オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『世にも怪奇な物語』

Histoires extraordinaires(Spirits of the Dead/Tales of Mystery and Imagination), 121min

監督:ロジェ・ヴァディムルイ・マルフェデリコ・フェリーニ 出演:ジェーン・フォンダアラン・ドロンテレンス・スタンプ

★★★

概要

怪奇譚三篇。

短評

エドガー・アラン・ポーの原作を三人の名匠が映像化したオムニバス映画。『黒馬の哭く館』と『影を殺した男』は一応のオチがつくタイプの不思議な話で(「哭く」の読みは「なく」)、『悪魔の首飾り』はオチがよく分からないが最初から最後まで狂っていて怖い話だった。これらの三篇に共通しているのは、いずれも主人公が傲慢で死に吸い寄せられていく点だろうか。『世にも奇妙な物語』の元ネタなのかと思ったら、『世にも不思議な物語』という更に古いテレビ映画が存在するそうである。

あらすじ

『黒馬の哭く館(Metzengerstein)』:やりたい放題の生活を送る伯爵夫人のフレデリックジェーン・フォンダ)。彼女は従兄弟のウィルヘルム(ピーター・フォンダ)に惹かれるものの足蹴にされ、腹いせに彼の厩舎を焼き払う。その日、彼女の元に黒い暴れ馬が現れる。

『影を殺した男(William Wilson)』:とある教会に鬼気迫る表情で駆け込んできた男ウィリアム・ウィルソンアラン・ドロン)が、神父に「どうしても懺悔したい」と迫る。その内容は、彼の人生に常に付きまとってきたもう一人の自分についてのものだった。

『悪魔の首飾り(Toby Damitt/Don't Wager Your Head to the Devil)』:映画に出演するためローマを訪れたイギリス映画界のスター、トビー・ダミット(テレンス・スタンプ)。彼はなにかに取り憑かれたかのように酒を飲み続け、猛スピードでフェラーリを走らせる。

感想

恥ずかしながら、三人の監督の内一篇目のロジェ・ヴァディムのことは知らなかった。何度も映画化されている『危険な関係』を最初に映画化した人で、主演のジェーン・フォンダの当時の夫だとか。『影を殺した男』に登場するブリジット・バルドーの元夫でもある。なんというプレイボーイ。妻が実の弟に劇中で恋をするという変態チックなキャスティングに彼がどう興奮したのかは分からないが、ヘンテコな衣装から伸びる脚が綺麗に撮られていた。自慢なのか。姉弟の美男美女っぷりと前衛的な衣装が印象的だった。

ルイ・マルによる二篇目はドッペルゲンガーの話。いつものことながらアラン・ドロンが格好よくて惚れ惚れする(特に目が綺麗)。寄宿学校、医学校、軍の三つで傍若無人に振る舞うウィルソンの元にもう一人のウィルソンが現れ、彼の悪行を止める。自分の中に潜む「悪」に翻弄される物語は数多く存在するような気がするが、「善」の方が邪魔者として存在する物語は珍しい気がする。厳格な寄宿学校、死がすぐ隣にある医学校、そして軍隊。それらの環境で上手く生き抜いているのは「悪」の方のウィルソンなのである。

夜道で捕まえた美女(カティア・クリスティーヌ)を全裸にひん剥いて解剖実験しようとしたり、イカサマギャンブルで大敗させたジュセピーナ(ブリジット・バルドー)を鞭打ったりと、サディスティックな桃色描写の多い一篇だった。前者の方は影を利用して股間を隠しており、ボカシという無粋なものを見ずに済んで良かった。

フェデリコ・フェリーニによる三篇目。夕陽に焼かれているのかオレンジすぎるローマが終末世界のようで、全編に狂気が満ちている。ダミットは顔色が激烈に悪く、授賞式でスピーチする女優たちも白塗りが濃すぎて、この世の生き物ではないかのような不気味さである。照明が眩しくてクラクラしてくる。ダミットがフェラーリで暴走をはじめると、街頭に立っている人間がマネキンと見分けがつかなくなり、いよいよ彼がこの世にいるのか分からなくなってくる。そしてなんと言っても悪魔的な少女(マリナ・ヤル)の悪魔的な笑み。正に悪夢的映像体験であった。

ストーリーは最もスッキリしないのだが、この話が最後にあることで“死に取り憑かれた物語”としての一貫性が生まれた気がする。分かりづらいヨーロッパ映画だったが、“怪奇”なるものとは理解できないものということで。

世にも怪奇な物語 (字幕版)

世にも怪奇な物語 (字幕版)

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