オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ラスト・ハーレム』

Harem Suare, 109min

監督:フェルザン・オズペテク 出演:マリー・ジラン、アレックス・デスカス

★★★

概要

帝国崩壊の激動の時代を生きたハーレムの女の話。

短評

オリエンタルなロマンを感じる歴史もの。三十郎氏のジョニーが「ハーレム」という言葉から期待する官能要素は少なめだったが、主人公がハンマーム(風呂)でオイルを塗られているシーンは、「その仕事に就きたい」感が尋常ではなかった(一度おっぱいを隠す仕草が至高)。一人の女性も愛せぬ三十郎氏がハーレムを羨ましがるのは馬鹿げているが、とにかく今はマリー・ジランが美しすぎて胸が苦しい。物語の構成の複雑さも三十郎氏好みだった。

あらすじ

八才で売り飛ばされ、イタリアからトルコへと渡り、皇帝のハーレムに入ったサフィエ(マリー・ジラン)。彼女は野心家の宦官ナディールに見い出され、彼への協力と引き替えに優先的に皇帝と夜を共にする権利を得る。待望の息子を授かり順風満帆のはずだったが、子は病に倒れ、帝国にも崩壊が迫る。

感想

ハーレムの女官ギュルフィダンが美しき後宮たちに物語る第一階層。その物語では、かつて皇帝の愛妾だった老婆が、これからハーレムへと向かう若い女アニータ(ヴァレリア・ゴリノ)に駅で過去のハーレムについて話をしている。これが第二階層。そして老婆の語る本編が第三階層。また、第三階層の中にも物語る女が存在している。入れ子構造である。これは明らかにイスラム世界を舞台にした『千一夜物語』へのオマージュだろう。

しかし、これが単純な入れ子構造ではない。第三階層は帝国の崩壊を描く物語であるため、素直に受け取るなら、それを物語る後の時代であるはずの第一、ニ階層の時代にはハーレムが存在しないはずである。それぞれの階層間に共通する人物やアイテムが登場して繋がりを見せながらも、時代が前後するという特殊な構造になっていた(ある階層で別階層について嘘をつくというテクニックも登場する)。「アッラーが与えし三つの林檎を、一つは語り手に、一つは聞き手に、一つは物語の主人公に」という言葉で映画が締めくくられていることからも分かるように、『千一夜物語』的に「物語る」ことそのものが非常に重要なモチーフとなっている。それは老婆が若い女に送ったと語られる「人生で大切なのは、どう生きたかよりもどう生きたかったか。夢を見続ければ苦悩と死を乗り越えられる」という助言とも一致する。

帝国が崩壊し、「お前たちは自由だ」とハーレムを追われたサフィエたち。他の生き方を知らない彼女たちにとって、それは正しく「いまさら翼といわれても」な心境だったに違い。野良犬のエピソードは彼女たちの暗喩だろう。ハーレムという制度が存在している内は非常に恵まれた生活を送っているが、ひと度制度が崩壊すると他に生きる術がない(ある者は他の男にもらわれ、サフィエは見世物小屋に)。現代だと専業主婦にも同じことが言えそうである。やはり個人の自立が大切なのだ。

なんと言ってもサフィエ役のマリー・ジランである。透き通るようであったり妖艶であったりと、皇帝の寵姫に相応しい神々しさに思わず鼻息が荒くなった。美女揃いのハーレムの中でも、彼女は少しどころではなく抜けていたと思う(他には陰謀に巻き込まれて殺された新人後宮アリエ役のGaia Narcisiや、ハンマームにいた乳輪がとってもピンクな女性が気になった)。ハーレムの人種構成はヨーロッパ系の白人女性が大半を占めていて、現地トルコ人や中東系は少なめである。『千一夜物語』の奴隷は白人と黒人という分け方で表現されていたと思うのだが、現地民は売買されなかったのだろうか(解散時に家族の元に帰る人がいるので、いることにはいる)。それともそういう描写なだけか。

いくつかバージョンの違いがあるらしく、最も長いものは125分あるそう。桃色シーンが削られていないだろうか……。それだけは許されないぞ。

レスリングに興じる男たちが登場する。ストリートファイターのハカンが用いるオイルレスリング(ヤールギュレシ)かと思わず嬉しくなったのだが、身体のテカり方がオイルを塗っているのか汗をかいているのか判別できない程度だった。ハカンは頭から油をかぶるのに。

ハーレムの女性たちが手足の指先を赤く染めているのは当時の流行だったのか。現代のネイルのようなものなのか。

エンドロールが上から降ってくるのは何か意味があるのだろうか。

青い体験』以降毎晩続けてきた桃色映画鑑賞だが、本来の目的であった桃色コメディはもう残っていなさそうなので、本作をもってひとまず終了としたい。意識せずとも桃色そうであればついつい観てしまうのだろうが。

ラスト・ハーレム (字幕版)

ラスト・ハーレム (字幕版)

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