オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『甘い毒』

The Last Seduction, 110min

監督:ジョン・ダール 出演:リンダ・フィオレンティーノ、ピーター・バーグ

★★★

概要

夫が麻薬取引で稼いできた70万ドルを妻が持ち逃げする話。

短評

三十郎氏の好物であるエロサス扱いしてもよいのだろうか。そのような要素がなくもないが、本作は女性が主人公であり、しかもその女がとびきりの悪女である。彼女の痛快なまでの悪女ぶりが濃密なノワール映画臭を漂わせていた。主人公のキャラクター造形に加え、逃亡先の町で出会う人の良い田舎男のとの対比も面白く、「美しき悪女に弄ばれてみたい」という隠れた願望を叶えてくれる一作となっている。各種の伏線回収も見事だった。

あらすじ

夫クレイが(ビル・プルマン)が医療用コカイン(どういう用途なのだろう。向精神薬?)の横流しで稼いできた70万ドルを持ち逃げしたブリジット(リンダ・フィオレンティーノ)。田舎町に逃れ、ウェンディ・クレイと名を変え、バーで出会ったマイクと爛れた夜の生活を送る。しかし、探偵を雇ってブリジットの捜索を続ける夫の手がすぐそこまで迫っていた。

感想

悪女を体現する女ブリジット。女性上位的な思想の持ち主であり男を嫌悪しているが、男の身体を愛し、利用する術を完璧に心得ている。三十郎氏は彼女をとても頼もしく感じた。これは彼女がパワフルな男性的存在だからなのだろうか。それとも男性上位的思想の持ち主は同族嫌悪で居心地悪く感じるのだろうか。それはともかく彼女の策略は見事であり、機転も利く。窮地を乗り切り、敵の起死回生の一手さえも先手を打って握り潰してしまう。美人で頭も切れれば人生楽しいだろうな。

そんな彼女に惚れ込んで共犯者にされてしまう田舎男マイク。男と女であれば男の方が暴力的なイメージが強いが、本作では“都会”の女と“田舎”の男を対比させることで、倫理的な面からブリジットの暴力性を描いている。「女々しい」と「雄々しい」という言葉が意味する通りの二人であった。『氷の微笑』のキャサリンと同じく、男たちはブリジットの手のひらの上で踊らされているばかりであった。

バーでマイクが「俺のは馬並みだ」とブリジットを口説く。大胆な口説き文句である。余程自信がなければ言える台詞ではない。しかし、都会のビッチはその上を行く。「じゃあ見せて」とその場で陰茎チェックである(臭いも嗅ぐ)。なんという……。少し憧れてしまう桃色シチュエーションだが、三十郎氏にはそんな自信はないし、逆にビビって縮こまってしまうだろう。自信があるという諸氏も、同じく陰茎チェックを受けた黒人探偵が披露した結果死亡しているので、安易に喜んで取り出すのは控えるべし。なお、マイクは見事試験に合格したらしく、ヤリ捨てされたかと思えば、家で、バーの外で(三十郎氏はこれも人に見られそうで縮こまるだろう)、車の中でと交わりまくっていた。やはり自信がなければ言えない台詞なのだ。

ブリジットとマイクに夫を殺害させる計画の中に「銃で頭を殴って気絶させる」という手順がある。映画ではよく見かける光景だが、そんなに上手くいくものなのだろうか。本作では上手くいかない。マイクがビビっているのだから尚更である。これはブリジットにとって計算外だったのだろうか。それとも全て想定内だったのだろうか。口の中に催涙スプレーを噴射されたらどうなるのだろう。

マイクの「地元の女は錨」という考え方が面白かった。一緒に出ればいいのにと思うが、一種のぬるま湯になるのだろう。

続編があるらしいが日本には入ってきていない模様。そもそも本作の知名度が高いとは言えないし(面白いのに……)、続編の評価は著しく低いらしい(逆に気になる)。

甘い毒 (字幕版)

甘い毒 (字幕版)

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