オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『死への逃避行』

Mortelle randonnée(Deadly Circuit), 121min

監督:クロード・ミレール 出演:イザベル・アジャーニ、ミシェル・セロー

★★

概要

探偵が依頼を放棄して美女を追跡する話。

短評

探偵が女を追いかけはじめる導入部は面白かったが、思った以上に“フランス映画”で、途中からついていけなくなった。最後に探偵の娘の墓が出てくるため、亡き娘への執着と訣別するたの儀礼的な話だったのかと推測するものの、その過程にどういう意味があるのかはさっぱりである。たくさん人が死ぬ割にはユルいノリで、なんだか不思議な映画だった。破滅的な生き方の悪女を演じるイザベル・アジャーニは綺麗だったが、それだけで二時間もつほど好みというわけでもない。

あらすじ 

“鷹の目”と呼ばれる探偵(ミシェル・セロー)に一件の依頼が舞い込む。依頼人の夫婦曰く「息子の恋人の身元調査をしてくれ」とのこと。探偵が二人を尾行したところ、女(イザベル・アジャーニ)が男の死体を遺棄する現場を目撃する。探偵はなぜか上司に嘘の報告をし、その後も女を追いかけ続ける。女は次々と名前を変えては金持ちの男を殺していくのだった。

感想

本作が徹頭徹尾探偵の独り言から構成されている事実からも分かるように、きっと探偵の内省的な話なのだろう。「追う者が追われる者に」みたいな展開も、そのままではなく暗喩的に受け取る必要があると思われる(覗き屋云々の話も示唆的)。探偵が女(本名はカトリーヌ・レリス)を娘に重ねて(死んだことは最後に判明)、観客に「この女が娘なのではないか」と思わせるものの、実態は探偵の独り相撲に過ぎない。女は女で好き勝手にやっているだけである。探偵の方も好き勝手にやっていて、死体の隠蔽に一方的に協力するといった謎のストーキング展開へと進んでいく。

娘のことを知らない探偵と父のことを知らない女。これが両者の親子関係を予感させるミスリードとなっている。探偵は娘の幻想を追って女のストーカーと化すが、女の方は父の幻想を追って男を試すかの如くとっかえひっかえしていたということでよいのか。盲目の男はお眼鏡に適ったようだったが、これは自分が父親役に選ばれない嫉妬からか探偵が殺してしまう。やはり二人とも何がしたいのかよく分からない。劇中に登場する『ハムレット』は何かヒントになるのだろうか。あらすじは知っているけれど上手く結び付けられない。

“鷹の目”の異名を誇る割にはヘッポコな探偵。車での尾行は「その距離で停車したら相手が気付くだろ」という近さで、目を離した隙に車を強奪されることもある。女に目を奪われていたら、足元が見えずにローブ姿のままプールにドボンということも。強盗を繰り返す女を追いかけて、自身も人質になっている。やけに陳腐なBGMの効果もあり(音楽が切れるタイミングも唐突)、スリラーというよりもコメディみたいになっていた。本人もなんか歌ってるし。

探偵の使用しているカメラがアサヒペンタックスだった。創業時は旭光学工業という会社名だったのか。三十郎氏はニコン党だが、同社のアストロレーサーなるシステムは非常に魅力的だと思う。三十郎氏がもっとアウトドアな人間だったらペンタックスのカメラを選んでいたかもしれない。

死への逃避行 (字幕版)

死への逃避行 (字幕版)

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