オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『黄金狂時代』

The Gold Rush, 73min

監督:チャールズ・チャップリン 出演:チャールズ・チャップリンジョージア・ヘイル

★★★

概要

チャップリンがアラスカに金鉱を探しに行く話。

短評

チャップリンが革靴を食べるシーンが有名な一作。本編を観たことがなくてストーリーを知らなくても、誰もが知る名シーンのある映画は偉大だと思う。「最後は愛なんだ」的ハッピーエンドで締め括られる割にヒューマニズムの面で物足りなさを感じたが、革靴以外にも鶏の幻視や崖っぷちの山小屋、パンとフォークのダンスといった見どころが満載であった。今回観たのはオリジナルのサイレント版を編集して音楽とナレーションが追加されたサウンド版である。ナレーションも作曲もチャップリン自身の担当だとか。

あらすじ

黄金を探し求めて雪深いアラスカに集まってきた男たち。その中に一人の不屈の探検家(チャールズ・チャップリン)の姿があった。彼は猛吹雪に遭遇し、一件の山小屋へと辿り着く。そこに待っていたお尋ね者のブラック・ラルセンと、探検家と同じく金鉱を探しに来ていたビッグ・ジム。三人で避難難生活を送ることになる。

感想

他の登場人物は皆分厚い毛皮のコートを着ているのに、チャップリンだけはいつもの下半身がブカブカなスーツ姿である。寒くないのだろうか。不屈の探検家と紹介される男のビジュアルがこれなのだから、登場シーンからギャップでまず一つ笑える。そして、金鉱を探しに来たはずなのに、彼自身が探索するシーンが一度もないというのも面白い。ゴールド・ラッシュという時代を背景に使って、いつも通りドタバタやっていた。

避難生活で食料が底をつき、食卓に登るのはチャップリンの右足の靴。茹で上がった靴を二つに分けて仲良く食べる。ナイフとフォークを擦り合わせてどう食べようかと思案していたのに、結局かぶりついていた。意外と柔らかそうである。靴紐はスパゲティ風に巻いて、釘は骨のようにしゃぶっている。状況に対してあまりにも優雅な食事然としているため、「本当に食べられるのではないか?」という疑問が浮かぶ。調べてみたところ、食べられなくはないが製造工程で使用されている薬剤によっては危険とのことだった。Youtuber辺りが食べていそうだな。

革靴にせよチャップリンが鶏に見える幻視にせよ背景には飢えがあるわけで、一歩間違っていれば死に至る悲劇である。その悲劇性を微塵も感じさせずに喜劇を貫徹するところにチャップリンのコメディアンとしての上手さを感じる。

街に戻ったチャップリンは踊り子のジョージアに恋をし、ビッグ・ジムと再会して、彼が発見した金鉱へと戻る。件の山小屋で寝ている間に小屋が吹き飛ばされて、起きたら崖っぷちに。小屋が動いているのに目が覚めないのかというツッコミは置いておき(飛行機でも寝られるし熟睡すれば気付かないものなのか)、最初は二日酔いと勘違いして小屋をグラグラさせているので、そっちは気付いてほしい。無理やり扉を開けたり小屋が傾いたりして落っこちそうになったり、なんと脱出を試みる動きの軽快さである。このシーンは特撮も優秀だったと思う。

飢えたチャップリンが行き倒れ(凍死)を偽装して、人の良いハンクに助けてもらおうとするシーンが好きだった。ちゃんと凍って固まった感が出ている。

最後は「ハッピーエンドです」のナレーションで締めくくられているのだが、ジョージアは女たらしのジャックが好きだったという描写があり、両者の決別は明示されていない。チャップリンの方は誠実さを評価されているものの、惹かれるまでには至っていないように思う。大富豪となったチャップリンに見初められるのは確かにハッピーエンドなのかもしれないが、彼女の本当の気持ちはどうだったのだろう。

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