オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』

Tulip Fever, 104min

監督:ジャスティン・チャドウィック 出演:アリシア・ヴィキャンデルデイン・デハーン

★★

概要

金持ち親父に嫁いだ修道院育ちの女が画家と不倫する話。

短評

17世紀のオランダを舞台にした恋愛もの。明らかに興味の薄いタイプの話ではあるが、アリシア・ヴィキャンデルのおっぱいを拝めるとあらば一応目を通しておくのがファンとしての務めである。目的は立派に果たされ、ついでにカーラ・デルヴィーニュもちょろっと脱いでいるおまけ付きなのが嬉しかった。歴史、経済、恋愛を詰め込んだ物語は、最終的にコメディなのではと思われる程にしっちゃかめっちゃかで、「これは逆に面白いのではないか」とサメ映画的ワクワク感を感じそうになったものの、ギリギリのところで思いとどまった。

あらすじ

1634年。チューリップへの投機熱に沸き返るアムステルダム修道院育ちのソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)が香辛料商人のコルネリアス(クリストフ・ヴァルツ)に嫁いで3年。夫の年齢の割には夜毎に励んでいたものの、なかなか子種を授からない。遺伝子を残せぬならせめて記録を残そうと、夫は夫婦の肖像画を描かせることにする。そしてやって来たヤン・ファン・ロース(デイン・デハーン)。美男美女が揃えば、起こる事が起こる。

感想

若い男女の熱情をチューリップへの投機熱と重ねる狙いがあったのではないかと推測するが、それがそのまま恋愛映画としての致命的な欠点になっていると感じる。バブルというものは「価値があるから価値があるのだ」とトートロジー的に価格上昇していく性質があり、「どうして価値があるのか」という根本的な疑問を抱かぬままに人々は熱狂する。ソフィアとヤンについても「どうやって惹かれ合ったのか」が描かれることはなく、「美男美女が揃えば当然恋に落ちる」的なノリで不倫関係にのめり込んでいく。三十郎氏が女心を解さないのは認めるが、ソフィアの心境変化の描き方は明らかに雑だった。

当然の成り行きで恋に落ちる二人。若い男女がすることなんて一つしかない。申し訳程度に愛を語らい、駆け落ちを計画するが、大部分は肌色の関係である。ただただ求め合っている。羨ましい。他の映画でも見られる控えめながらプリッとしたそれが、本作ではじっくりと観察できて眼福だった。また、アリシア・ヴィキャンデルは丁度よい加減でとても艶っぽい声を出す。耳にも嬉しい。

気の毒なコルネリアス。最後に「結局私は若い美女を金で買ったのだ」と認めているものの、彼は善人である。年齢を感じさせぬ旺盛な性欲で夫の務めを果たし(ソフィアの「あの画家は嫌」「やっぱりあの画家がいい」の唐突な変貌の間に夫婦の営みが挿入されるので、満足させられていなかったのかもしれない)、前妻との間の二人の子供を亡くして世継ぎを望んでいるにも関わらず「できないならそれはそれで」と機転を利かせ、出産時には「母体と赤子の選択を迫られるならソフィアを助けて」と医者に頼むほどに過去を反省し妻を愛している。できた男ではないか。そんな彼が美しい間男の犠牲者となる。おまけに唯一の願いまで無視される(これも財産と引き替えだから“買った”ことになって無効なのか)。可哀想に……。やはりおっさんと若い美女は理解し合えないのだ。営みの前に「兵隊が準備完了だ」と言ったり、発射前に「大砲よ、撃て!」と唱えるギャグセンスが嫌われたのかもしれない。

召使いのマリア(ホリデイ・グレインジャー)が妊娠したため、ソフィアが腹に何か詰めて妊娠を偽装し、マリアが膨らみを隠すという展開に。この辺りからの怒濤の勢いはコメディ感があった。隠れ妊婦の立場を獲得したマリアと奥方ソフィアの主従関係が逆転している。終盤にヤンから大事なお使いを頼まれる助手ヘリットを演じているのがザック・ガリフィアナキスで、これはもう何かを仕出かしてくれる期待感しかしない。それまでは彼なのか分からないような地味な役だったが、最後に起死回生の輝きで大笑いさせてくれた。他にはジュディ・デンチ演じる修道院長が逞しすぎるのも笑える。

原作小説はフェルメールの絵画に着想を得たそうである。ソフィアが身に着けているドレスの青はそういうことなのだろう。

チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛(字幕版)

チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛(字幕版)

  • 発売日: 2019/03/02
  • メディア: Prime Video
 
チューリップ・フィーバー (河出文庫)

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