書きそのものは紛れもないサスペンスなのだが、主人公がヒット作に必要な要素だと語る「サスペンス、笑い、バイオレンス、希望、ハート、裸、セックス、ハッピー・エンド」が無理やり盛り込まれたメタな構成となっており、その“無理やり”さを加味すればコメディということになる。スリラーとして制作された映画がコメディになってしまうような業界の裏側を皮肉っているわけだが、完全にコメディとなった終盤を除けばスリラーとしても一応楽しめてしまい、スター主義を批判しているのに豪華な出演者たちに喜んでしまう。観客としての三十郎氏も嘲笑されているような気がして恥ずかしかった。

あらすじ

映画製作スタジオのシナリオ担当の重役グリフィン(ティム・ロビンス)。持ち込まれる無数の企画に対してゴーサインを出す男である。彼には悩みが二つ。一つは、ライバルの出現。もう一つは、足蹴にした脚本家から脅迫めいたハガキが送られてくること。グリフィンは犯人に目星をつけて会いに行くが、はずみで殺してしまう。しかし、脅迫が止まることはなく……。

感想

冒頭からメタ要素が全開である。警備主任のウォルター(フレッド・ウォード)に「最近の映画は短いカットばかり。『黒い罠』は6分半の長回しが凄かった」と褒めさせ、当の本作はそれを超えるべく8分強の長回しで対抗している。「これはメタな映画なんですよ」と観客に教えてくれる分かりやすい演出だったと思う。

その後はグリフィンが脅迫を受けるサスペンスとして“ちゃんと”展開していくのだが、思い返してみればグリフィン本人が脅迫を映画のシナリオとして捉えることで容疑者探しをするシーンがあり、この時点でオチが示唆されていたことになる。なお、このシーンは同僚で恋人のボニー(シンシア・スティーヴンソン)とジャグジーで会話しており、三十郎氏が「ハリウッドの業界人は派手な生活をしているな」と感じた描写が、無理やり「裸」の要素を盛り込んだものであると分かる。濁ったお湯に見え隠れするおっぱいに気を取られている場合ではなかったのだ。

脚本家のケヘインを殺してしまう「バイオレンス」。彼の恋人ジューン(グレタ・スカッキ)とグリフィンが簡単に恋に落ちる「ハート」。彼女との「セックス」(裸は見えない。よくあるもったいぶったやつ)。非ハリウッド的なリアリティを追求するはずだった映画が、ジュリア・ロバーツブルース・ウィリス主演のザ・ハリウッド映画に変貌している「笑い」。警察(ウーピー・ゴールドバーグ)による追求は不自然な形で回避され、グリフィンが社長となりジューンが身籠っている「ハッピー・エンド」。自己言及した要素を全部盛りで達成している(「希望」はハッピー・エンドに含まれるか)。

グリフィンのライバル、ラリー(ピーター・ギャラガー)曰く、「脚本家なんか要らんのですよ。新聞からネタを拾って俺たちが適当に考えればいい」。このメタな映画では、当然グリフィンによる殺人事件も新聞に掲載されている。そのアイディアに上述した「ヒット作に必要な要素」を加えれば、立派なハリウッド映画が完成する。それが本作である。

本作は「観客が結末を決めた」という台詞に象徴されるような観客批判を含んでいるわけだが、本作を“普通に”楽しんでしまっている観客が自らの愚に気付くようなヒントを残している。上述の“無理やり”感に加えて、事件の現場に残された指紋を大写しにしているのに、それが伏線として使用されずに放棄されている(他に気になったのは、事件のことを知るはずがないウォルターがグリフィンを詰問するくだり)。他にも意図されたダメ演出があっただろうか。気付けなかった三十郎氏はダメ観客である。

一方で、それらの要素について言及されるのが映画の終盤であるために、「思い返してみると」面白かった要素が、観ている間はそうでもなかったりする。これは三十郎氏がダメ観客であるが故に欠点だと感じるのか。最初からコメディだと意識して観られれば、評価が一段階上がりそうな気がする。

リアリティに固執する脚本家が求めている物語は、単に“非ハリウッド的”というだけのこれまた“お決まり”の展開だったりするので、一概に「ハリウッド的だからダメ」と言い切ることはできまい。映画はあくまで作り物なのである。全てがハリウッド的なのだ。更にもう一歩踏み込めば、ダメ観客を量産しているのもハリウッドなのだから、我々は被害者なのだ。自らの浅薄さに恥じ入る必要なんてない。しかし、ここで開き直ったらお終いのような気がする。

スーツのデザインは古臭いのだが、ティム・ロビンスが長身なので様になっていた。微笑んでもデブでもないヴィンセント・ドノフリオは、顔がアップになるまで彼だと気付かなかった。

ザ・プレイヤー (字幕版)

ザ・プレイヤー (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 
The Player

The Player

  • 作者:Tolkin, Michael
  • 発売日: 1997/04/01
  • メディア: ペーパーバック