オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ビリオネア・ボーイズ・クラブ』

Billionaire Boys Club, 108min

監督:ジェームズ・コックス 出演:アンセル・エルゴートタロン・エジャトン

★★

概要

最初から失敗している金融詐欺が当然に破綻する話。

短評

序盤は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の全てをスケールダウンさせた出来損ないという印象。その後、一度も上昇気流に乗ることなく恐るべき低空飛行を続け、気付けば「やっと終わったか」となる程度の映画である。期待の若手スターを集めた豪華キャストなのに……。現状ではケヴィン・スペイシーの最後の出演作品なのに……(批評的にはマイナスなのだろうが)。あらゆる場面でスコセッシの偉大さを再確認できたことだけが数少ない収穫だった。

あらすじ

ロサンゼルスの有名私立高校の同級生だったディーン(タロン・エジャトン)とジョー(アンセル・エルゴート)。富裕層の集う高校で庶民出身だった二人は意気投合し、卒業後に偶然再会を果たす。そこそこの成功とコネを手にしたディーンと貧しい証券マンになったジョーが手を組み、かつての同級生だった富裕層を相手に金(ゴールド)に投資する“BBC(ビリオネア・ボーイズ・クラブ)”を設立する。

感想

実在の事件がベースとなっている。だから仕方がないということになるのかもしれないが、成功からの転落という流れの中で、実は成功が一度もない。最初に投資された1万ドルをあっさりと半分にし、残った5000ドルを「これが利益だ」と出資者に戻す。自転車操業と呼ぶことすら躊躇われるレベルである。それが「三週間で50%の利益」というありえない謳い文句となり出資者を集めていくわけだが、観客には全く儲かっていないことが明白であるため、その先には破綻しか見えない。

集めた金がどこに消えたかと言うと、ジョーやディーンの豪華な生活資金となるわけだが、これがどうにもショボい。ジョーダン・ベルフォートみたいに滅茶苦茶な生活を送ってくれれば、成功に目が眩んで来たるべき破滅を忘れさせるような輝きがあるものの、彼らの生活は映画的に物凄く地味である。劇中で彼らの誇るクリスマス・パーティーなんてその辺のパーティーでしかない。シドニーエマ・ロバーツ)やキンタナ(スキ・ウォーターハウス)のような美女を登場させるにも、金のかかる悪女でなければ意味がない。

そうして一度も成功の高揚感を得られないままに物語は破局を迎える。殺人にまで発展したというのがこの事件の魅力なのかもしれないが、中東出身のお尋ね者を脱出させるシーンがカルロス・ゴーンみたいで笑えただけだった。死体を硫酸か何かで融かすシーンはちゃんと見せてほしかった。やはりこの種の映画の鍵は成功と転落のギャップが握っている。前者をいかに魅力的に描くかという前提条件を満たしていない一作だったと言えるだろう。少なくとも主人公に後者の可能性を忘れさせてしまうくらいの勢いがなければいけない。ついでに言えば、成功に飲み込まれていく変化の様子も描けていない。

細かい箇所についても『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の偉大さだけが身に沁みる。具体的な詐欺のスキームについて説明を省いた割にはスピード感に欠け(従って実録ものとしての魅力も薄い)、結果的に三時間の大作よりも間延びしている。ジョーがエネルギー会社の株主たちに演説するシーンにはまるで説得力がなく、ジョーダンのどんなに胡散臭くても納得させられそうになる圧倒的な迫力とは対照的だった。

やはりスコセッシは凄いのだ。そしてディカプリオも凄いのだ。エルゴートもエジャトンも他作品で結果を残した今後を期待される若手なのだが、自分たちの存在感だけで映画を成立させられる程の実力はないらしい。結局、業界を追われたケヴィン・スペイシーのことを惜しいと思わせるだけであった。彼だけが安定した厭味ったらしさを披露していた。

ビリオネア・ボーイズ・クラブ(字幕版)

ビリオネア・ボーイズ・クラブ(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/27
  • メディア: Prime Video