オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ダーク・スター』

Dark Star, 82min

監督:ジョン・カーペンター 出演:ブライアン・ナレル、ドレ・パピッチ

★★★

概要

不安定惑星の爆破任務を担う宇宙船の話。

短評

1974年に公開されたジョン・カーペンター長編映画デビュー作。とても静かに狂っていて、怖いのか可笑しいのか分からなくて頭が大変に混乱した。IMDbだとジャンルがコメディになっているので、やはり笑ってよかったのだと一安心。これこそが真のホラー・コメディと言うべきか。立派なホラー映画になりそうな状況設定に対してチープ過ぎる特撮とユル過ぎる乗組員たちの姿が、本作を意味不明なまでの怪作足らしめている。

あらすじ

不安定惑星爆破の任務を担い、20年間、59光年の距離を航行してきたダーク・スター号。各設備に劣化が見られる中で宇宙嵐に遭遇し、惑星破壊用の爆弾が機能障害を起こす。

感想

船長は船内の事故で殉職し(冷凍されていて会話可能)、残された乗組員も疲弊しきっている。しかし、この「疲弊」という言葉には語弊があり、ただただ緩みきっているのである。船内では自家製謎楽器を演奏したり、指の間をナイフでトントンやってあっさり失敗したりと、ひたすらノンビリと生活している(寝室の壁に大量に貼られたエロ本のスクラップは芸術の域)。長期の任務は確かに彼らのメンタルに影響を与えているが、彼らは半分呆けているだけで、それはホラー展開へと繋がらない。タルビーという乗組員が他のメンバーとほぼ没交渉で、普通この手の男は精神に異常を来して暴走したりするのだが、特にそういうこともない。

彼らは捕獲したエイリアンを飼育している。こいつが脱走して『エイリアン』的なSFホラーになりそうだが、やはりそうはならない。エイリアンが飼育員にじゃれつくシーンはビジュアル次第で襲っているシーンに変貌するはずだが、なにせエイリアンはビニールボールに足がついているだけという間抜けさである。「キューキュー」と変な声で鳴くゆるキャラなのに、一方でBGMだけは立派にホラー風。なんだこれは……。ジャンル不明のカルト映画臭が尋常ではない。

そして話は『2001年 宇宙の旅』風の展開へ。誤作動を起こした爆弾20号が、船体から離れないまま爆破しようとする。ちなみにこいつは自律して思考できる賢い爆弾である。ドゥーリトルが(冷凍された)船長に助言を仰ぐと、曰く「現象学を教えろ」とのこと。ドゥーリトルと爆弾の哲学問答が始まる。なんだこれは……。これにより一度は危機が回避されるものの、逆に仇となって20号が「この世界には闇と私だけ。光あれ!」となる。粉々に吹き飛ぶダーク・スター号。20号との交渉のため船外にいたドゥーリトルが、吹き飛ばされてきた機体の一部で宇宙サーフィンをして終劇である。この無駄に明るいエンディングの謎の爽快感。本作に意味を求めるのはやめておこうと思う。

ダーク・スター号が画面の中心に静止した状態で映っていて、周囲の星を動かすことで移動していることにする悲しいまでにチープな特撮技術。対して、船内の操縦系統のセットは意外にも高クオリティだったと思う。

ダーク・スター(字幕版)

ダーク・スター(字幕版)

  • 発売日: 2020/09/09
  • メディア: Prime Video